世の中には、自慢話や自分の武勇伝を語るのが大好きな人たちがいます。

極々たまに聞かされるというのであれば素直に関心することもあるかもしれませんが、いつもいつも自慢話ばかり聞かされているとさすがにうんざりしてきます。こういった「自慢話が大好き」な人たちとは極力関わらないようにしておくのが精神衛生上一番よいのですが、たとえば自分の上司や先輩がこのタイプだった場合には邪険に扱うわけにもいきません。

「もうその話は何度も何度も聞きました! とりあえず黙ってください!」

と心のなかでは叫んでいても、現実にはそんなこと言えるはずがありません。結局は、自慢話が終わるまでじっと耐え忍ぶことになります。

こういった上司や先輩の自慢話から逃げられないことが、大きなストレスになっているという人も意外と多いのではないでしょうか。こういったストレスを軽減するためには、自慢話ばかりする人への対処法を学ぶのが近道です。

自慢話ばかりする人はかわいそうな人

そもそも、なぜ彼らは機会さえあれば自慢話ばかりしようとするのでしょうか。ポイントになるのは自尊感情(自己肯定感)です。

自尊感情は仕事や生活に前向きに取り組むためには欠かせないものです。自分のすることに自信が持てる人は、仕事でもプライベートでもよい結果を残しやすいですし、余裕が生まれ他人にも気を配ることができます。自分に自信がある人は、自分がどんなすごいことをしたとしてもそれを自慢話としてしつこく語るようなことはありません。わざわざ自慢話をして他人から褒めてもらわなくても、自分で自分を肯定できているからです。

一方で、自尊感情が低い人の場合、「自分はすごい」「自分は他の人よりも優位である」ということを他者を通じて確認する行為が必要になります。そのため、何度も何度も自慢話をすることになります。自慢話ばかりする人は、結局は自分に自信がないのです。そういう意味では、自慢話ばかりしている人は「かわいそうな人」だと言うこともできるでしょう。

さっさと昇華させて次の話題に進めるのが正解

このように、自慢話は結局は自信のなさの裏返しですので、相手が自慢話をしようとするのを露骨に嫌がって反発するのは相手の自尊感情をさらに傷つけることになり、逆効果です。

「その話は前にも聞きましたよ」

なんて正直に言おうものなら、相手の自尊感情はズタズタになります。ヘタすれば復讐として仕事上で不利益な扱いを受けることになるかもしれません。ここで必要なのはやはり大人の対応です。

自慢話が始まってしまったら、自慢話を切り上げさせるのではなく一秒でも早く最後まで話してもらうことを目指すとよいでしょう。合いの手をいれる場合には「それでどうなったんですか?」「早く先を聞かせてください」といったように自分がその話に強い興味を抱き、早く続きを聞きたいと思っているように振る舞えれば相手は喜んで先を話してくれます。こうやって相手の自尊感情さえすばやく満たしてしまえば、話題は他のものへと進みます。このように、自慢話には「褒めておだててサッサとその話題を終わらせる」ように対処するのが王道です。

それでもイライラしてしまう人へ

そうは言っても、相手が自慢話をするのはイライラするしモヤモヤするという人もきっといることでしょう。そういう人は次のようなやり方で自慢話に接してみるといいかもしれません。

1つ目のやり方は、「哀れみの気持ち」を持って自慢話を聞くことです。前述のように、自慢話をする人は基本的に自分に自信を持つことができない「かわいそうな人」です。会社で自慢話ばかりしているあの上司も、もしかしたら家庭では奥さんや子供からも疎まれ続けていて、会社で自慢話でもしないことには自分を維持できないのかもしれません。このように「ああ、かわいそうだなぁ」という哀れみの気持ちを持って自慢話を聞くようにすると、不思議とイライラやモヤモヤも湧いてこないものです。

2つ目のやり方は、自慢話をする人を「観察」してみることです。自慢話のレパートリーにはどのようなものがあるのか、朝・昼・晩ではいつが一番自慢話がなされる頻度が高いのか、今月に入ってからこの話が出たのは何回目か、相手が男性か女性かで自慢話の内容に変化はあるかなど、科学者にでもなったつもりでアレコレと観察して傾向を研究してみるとイライラせずに自慢話を楽しむことができます。「そろそろあの自慢話が来そうな気がする……!」と予想できるようになれば、かなりのものです。

いずれのやり方も、自慢話をする人よりも心理的に一段上がった状態で自慢話を聞くようにするという点が共通します。自慢話をする人と同じレベルに立ってまともに相手にしようとするから、イライラしたりモヤモヤしてしまうのです。自慢話をする人とは同じレベルに立たないことが、自慢話で心を乱されないためのコツです。


日野瑛太郎
ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。

(タイトルイラスト:womi)

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