「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は、メタバースを体験できる「メタバースの学校」の校長であり、オンラインコミュニティ「メタバース2.0チャンネル」を運営する北村勝利氏にお話を伺いました。

  • 北村勝利氏/「メタバースの学校」校長、株式会社海馬 代表取締役兼メタバース「宝島」プロデューサー

メタバースの普及につながる3つの活動

――北村さんには以前、メタバースを2.5時間で体験できる「メタバースの学校」でご紹介したメタバースの学校に招待していただきました。ミニセミナーのなかで、「メタバースで何ができますか? どんなことができますか? 」という質問に対して、「お客様はだれですか? 」「なにが事業課題ですか? 」「なにがマーケティング課題ですか? 」「なにが専門分野ですか? 」という基本、かつ本質的で普遍的なお話をされていて、とても感銘を受けました。現在も、メタバースの学校等の活動は続けられているのですよね?

北村勝利氏(以下、北村氏):はい、続けています。BtoC事業として、メタバースを体験できる「メタバースの学校」、BtoB事業として「企業向けメタバース研修」、オンラインコミュニティの「メタバース2.0チャンネル」の3つが主な活動です。いずれも、メタバース普及のために続けています。

「メタバースの学校」は参加者が500名を超え、企業研修も50社を超えました。オンラインコミュニティは登録者も2万人になり、発展してビジネスマッチングやリアル開催の異業種交流会なども行ってきました。そこから、新しいメタバースプロジェクトが芽生えることもあります。

――北村さんはもともとゲーム業界にもいらっしゃって、メタバース・AR/VRの業界は長いのですよね。

北村氏:最初はゲームからですね。2015年は「AR/VR元年」と言われていて、当時からこの業界にいます。その頃に参入したプレイヤーは、今ではほとんど残っていません。それだけ競争の激しい世界です。「知見はあったものの、ビジネスにはならなかった」というのが、2015年から最近までです。

2021年にフェイスブックが社名変更し、「メタ」になりました。その報道を見て「これは、メタバースの時代が来る」と確信し、1週間ほどで今やっている3つの活動に着手しました。

メディアにも注目された招待制メタバース「宝島」

――招待制メタバースの「宝島」は、大手メディアにも取り上げられて話題になりましたが、どんなきっかけでスタートしたのですか?

北村氏:芸能プロの社長やマネージャーの方が、メタバースの学校に参加してくれたことがきっかけです。八代亜紀さんや中条きよしさん、川中美幸さん、山田邦子さんのメタバースイベントをプロデュースさせていただきました。「宝島」は、昭和にタイムトリップできる招待制メタバースというコンセプトです。NHKや、民放のニュース番組でも取り上げられ、八代さんたちにも喜んでいただけました。

宝島は、PCやVRデバイスを利用して、アバターとなって3D空間での交流を楽しむことができます。昭和をテーマにした「グランドキャバレー」や「スナック」という独自の空間に入場するためには、「有料チケット」を購入するか、イベント主催者の「招待」が必要です。

「祝い花贈呈システム」というユニークな機能も搭載していて、贈呈された祝い花は、実際に送り主の名前入りで会場内に掲示され、「お祝いメッセージ」も届けられます。祝い花の売上の60%は、タレント側に直接還元される仕組みになっています。メニューとしては、薔薇一輪(3800円)、3D花輪(1万円)、3D胡蝶蘭(3万円)があります。宝島はレンタルも可能なメタバース会場なので、芸能関係・エンタメだけでなく、企業のセミナーやパーティに活用することもできます。

「宝島」に続く新メタバースプロジェクト

――宝島以外には、どんなプロジェクトが進行中でしょうか?

北村氏:「メタバース占いフェスin宝島」という1Dayイベントを、クローバー出版と開催します。人気の占い師・カウンセラー・ヒーラー・チャネラー総勢8名が勢揃いするメタバースイベントです。会場は、新宿ゴールデン街をモチーフにしたメタバース特設エリアです。そこに8つのブースを構えて、8人の占い師の方々とお客さま双方がアバターで交流できるようにします。

他には、ベトナムの高度人材の日本語教育を、メタバースOJTという形で行うプロジェクトも進めています。ビザ取得の手続きに約4ヶ月かかるのですが、その期間を有効活用するため、ビザ不要でアクセスできるメタバースで研修を行います。今は、ペーパーテストなどの座学研修が中心なのですが、メタバースであればより実務に近い形で研修ができます。例えば、居酒屋メタバースをつくり、そこでアバターで接客を体験する。トイレ掃除やビラ配りを体験するなど、メタバースならではの疑似体験ができます。今後、インバウンド事業者向けにメタバースOJTによる日本語教育サービスを展開していく計画です。

――面白いプロジェクトですね。日本のコンビニも海外に研修施設をつくったりしていますが、メタバースで疑似体験できるのであればローコストで済みそうです。

北村氏:業界の課題はマネタイズなのですが、事業のユースケースをつくることが今は重要だと思います。彫刻や立体アート、銅像、甲冑など歴史的価値の高いもの、文化遺産などを3Dスキャンして、メタバース美術館・メタバース博物館で展示するのも良いと思います。空間や立体の疑似体験がメタバースの真骨頂ですから。

メタバースという言葉はすっかりメジャーになりましたが、まだまだメタバースを体験したことのある人も少ないので、「メタバースの学校」も広げていきます。そこでメタバースを体験して、事業担当者が責任を持って社内提案できるようにすることも大切です。メタバースの学校で個人として体験して、企業向け研修の相談をいただくこともあります。中小企業の研修も行ってきましたが、「社員に勉強させたい。体験したい」というニーズが多くありました。大企業の場合は、会社として取り組まないといけない。それで、プロジェクトチーム全員が共通の体験値を得るために研修に参加するというニーズです。共通体験したうえでディスカッションしないと、進むプロジェクトも進まなくなってしまいます。

ほかには、証券会社がVIPの顧客向けにメタバース体験をサービスとして提供したり、大企業の人事部もメタバースを研究し始めています。20代社員の離職率が上がっていて、その理由は「リモートワークによる孤立」です。上下左右の人間関係を構築できない。それをメタバースを活用することで解消できないか?というケースです。経営課題の解決策としてメタバースが検討されるようになったということは、成熟してきた証だと感じています。

(後編に続きます)