問題行為を起こした人物のSNSを見ると、さもありなん、そのような行動につながる発言や行為が見られることが多く、後から考えると「ああ、そういえば……」と思い当たるふしが、日頃の言動や態度にあることも少なくありません。
今回は、担当顧客からのクレームを真剣に捉え、念のためにSNS調査をしたことで、当該社員の歪んだ性癖のみならず過去に犯した事件まで発覚し、その後の大きなリスクを回避することができたケースをお届けします。
「あの人、うちの担当から外して欲しい」の一言が全ての始まり
「担当を替えて欲しい。〇〇さんをうちの担当から外して欲しい」。
取引先からそのような電話があったとき、あなたの会社ではどのように対応しますか。謝罪し、「何かありましたか?」と簡単な聞き取りはするものの、取引先が「うーん、ちょっと合わなくて……」と言えば、それ以上は深掘りせず担当替えをして、本人には軽く注意するだけ。クレームの多いサービス業や、担当顧客数が膨大で営業社員の数も多くローテーションに問題がない場合、このように済ませている会社も少なくないでしょう。
営業社員のYについてこのような要望が顧客からあったときも、そうなる可能性がありました。ただ、偶然にもYの同僚であるMの姉がこの顧客夫妻の友人であったこと、Yの上司であるN氏が部下の相談を握りつぶさず真剣に受け止める人物であったことが救いとなりました。
顧客の夫妻には、中学生と小学校に入学したばかりの2人の娘がいました。元CAであった母に似て、愛くるしい顔立ちのお嬢さんたちです。この中学生の娘さんが、「Yが妹を変な目で見ている」「やたらカラダに触れてくる」「気持ち悪い」と何度も訴えたのです。最初は「何を言ってるんだ」と苦笑していたご両親ですが、妹の「お兄ちゃんに『イチゴパンツ見せて』って言われた」というひと言に、度肝を抜かれます。しかしながらそれが1年半も前の話だということ、本人以外に目撃者もいないこと、実害がなかったことから、Yを担当から外してもらえば解決すると考えたのです。
上司の脳裏に、Yの過去の不審な行動と発言がよぎった
「たったこれだけで調査?」と思われた方もいるでしょうか。実はこの話を聞いたときに、N氏の脳裏に、社内運動会でのYの不審な行動が浮かんだのです。家族で参加している社員も多かったのですが、カメラマンを買って出たYは絶えず幼い女児を気にしてファインダーで追っていたように見えました。しかしその時は「子供好きなのだろう」ととらえ、特段問題行動とは考えませんでした。また同僚Mの「Yさんってロリコンじゃないですか? 飲み会のときに『20歳以上はババア』なんて発言をして、周りからドン引きされてましたよ。」というひと言も気になりました。そこで、YのSNSなどをチェックしておこうと考えたのです。
そのSNSは、チラッと見ただけでわかるほど真っ黒なものでした。好きなゲームやアニメの類はロリ、それも監禁ものなど。投稿にも歪んだ女性観や、小児性愛をほのめかすコメントが数多く見られました。社員のプライバシーは恋愛や性癖を含め自由なのが原則ですが、犯罪につながるものや社会的道義的に許されないものとなれば話は別です。ましてこの会社の事業内容や商品は、家族や子どもに関するものであり、他社に比べても「女児」に接する機会が多いのです。N氏は、徹底したSNS調査を弊社に依頼すると同時に、Yの顧客や他の社員からも情報を得ることにしました。
そして発覚した学生時代の犯罪行為と逮捕歴
こうしてN氏と我々の調査によって、様々な情報が集まりました。Yは学生時代に、女児わいせつを繰り返し、逮捕されていたことがわかったのです。被害者家族に対しYの両親が示談金を支払ったためにことなきを得ただけで、Y自身の考え方や性癖は変わらないままだったことが、現在のSNSから読み取れます。我々の報告を受けたN氏は頭を抱えました。N氏自身も2人の子どもがいる身で、許しがたいと感じたに違いありません。また顧客先には子どもがたくさん集まるスイミング施設などもあり、Yがそれらを担当していたとあっては、正に獣を放つようなものです。その後N氏からは、一旦Yを内勤部門に異動させ、扱いについて上層部と検討することになったという連絡がありました。
まとめ
仮にこのケースで、Yの問題行動が見過ごされ、新たな被害者を生んでいたらどうでしょう。過去にも、同僚と共謀して就業中に顧客に対して監禁や暴行などの犯罪行為に走った事件がありました。内容が内容だけに、当該企業は世間から大きな非難を受けてイメージは失墜し、莫大な損害を被ったのです。
このような事態を避けるために企業ができるリスクマネジメントとして、SNS調査は非常に有効です。上記で挙げた例でも、その企業が人材教育を行っていなかったとは思いません。それでもなおそういう人物が紛れ込むリスクは避けられないのです。採用時や現職社員に対する調査を行うことは、確実性の高い「リスク回避」といえるでしょう。