「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。
今回は「マインドとアウトプットのリスキリング」をテーマに、住友生命保険相互会社 情報システム部 デジタル&データ本部事務局 部長代理の猪山敦嘉氏にインタビューを行いました。
「言葉にする」というアウトプット力
――本日はありがとうございます。猪山さんは現在、第116回の記事「Z世代がDX人材になるための自己投資とリスキリング」で取材させていただいたエグゼクティブ・フェロー デジタル共創オフィサー デジタル&データ本部 事務局長の岸和良さんの秘書をされていますが、今の業務は猪山さんが長らく経験されてきた業務とは大きく異なるとお聞きしています。ある意味でリスキリングの真っ最中なのだと思いますが、「もっと磨かないといけない」と感じるスキルはありますか?
猪山敦嘉氏(以下、猪山氏):昨年の11月に秘書になり、よくイメージされる秘書業務に加えて、経営戦略に関する経営層報告や資料作成、研修やセミナーの企画から登壇までと幅広い業務を岸エグゼグティブ・フェロー(以下、岸フェロー)目線で取り組んでいます。それまではシステムエンジニアとしてを15年近く働いておりましたので、一気に視座を上げる必要があり、日々リスキリングの必要性に接しています。特に“言葉”を扱うスキルをもっと磨く必要があると思っています。岸フェローは会議中、メモも取らないにもかかわらず頭に全て入っているようであり、また、打合せ内容について自身の言葉で短くまとめて論点を的確に発言したり、資料においても短時間で“魅せる資料”を作るので、秘書になって間もない頃に、その秘訣を聞いてみました。岸フェローからは「自分もまだ若い頃、大量の会議の議事録を取って整理して、次のアクションを短期間で考える訓練を積んだ。本当に大量だった。そのうちメモを取らずとも忘れなくなった」と言われました。
大量の議事を短い時間で要点をまとめ、次のアクションに繋げるためには、アウトプットする力が必要だと思います。まだまだこのアウトプットの訓練が足りないと感じているので、機会がある度にアウトプットの訓練をしています。
私は理系で、結論を話すことには慣れていたと自身で思っていましたが、全く対応できないことに気づきました。入社して15年ほどは関連会社に出向しており、昨年4月に住友生命保険相互会社に戻ってきたのですが、出向先ではシステム開発が担当業務でしたので、現在の業務とは全く異なります。
今までにやったことのない秘書業務に加え、さらに経営に近いさまざまな業務を経験している最中ですが、社内外の人の言葉には意味があり、背景があり、意図があり、それらを汲み取って理解した上でアウトプットをしなければいけません。そのため、その人の目線になってアウトプットを考えないと本質の部分で大きなズレを生んでしまいます。例えば、経営会議に参加した役員の発言をそのまま言葉どおりに書くのではなく、その役員がどういった考え方を持っているのか、どういったニュアンスの発言なのかを理解した上でアウトプットするようにしています。その役員の発言ひとつで、アウトプットを読んだ人が、正しく意図を理解できず、この結果、会社の事業推進に影響を及ぼすようなこともあるので、言葉に対してとても慎重になりますし、「言葉を理解する」「言葉にする」という総合力としてのアウトプット力の大切さを強く感じています。
一人の先輩との出会いで入社を決意
――言葉って常日頃使っているはずのスキルなのですが、冷静に考えると複雑で曖昧で難しいものなのかもしれませんね。猪山さんが保険業界に関心を持った理由や、入社の経緯も教えてください。
猪山氏:大学では応用化学を専攻しており、4年生で研究室に入りました。そのまま修士課程に進むのがベーシックな流れなのですが、就活が2回できるなと思ったことから、せっかくなので広くさまざまな企業を見て回りたいと思い、軽い気持ちで就活を始めました。
最初から保険業界を考えていたというわけではなく、製造など金融以外の業界も見て回り、結果的に金融、その中でも生命保険会社に関心を持つようになりました。企業研究をしていくなかで、生命保険会社の総資産で「兆」という、国家予算でしか見たことがないような単位で持っている会社があるという事実にとても驚き、まだまだ自分の知らない世界があると感じたからです。
出身大学が同じで住友生命保険相互会社に勤めている、ある先輩とお話する機会がありました。その方の理路整然とした話し方や雰囲気、立ち振る舞いが私の理想とする社会人像にフィットしたということもあり、その方との出会いで入社を決めたと言っても過言ではありません。入社後、社宅でも一緒になることがあり、近くの居酒屋で飲んだお酒は格別でした。人生においてとても良い出会いだったと振り返ってみると思いますね。
2008年に入社し、すぐに関連会社のスミセイ情報システム株式会社に出向していました。スミセイ情報システムは、住友生命グループのIT戦略で培ったノウハウや経験をもとに、保険金融システムの開発や保守などを行う会社です。個人保険の保全業務に関するシステム開発や、新規契約業務に関するシステム開発も担当しました。
最初は雑務からのスタートでしたが、最後はプロジェクトマネージャーも担当することになり、とても良い経験ができました。特に、2015年に大きな商品改定があったのですが、部の雰囲気もとても良くて一体感があり、本当に大変なシステム開発でしたが、その中の一員になれたことは今でも人生の糧になっています。自分の胸の高さまであるプログラムの紙をひたすらチェックし、無事リリースまで漕ぎつけたことも良い経験になりました。
(後編に続きます)