「子育てにお金ってどれくらいかかるの?」「東京暮らしと地方暮らしとでは、子育てにかかるお金に違いがあるの?」「教育資金づくりってどんなふうにするの?」「教育費が足りない場合どうしたらいいの?」など、子育て真っ最中の方、またはこれから子育てする方には、こんな疑問や不安がある方も多いのではないでしょうか。

前回につづき、今回も「子育てとお金」をテーマに有益な情報をご紹介していきます。「出産にかかるお金」「教育費の目安」「教育資金づくりの方法」「教育費を地域別で比較」など、さまざまな角度から、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が「子育てとお金」についてお伝えしていきます。

奨学金の返還(=返済すること)

今回は、日本学生支援機構の貸与型奨学金を利用した場合の「返還」についてお伝えします。貸与型の奨学金は、給付型とは異なり返還が必要です。日本学生支援機構の奨学金では、「返済」ではなく「返還」という言葉を使っていますが、「借りたものを返す」という意味では同じです。今回は、日本学生支援機構の貸与型奨学金においての「返還方法」についてお伝えします。

奨学金の貸与終了から返還完了までのスケジュール

奨学金の貸与終了から返還完了までの大まかな流れは下記のようになっています。

▼在学中(貸与終了年度以降)

・「返還のてびき」「貸与奨学金返還確認票」「口座振替(リレー口座)加入申込書」が交付される
・返還説明会の参加
・金融機関で「振替口座(リレー口座)」加入申し込みの手続き

▼卒業後

・振替口座(リレー口座)から返還(年1回、振替案内が送付される)

返還完了

参照 : 貸与から変換完了までの流れ

「貸与奨学金返還確認票」が交付されたら確認すること

「貸与奨学金返還確認票」より下記を確認しましょう。もし記載事項に変更がある場合には、貸与中の方は学校に申し出を、貸与終了後の方は、「返還中の願出・届出-JASSO」を参照し、日本学生支援機構へ届出をしてください。

・借りた金額
・借りた期間や月額の明細
・返還する金額(第二種奨学金の場合、利息が加算された金額となる)
・機関保証の場合:本人以外の連絡先の記載事項に変更がないか
・人的保証の場合:連帯保証人・保証人の記載事項に変更がないか

参照1 : 貸与奨学金返還確認票の確認
参照2 : 返還中の願出・届出

保証制度

貸与型奨学金を申し込むときに【1】機関保証制度または【2】人的保証制度のどちらかを選択しているので、確認しましょう。

【1】機関保証制度
一定の保証料を保証機関に支払う事により保証機関の連帯保証を受ける制度です。なお、本人が延滞した場合、本人に代わって保証機関が弁済し、その後、弁済した額を一括して保証機関が本人に請求することになっています。

【2】人的保証制度
とは、一定の条件にかなった連帯保証人(奨学金を借りた本人と連帯して返還の責任を負う人)および保証人(奨学金を借りた本人や連帯保証人が返還できなくなった場合、本人に代わって返還する人)が保証する制度です。

参照1 : 機関保証制度
参照2 : 人的保証制度

奨学金の返還方式

2017年度以降に第一種奨学金を利用した人は、奨学金を申し込むときに、下記の【1】定額返還方式または【2】所得連動返還方式のどちらかを選択していますので、確認しましょう。

【1】定額返還方式とは

貸与総額に応じて決定した一定の金額を返還する方式です。なお、第二種奨学金は、定額返還方式のみとなります。

割賦方法
【A】月賦返還:返還回数に応じて、毎月27日に引き落とし
【B】月賦・半年賦併用返還
  月賦分 :借りた金額の半分を毎月引き落とし
  半年賦分:残り半分を6ヵ月ごとの1月と7月に引き落とし

※月賦・半年賦併用返還を選択した場合、1月と7月は、月賦と半年賦の両方が引き落としされるので、口座への入金等をして残高不足にならないように事前準備しましょう。

参照 : 返還方式について 参照 : 割賦方法と返還開始月

【2】所得連動返還方式とは

前年の課税総所得金額に応じて割賦金(返還月額)が決まる返還方式です。返還者の所得に応じて返還月額が決まる仕組みのため、無理なく返還ができます。所得連動返還方式では、【A月賦返還】のみで、【B月賦・半年賦併用返還】はできません。また、保証制度は、機関保証のみとなっています。

所得連動返還方式を選択した人は、卒業後、すぐの年度の返還額は、原則として、定額返還方式で計算された返還月額の半分となります。さらに経済的な事由により半額でも返還が困難な場合は、願い出ることにより最低月額2,000円での返還ができます。なお、定額返還方式で計算された返還月額が2,000円以下になる場合は、2,000円の返還金額となります。

参照 : 所得連動返還方式について

第二種奨学金の利率算定方式

奨学金を申し込む際に【1】または【2】いずれかを選択しているかと思います。

【1】利率固定方式 :返還期間中利率は変化しない固定金利
【2】利率見直し方式:おおむね5年ごとに利率が見直しされる変動金利

【1】・【2】どちらも基本月額にかかる利率は、年3%が上限となります。なお、2021度の基本月額の貸与利率(年利%)は、利率固定方式が0.268%、利率見直し方式が0.003%となっています(2021年6月現在)。

参照 : 利率の算定方法選択制

口座振替加入手続き

口座振替加入申込書の記入例が「返還のてびき」にあるので、参照して必要事項を記入し、金融機関の窓口で加入手続きを行ってください。また、加入手続き後「預・貯金者控」を金融機関から受け取りそのコピーを学校に提出する必要があります。

参照 : 返還のてびき

奨学金の貸与が終了すると返還の開始時期

卒業した月の翌月から数えて7カ月目の27日から始まります。例えば、3月に貸与が終了した場合は、10月から返還が始まります。

奨学金を返還する際には、申し込み時に選択した「返還方法」「保証制度」「利率算定方式」等を改めて確認しておきましょう。次回は、「奨学金の返還が困難な場合」に利用できる制度等をお伝えいたします。

参照 : 奨学金について