専業主婦が離婚を意識したとき、「離婚後の収入をどうしよう?」と不安が押し寄せてくるのではないでしょうか。どんな状況でも離婚には不安が伴いますが、専業主婦の場合は、離婚後の収入や老後の生活費に対する不安が大きいでしょう。そこで、今回は専業主婦が子連れ離婚する場合に、とくに気になる就業と年金に焦点をあててご紹介します。

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就業に活用できる公的支援制度

離婚する前に仕事が決まっていると安心ですが、ひとり親になってからでも就業に対するさまざまな公的支援があります。離婚前後に活用できる支援制度をご紹介します。

1. 子連れでもできる就職活動

幼い子どもがいるとじっくり求人検索する時間を作るのも大変ですよね。そんなときに助かるのが、マザーズハローワーク・マザーズコーナーです。ハローワークの中でも、子育てをしながら就職活動している人を対象としていて、キッズコーナーの設置など子連れで訪れやすくなっています。

また地域によって、応募書類の書き方や面接対策だけではなく、パソコン講習やコミュニケーションのセミナーなど、託児付きで受けられる無料のセミナーがあります。

2. 職業訓練でスキルアップや資格取得も

さらに、雇用保険を受給できない方でも、ハローワークの求職者支援制度を利用して無料で職業訓練を受講することができます。訓練期間中も訓練修了後も、ハローワークが積極的に就職支援を行ってくれる点も心強いですね。また、要件を満たすと支給される職業訓練受講給付金もあります。

求職者支援者訓練 認定コース情報

WEBデザイン、ビジネスパソコン、簿記会計、経理・総務事務、ネイリスト、エステ・アロマテラピー、介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修、宅建スキル養成、インテリアデザインCAD、歯科助手・歯科受付、医療・調剤事務 など

3. 離婚してからでも遅くない

ひとり親家庭の自立や就業を支援する「母子家庭等就業・自立支援センター」が全国にあり、就職相談の窓口などが設けられています。また、介護職員初任者研修などの就業支援講座を行っている地域もあり、教材費や検定料の実費のみで受講できる講座が多いので、ぜひ活用したいですね。

そのほか、対象となる講座を受講して修了した場合に支給される自立支援教育訓練給付金や、看護師や介護福祉士などの資格取得のために、1年以上養成機関で修業する場合などに支給される高等職業訓練促進給付金などがあります。

すぐに働くことが困難な場合

離婚すると、今まで夫の扶養に入っていて国民年金の保険料の支払いがなかった方も、支払いが必要になります。就職活動が長引いて収入がない場合、支出を抑えたいと思うこともあるでしょう。また、事情により就業が困難な場合もあるかもしれません。そのような場合には、下記のような制度も検討しましょう。

1. 国民年金の保険料免除・納付猶予制度

収入がなかったり、低かったりする場合、保険料の納付が免除される制度があります。ただ、免除制度はご自身とは別の世帯主の収入も対象となります。実家に同居するなどで免除の対象にならなかった場合は、納付猶予制度も検討しましょう。

何も申請せずに年金を支払わないと未納となってしまいます。未納となると、将来年金を受給するための受給資格期間にも算入されませんし、年金額にも反映されません。保険料免除や納付猶予は、どちらも受給資格期間には算入され、免除の場合は、さらに将来受給する年金額にも反映されます。お困りの際は住民登録をしている自治体へ申請しましょう。

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    各制度の年金受給への影響

2. 生活保護制度

あらゆる手段を試みても生活に困窮する場合、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給される制度です。申請前に、窓口で相談を受け付けていますので、一人で悩まずに自治体に相談してみましょう。

老後のためにやっておきたい年金分割

夫婦で老後を迎えた場合、夫婦の年金を合わせて生活することができますが、離婚した場合は、何もしないとご自身の年金のみとなります。専業主婦の期間が長ければ長いほど、不安に感じる方がいらっしゃるのではないでしょうか。

夫が会社員や公務員の場合、夫の厚生年金を分けることができる年金分割という制度があります。年金分割には、会社員や公務員の扶養に入っている妻を対象とした「3号分割」と、扶養に入っていてもいなくても対象となる「合意分割」の2種類があります。3号分割は夫の合意や裁判手続きは不要で請求しやすいですが、分割できる期間に注意が必要です。

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    離婚時の年金分割の概要

なお、夫が自営業者などの第1号被保険者の場合は、厚生年金に加入していないため対象になりません。また、年金が支給される年齢になったとき、ご自身が受給資格を持っていないと、分割した年金を受け取ることができません。日本年金機構の「ねんきんネット」で、年金記録の確認ができますので、ご自身の年金記録を確認してみてはいかがでしょうか。

筆者プロフィール: 半沢まりこ

オフィスシンシア代表
貯金ゼロ・パート収入のみで離婚し、お金の知識の重要性を痛感する。ファイナンシャルプランナーの勉強をした結果、生活の質を変えずに離婚前よりも貯金できるようになる。現在は、離婚前後の女性のお金と心の専門家として、講座や個別相談をはじめ、シングルマザー向けのコーチングでも活動中。自身のホームページ
AFP/GCS認定コーチ/マイライフエフピー認定ライター