ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本連載では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。
知っておきたい仮想通貨に関する税金
仮想通貨の取引などで得た利益には税金がかかります。株式投資やFX投資で得た利益にも税金がかかりますが、仮想通貨の場合は「雑所得」に分類され、所得額によって税率が変動しますのでご注意ください。
雑所得は、所得税法上の基本的な所得の区分(以下の9種類)に該当しない所得のことをいいます。
・利子所得
・配当所得
・不動産所得
・事業所得
・給与所得
・退職所得
・山林所得
・譲渡所得
・一時所得
株式の配当などで生活している投資家であれば「配当所得」。賃貸マンションなどを経営している大家さんであれば「不動産所得」。フリーランサーや副業・複業をされている方であれば「事業所得」。会社などに雇用されているビジネスパーソンの方であれば「給与所得」が主な所得になります。
これらに該当しない「雑所得」には、公的年金や、作家以外の方が受け取る原稿料・印税などが含まれ、仮想通貨による所得もこれに該当します。
雑所得の税率はどれぐらい変動するの?
雑所得は他の所得と同様に合算され、以下の税率・控除額で計算されます。なお、所得税の税率は所得が上がるにつれて税率も上がる累進課税の仕組みになっており、5%~最大45%です。
課税される所得額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超~330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
330万円超~695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円超~900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
「仮想通貨で利益を得られたとしても、55%も税金で消えてしまう」と言われているのは、この最大45%の税率に個人住民税10%を加えた数字のことを指しています。仮想通貨投資で大きな利益を得た人の中には、宝くじに当たったかギャンブルで大当たりしたような感覚を抱いてしまう人も多いでしょう。あぶく銭と捉え、パッと使いたいという人もいらっしゃると思います。使ってしまった後に納税で困らないよう注意が必要ですね。
どんなときに税金がかかるの?
国税庁の個人課税課が発表している資料によりますと、主に「仮想通貨の売却」「仮想通貨での商品の購入」「仮想通貨と仮想通貨の交換」が課税対象になるとのことです。他には、以前ご紹介したマイニングによって仮想通貨を得た場合にも対象になるようです。
売却時や決済利用時に税金がかかることは知られていると思いますが、仮想通貨と仮想通貨を交換した場合も対象になることは案外知られていないかもしれませんね。
税金はどうやって計算すればいいの?
それでは、仮想通貨取引で売却益が出た場合、どのように計算すればいいのでしょうか。例として、給与が年500万円の会社員の方がビットコインの取引で売却益(所得)を得たケースで考えてみましょう。
1BTC:100万円のときに5BTC(500万円分)購入
1BTC:130万円のときに3BTC(390万円分)売却
仮想通貨を売買して得た所得の計算式は、「売却価額-1BTC(仮想通貨)あたりの取得価額×支払いBTC(仮想通貨)」です。
今回の場合は、「売却価額130万円×3BTC-取得価格100万円×3BTC=90万円」となります。
この90万円を給与所得の500万円と合算して、上記の税率・控除額に当てはめた所得税の計算式が下記の通りです。
「所得590万円×20%-42万7,500円=75万2,500円」
給与所得の500万円だけであれば所得税は57万2,500円でしたが、仮想通貨取引での所得90万円が加算され、税金が18万円増額されたことになります。
決済に仮想通貨を利用した場合の計算方法は?
次は、ビックカメラでビットコイン決済を利用した場合を例に考えてみましょう。
ビットコインの価格が取得費用よりも上がった状態で決済したときは、その上昇分が所得として扱われます。給与所得500万円の会社員の方がビットコイン決済を利用した場合は、以下のようになります。
1BTC:100万円のときに5BTC(500万円分)購入
1BTC:130万円のときに1BTC(130万円分)で家電一式を購入
「支払価額130万円×1BTC-100万円×1BTC=30万円」となり、給与所得500万円と合算したときの税額は、
「所得530万円×20%-42万7,500円=63万2,500円」
給与所得の500万円だけであれば所得税は57万2,500円でしたので、仮想通貨売買の所得30万円が加算されたことで、税金が6万円増額されました。
仮想通貨は日々価格が変動するので計算が少々面倒ですが、税理士さんに相談してしっかりと申告するのがいいでしょう。少しでも海外で暮らした経験がある方は、日本の治安の良さや便利さを本当にありがたく感じるのではないでしょうか。そんな環境が整っているのも、税金のおかげですからね。
次回は、「ICO」についてご紹介します。
執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。