前回は、立てた予算に自信を持つためにすることについて説明しました。今回は、本連載の締めくくりとして、財務担当者へお薦めする参考文献を紹介します。
企業の資金を預かる立場として、ファイナンスの知識を身につけるだけでは実務上不安が残る場面はあるかと思います。帳簿をつける、予算を立てるという作業は、企業活動を机上で再現し、将来を予測することと同義ですから、商売の全体像について把握する必要があります。しかし、小さい会社でもない限り、財務担当者が他部署の業務に携わることはないです。未経験の仕事のノウハウを自分の業務に取り込むためには、情報収集が欠かせません。筆者が読んで役に立った書籍を、分野毎に列挙します。
財務
企業財務の分野で、理論と実務のバランスがよい教科書を2冊紹介します。大学生でも読める内容です。
また、金融機関側が融資の審査をする際にどのようなプロセスを経ているのか、資金調達する企業側が融資を申し込む際に何を考えればよいのか、各々の視点から解説した本を3冊並べました。
会計
利益計算の詳細なプロセスについて解説した教科書を1冊、疑わしい会計処理について解説しており反面教師として活用できる内容の本を2冊、それぞれ選びました。
営業
営業は、財務担当者が最もイメージしにくい仕事かもしれません。営業担当者がどれだけ大変なのか追体験できる本と、利益に直結する「値決め」に関する教科書を取り上げています。
■ 絶対達成バイブル
広報
広報の仕事は効果測定が難しく、財務担当者を悩ませます。下記の書籍は広報の業務内容を詳細に把握できるので、お薦めです。
人事
人事制度を構築する上で参考となる概要書と、報酬に関する相場観を解説している本です。
エンジニアリング
商品やサービスを提供する際に、段取りを考え、資材を準備し、工数を見積もります。納期・品質・コスト等、作業が完了するまで不確実なものをどのように管理するのか、リスク評価も含めて概観できるように文献を集めました。
■ 失敗百選
■ WBS構築
先人の知恵
現代のCFOの役割と、かつて番頭と呼ばれた経営者の役割は、相通ずるものがあると感じています。筆者が個人的に憧れている3名の経営者の著作・評伝を挙げました。併せて、日本最古の経済小説といわれる古典をひとつ。財務の仕事に思い悩んだときのヒントになると信じています。
■ 松崎半三郎
■ 新版 日本永代蔵
以上になります。
およそ3ヶ月に渡り、連載を続けてまいりました。説明不足の部分もあったかと思いますが、財務を担当する皆様の一助となれば幸甚です。最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
※写真と本文は関係ありません
執筆者プロフィール:千保 理(せんぼ ただし)
株式会社情報基盤開発 CFO(最高財務責任者)
ロンドン日本人学校中学部、東京学芸大学教育学部附属高等学校、東京大学運動会バドミントン部を経て、東京大学大学院経済学研究科修士課程企業・市場専攻修了。専門は企業金融(コーポレート・ファイナンス)。生命保険会社のシステム子会社にて勤務した後、東京大学発IT系ベンチャー企業である株式会社情報基盤開発にCFOとして参画。Microsoft Innovation Award 2015にて勤務先が優秀賞を受賞した際のプレゼンター。融資による資金調達を得意としている。