オール電化住宅の増加やリフォームにより、IHクッキングヒーターを使う家庭が増えています。火を使わず掃除も楽というIHクッキングヒーターですが、気になるのはその電気代。ガスコンロよりも、光熱費は下げられるのでしょうか。そこで本稿では、IHクッキングヒーターとガスコンロの光熱費を比較するとともに、電気代が節約できるIHクッキングヒーターのお得な使い方もご紹介します。

  • IHクッキングヒーターの電気代とガス代はどっちが安い?

■IHクッキングヒーターとガスコンロの光熱費を比較

IHクッキングヒーターは、電気で熱を発生させる電化製品です。ガスコンロのような凹凸がないため掃除がしやすく、火を使わないので火災発生のリスクを軽減することができます。また、加熱が早く火力を調整しやすいのもメリットでしょう。

こうした利点のあるIHクッキングヒーターですが、ガスを使わない代わりに、電気代がどのくらいかかるのか気になりますよね。IHクッキングヒーターとガスコンロでは、光熱費はどちらが安いのか確認してみましょう。

<IHクッキングヒーターの電気代>

まずは、IHクッキングヒーターの電気代についてです。電気代は、以下の計算式で求めることができます。

消費電力(kW)×使用時間(h)×電気料金単価(円/kWh)

上記の式のうち、「電気料金単価」は、電気会社の契約プランによって、昼間と夜間で異なる単価が設定されていることもあります。ここでは、昼間(6時~22時)は27.5円、夜間(22時~6時)は20.5円として計算していきます(※1)。

また、IHクッキングヒーターの消費電力は、1つのコンロでは最大3.2kWほどになります(※2)。しかし、実際には、ヒーター数や火力によって変動し、最大電力で使い続けることはほとんどありません。弱~中火の場合、消費電力は500W前後になります。

そこで、「弱~中火」「最大電力」とその「平均」の1時間あたりの電気代を、昼間と夜間それぞれで計算してみました。

・昼間

弱~中火:0.5kW×1時間×27.5円=13.75円
最大:3.2kW×1時間×27.5円=88円
平均:(13.75円+88円)÷2=50.875円

・夜間

弱~中火:0.5kW×1時間×20.5円=10.25円
最大:3.2kW×1時間×20.5円=65.6円
平均:(10.25円+65.6円)÷2=37.925円

同じ時間帯に毎日1時間使用した場合、1カ月の電気代は、昼間だと約1,577円、夜間だと約1,176円となります。

<ガスコンロのガス代>

次に、ガスコンロのガス代を見てみましょう。ガスコンロの性能は、一般的に「出力(kW)」で表示されていますが、ガス代を計算する時には、それを「発熱量(MJ)」に換算します。「1kW=3.6MJ/h」で、ガス代を導き出す計算式は以下のようになります。

出力(kW)×3.6MJ/h×時間(h)÷ガスの発熱量(MJ/㎥)×ガス料金(円/㎥)

また、ガスには「都市ガス」と「プロパンガス」の2種類があり、ガスの発熱量は、一般的な都市ガスで45MJ/㎥、プロパンガスで99MJ/㎥です。これらをもとに、「弱火」「中火」「強火」とそれらの「平均」の1時間あたりのガス代を、都市ガスとプロパンガスそれぞれで計算してみます。

なお、弱火は0.38kW、中火は1.68kW、強火は2.97kW(※3)、都市ガスの料金は全国平均の約150円、プロパンガスは約553円(※4)を用いるとします。

・都市ガス

弱火:0.38kW×3.6MJ÷45MJ/㎥×150円/㎥=4.56円
中火:1.68kW×3.6MJ÷45MJ/㎥×150円/㎥=20.16円
強火:2.97kW×3.6MJ÷45MJ/㎥×150円/㎥=35.64円
平均:(4.56円+20.16円+35.64円)÷3=20.12円

・プロパンガス

弱火:0.38kW×36MJ÷99MJ/㎥×553円/㎥=7.64円
中火:1.68kW×36MJ÷99MJ/㎥×553円/㎥=33.7円
強火:2.97kW×3.6MJ÷99MJ/㎥×553円/㎥=59.7円
平均:(7.64円+33.7円+59.7円)÷3=33.68円

毎日1時間使用した場合、1カ月のガス代は、都市ガスで約624円、プロパンガスで約1,044円となります。

以上の結果をもとに、IHクッキングヒーターとガスコンロの1カ月の光熱費を安い順に並べてみると、このようになりました。

ガスコンロ(都市ガス):約624円
ガスコンロ(プロパンガス):約1,044円
IHクッキングヒーター(夜間):約1,176円
IHクッキングヒーター(昼間):約1,577円

光熱費を比較してみると、最も安いのはガスコンロのうち都市ガス、最も高いのはIHクッキングヒーターを昼間に使った場合でした。その差は、約2.5倍にも及びます。しかし、IHクッキングヒーターの電気代の計算には、最大電力で1時間使った場合も含まれます。実際は最大電力で使い続けることはないこと、また、使い方を工夫することで、電気代は抑えることができます。

(※1)Looopでんき「スマートタイムプラン」参照
(※2)パナソニック「ビルトインIHクッキングヒーター Yシリーズ」参照
(※3)東京ガス「ご家庭のお客さま向けFAQ」参照
(※4)石油連盟「1kWhあたりのエネルギー別単価比較!!」参照

■IHクッキングヒーターの電気代を節約するには

1.電気料金の安い時間帯に利用する

電気の料金プランには、昼夜の区別なく電気を使った分だけ課金される「従量電灯プラン」や夜間の電気代が安くなる「時間帯別電灯プラン」など、様々なプランがあります。

日中は仕事で家を空けているという場合、契約している電気会社に「時間帯別電灯プラン」があれば、これを利用してみましょう。電気料金の安い夜間のうちに料理をすれば、IHクッキングヒーターの電気代を節約できます。

2.他の加熱方法を併用する

下ゆでや煮込みは電子レンジを使用する、お湯は電気ケトルで沸かしておくなど、他の加熱方法も併用してみましょう。節約のみならず、時短にもなりおすすめです。

3.熱伝導率の高い調理器具を使う

IHクッキングヒーターではIH対応の鍋を使いますが、中でも鉄製やステンレス製の鍋は熱伝導率が高く、加熱時間が短くて済みます。節電のためには、調理器具にもこだわってみましょう。

4.節電機能を活用する

IHクッキングヒーターには、消費電力を自動で切り替えたり、調理後に電源を切ると使用した電気代の目安が表示されたりと、様々な機能が搭載されています。これらの機能を活用し、電気代を抑える工夫をしてみましょう。

■工夫すれば電気代は抑えられる

便利な一方、ガスコンロに比べると光熱費が高いIHクッキングヒーター。しかし、電気料金の安い時間帯に使用するなど工夫をすれば、電気代を抑えつつ快適に使用することができます。毎日使うものだからこそ、積み重ねで電気代を節約しましょう。