新型コロナウイルスとの厳しい戦いが続いています。政府は4月7日に東京都など7都府県を対象とする緊急事態宣言を発令、16日には緊急事態宣言の対象を全国に拡大しました。これを受けて各都道府県は「人との接触8割減」をめざして対策を強化し、大都市の繁華街などでは人出が減るなど一定の効果が出ています。
しかし人出の減少は都市によってばらつきがあるなど、まだまだ十分ではありません。「接触8割減」を達成するには、外出抑制をさらに強化する必要があります。そのためには、繁華街などへの外出抑制と並んで、出勤を減らすことが重要な課題となっています。
出勤の減少について政府は「7割減」を呼びかけています。最近は在宅勤務(テレワーク)を増やす企業が増加しているほか、通勤時の「3密」を避けるための時差出勤を取り入れるなど、各企業はさまざまな対策をとり始めています。しかしこれもまだ不十分と言わざるをえないのが実情です。
人材紹介・派遣大手のパーソルグループの調査によりますと、緊急事態宣言発令後の初日(4月8日)の7都府県の出社率は61.8%で、前日より6.2ポイント減少しました。同10日はさらに3.3ポイント下がって58.5%となりました。ただ、それでも政府が要請している「7割減」には程遠い結果です。
この調査は全国企業の約25,000人を対象に実施した大がかりなものですので、日本の企業全体の実情を相当的確に反映していると見ることができます。
同調査からはテレワークの実施状況も具体的に見ることができます。それによりますと、緊急事態宣言後、正社員のテレワーク実施率は全国平均で27.9%、うち東京都では49.1%でした。前回調査(3月半ば)では全国13.2%、東京都23.1%でしたので、いずれも2倍以上に増えたことになります。しかしそれでも「7割」には遠く届きません。
しかもこの数字は正社員の実施率です。非正規社員になると17.0%で、さらに実施率が下がります。
実は、同調査では「会社からテレワークについて特に案内がなく通常通り出勤している」と答えた人が全国平均で53.0%もいるのです。「テレワークを推奨されている」「命令されている」を合わせても40.7%にとどまっています。この数字は通常時なら「テレワークの割合が多い」と言えるかもしれませんが、これだけコロナウイルスへの対策が緊急課題となっている現在の状況では、依然として多くの企業経営者が「出勤を減らす」という意識に欠けていると言わざるをえません。
たしかにそれぞれに「出勤を減らすのは簡単ではない」という事情はあるでしょう。しかしこの数字は、すべての企業と経営者が「従業員の命を守る」ということを真剣に検討した結果とは思えません。出社を思い切って減らすことをまず大方針として掲げ、それを実現するために仕事の進め方を根本的に見直すことが求められています。