こうしてみるとテレビ東京の取り組みは、テレビ業界にとどまらず産業界全体を見渡してもかなり先行したものであり、かつ徹底したものと言えます。ただ自分の古巣ということで多少ひいき目のところがあるかもしれません。これだけに対策をとっていても当然のことながら感染リスクはあるわけで、今後も大丈夫とは誰も言えないのが現実でしょう。

ただ少なくとも言えることは、テレビ東京のような毎日放送を継続しなければならず職場の人口密度も高い会社でも実現できたのですから、業種を問わずどの会社でも実現の可能性はあるはずです。どの企業にとっても、従来の常識の延長線上ではなく、まず目標を明確にして、それを実現するには何が必要かを考え実行していく、そのためには仕事の進め方だけでなく番組(一般企業なら商品やサービス)の作り方や内容まで変える――など、大胆な発想と実行力が求められているということです。しかもそれを経営トップがリーダーシップを発揮して具体化することが重要です。

  • 企業のコロナ対策

    企業のコロナ対策

実際、多くの企業がさまざまな取り組みを進めています。

東芝は4月20日~5月6日まで工場を含む国内すべての拠点を休業します。オフィスだけでなく工場まですべて休業というのは、大企業ではおそらく初めてで、かなり思いきった措置と言えます。

また大手ゼネコン各社は建設工事の中断と現場の閉所に踏み切りました。業界準大手の西松建設が先鞭をつけ、ほとんどの大手各社も追随する動きとなりました。建設会社が工事を中断するには発注元の同意が必要なわけで、仕事を請け負っている側の建設会社がそこまで踏み込んだことは注目に値します。

インターネット事業のGMOグループは顧客向けサービスの各種手続きから印鑑を完全に撤廃し、取引先との契約は電子契約のみとすることを決定しました。 これは、契約書の捺印のために担当者が出社しなければならないという現状を変える必要があるとの判断によるものです。同社の従業員のみならず、多くの顧客・取引先企業にとっても社員の出社を減らす効果が期待できます。

さらに契約の電子化は、従来は2~3週間かかっていた契約締結までの業務を最短で数分に短縮できるというメリットがあります。これは当面のコロナ対策にとどまらず、日本の電子契約の普及と企業の業務全般の変革につながるものでもあります。

これらは、まさに常識の延長線上ではない大胆な取り組みと言えるでしょう。逆に言えば、コロナ危機を早く収束させるには、そこまでの取り組みをしなければならないことを示しています。

さらに言えば、GMOグループの印鑑廃止と電子契約化のように、こうした取り組みはコロナ危機が収束した後の仕事の進め方や働き方を変えるきっかけになりうることも指摘しておきたいと思います。

テレビ東京のある後輩が「仕事の進め方や番組の作り方を思いきって変えてみたら、これでいいじゃないかと、コロナ収束後も継続できることがありそうな気がします」とつぶやいていました。多くの企業がそうしたことを可能にできれば、日本企業は危機を克服して強くなれると希望が湧いてくる気がします。