ワイヤー状のドリッパーでコーヒーを淹れる

いよいよ本格的な夏を迎える。となると、飲みたくなるコーヒーはやはり、アイスだ。今回は、「スターバックス コーヒー」のコーヒースペシャリスト・田原象二郎さんにおいしいアイスコーヒーの淹れ方と、アレンジアイスコーヒーを教えていただく。

使用するのはスターバックス コーヒーの「グラスドリップコーヒーメーカー」。特徴はなんといってもワイヤー状のドリッパーにある。使用法としては、このドリッパーにペーパーフィルターをセットするのだが、コーヒー粉に湯を加えると、徐々に湯を吸い込んで粉が膨らんでいく。このドリッパーは従来のドリッパーと比べてペーパーフィルターと接している面積が少ないため、コーヒー粉が膨らんでペーパーフィルターが広がっていくのを妨げにくくなっている。コーヒー粉の膨らみを妨げないということは、コーヒーの旨みを十分に引き出し、やわらかい風味になるとういことだ。

スターバックス コーヒーの「グラスドリップコーヒーメーカー」(2,500円)と「アイスコーヒー ブレンド」(1,400円 / 250g)

なお、この涼やかなデザインのコーヒーメーカー、耐熱ガラス使用なので、アイスだけではなく、ホットの抽出も可能である。

それではいよいよ、田原さんに具体的な手順を教えていただくとしよう。今回は、特別にライムとシロップを使ったアレンジメニューを披露していただく。使用するコーヒー豆は、ラテンアメリカ産と東アフリカ産豆をブレンドした「アイスコーヒー ブレンド」(1,400円 / 250g)。カラメルやナッツをイメージさせるような風味、爽やかな後味が特徴的で、アイスコーヒー向けのコーヒー豆となっている。

「グラスドリップコーヒーメーカー」で淹れるアレンジアイスコーヒー

材料(3人分)
氷 分量は下記手順1参照 / シロップ 22.5cc / ライムスライス2枚 / コーヒー粉 30g / 湯 270cc

つくり方

1.ポットに氷を入れ、シロップ、ライムスライスも加える。氷は、ポット側面にある3本線の一番上にある3人分(450cc)のライン付近まで入れる。
2.ペーパーフィルターの側辺と底辺を折りたたみ、ドリッパーにセットする。なお、折りたたむ側辺と底辺は、同じ方向に折るのではなく、互い違いにするとフィルター内のコーヒー粉の層が崩れず、うまく抽出することができる。
3.ペーパードリップ用に挽いたコーヒー粉をフィルターに入れ、湯を少しずつ中心部分に注いで蒸らしの作業を行う。ドリッパーからポタポタと抽出液が落ち始めたら手を止め、蒸らす。蒸らし時間は20秒~30秒が目安。
4.蒸らしが終了したら、さらに湯を注ぎ入れて本抽出を。ポット側面にあるラインの一番上まで抽出できれば完了。
5.ドリッパーをはずし、ポットを軽く揺すって全体を混ぜ、グラスに注ぐ。

できあがったコーヒーは、ライムの清々しい酸味とシロップの甘みでまるでカクテルのよう。"大人のアイスコーヒー"といった印象だ。シロップとライムスライスを加えただけの簡単ドリンクとは思えないほどの味わいだ。氷をポットに入れておいたので、コーヒーを急冷することができ、コーヒーの香りや風味をギュッと閉じ込めることができる。

さて、手順で数点おさらいしておきたい部分がある。まずは手順4の本抽出。蒸らしの際に、中心部分に湯を落としていくが、本抽出に入っても基本的には中心付近に湯を注いでいけばよい。「まんべんなく湯がいきわたるように」と外側のほう(つまり、ペーパーフィルター付近)まで湯を注ぐ人もいると思うが、湯は徐々に全体に広がっていくので心配は無用だ。逆に、ペーパー付近にまで湯を注いでしまうと、コーヒーの層が崩れてしまうのと、湯がコーヒー粉を通らずにそのまま外に出てしまう。これでは抽出液を湯で薄めているのも同然なのだ。

湯の上面に浮いている白い泡がコーヒー豆のアク

また、手順5では、ドリッパー内の湯が8分目~満タン状態のうちにドリッパーをポットからはずしている。「もったいない」と感じる人もいるかもしれないが、これもおいしいコーヒーを淹れる大切な要素となる。

写真を良く見てほしい。湯の上面には白い泡が浮いている。これ、実はコーヒー豆の"アク"である。ドリッパー内の湯がなくなるまで抽出してしまうと、このアクも抽出液に入ってしまう。これは、本抽出中においてもいえること。ドリッパー内の湯がなくなってから足し湯をするのではなく、湯があるうちに注ぐようにしてほしい。アクを入れないようにするだけで、スッキリ感があってエグみのない、飲み心地のよいコーヒーに仕上がる。

さらに、田原さんからおいしく仕上げるコツを2つ教えていただいた。1つ目は注湯の試し打ち。蒸らしで湯を注ぐ際、ポットややかんなどを使う人が多いと思うが、「実際にコーヒー粉へ湯を打つ前に、試しに湯を打ってみるといいですね」。慣れない器具を使っていると、どの程度の湯が出てくるのか予測が付かないことがある。「少しだけ湯を入れよう」と思っていても、湯がドバッと大量に出てくることもある。これでは蒸らしができなくなってしまう。慣れないうちは、試し打ちをして湯量を把握するようにしよう。なお、今回はアレンジアイスコーヒーを教わっているが、ライムスライスとガムシロップを除けば、淹れ方自体はストレートのアイスコーヒーも同じである。

慣れないうちは、抽出の前に試し打ちをしよう

ライムの"スライス"を使う点にもポイントが

2つ目は今回使用しているライムについて。「スライスではなくて、果汁をしぼってもいいですか」と聞くと、「絞ると皮の苦味が出てしまいます。風味をほんのりつける感覚で、スライスを入れてみてください」とのお答え。なお、ライムのかわりにオレンジやレモンのスライスも「アイスコーヒー ブレンド」とは好相性なのだとか。オレンジだとほのかな甘みが感じられ、レモンはスカッと爽やかな風味が楽しめる。日によって、気分によって、フルーツをかえて楽しんでみてはいかがだろうか。暑い夏も、1杯のコーヒーで爽やかに過ごせることだろう。

「スターバックス コーヒー」コーヒースペシャリスト 田原象二郎さん。2000年、スターバックス コーヒー ジャパンへ入社後、6年半にわたる店舗勤務を経て現在に至る。同社の社内職位であるコーヒースペシャリストとして、社内外のコーヒー啓蒙活動を行っている


撮影: キミヒロ