「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながらお伝えいたします。

薬剤師がいなければ第1類医薬品は購入できない

東京在住時は、一般用医薬品に「第1類医薬品、第2類医薬品、第3類医薬品」と3つに区分されていることを気にすることはありませんでした。

  • 第59回「地方ドラッグストアには薬剤師がいない?」

第1類医薬品は、薬剤師から情報提供を受けないと購入できません。一方、第2類医薬品と第3類医薬品は、薬剤師だけでなく、登録販売者からも購入することができます。

東京のドラッグストアでは、営業時間を通して薬剤師が常勤しているところが多く、第1類医薬品を購入できなかったという経験はありませんでした。しかし、地方に住んでいた時には、第1類医薬品を購入することにとても苦労しました。

近くのドラッグストアに行っても「本日、薬剤師は不在です」とか「このドラッグストアには薬剤師はおりません」と言われることが多く、何軒かドラッグストアのはしごをしたのを覚えています。

そこで今回は、薬剤師について調べてみました。

一般用医薬品は大きく3つに分けられる

一般用医薬品の3つの区分は、下記のように分かれています。

第1類医薬品・薬剤師が対応(リスク高) : アレルギー治療薬、毛髪薬、鎮痛剤など
第2類医薬品・薬剤師または登録販売者が対応(リスク中) : かぜ薬、解熱鎮痛剤、胃腸鎮痛薬など
第3類医薬品・薬剤師または登録販売者が対応(リスク小) : 整腸剤、ビタミン剤、消化薬など

■性別・薬剤師数

「厚生労働省の2018年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、2018年12月31日時点における全国の届出「薬剤師数」は311,289人で、男性は120,545人(38.7%)、女性は190,744人(61.3%)となっています。また、2018年届出薬剤師数を2016年の同統計と比較すると、9,966人増加しています。

■勤務先別・薬剤師数

薬剤師の主な勤務先は、最も多いのが薬局で180,415人(58.0%)、次に医療施設で59,956人(19.3%)となっています。薬剤師の半分以上が薬局に勤務していることになります。

■都道府県別・薬剤師数

下記の(表1)を見てみると、全国での薬局・医療施設に従事する人口10万対薬剤師数は、190.1人(男性65.4人・女性124.7人)となっています。これを都道府県別にみると、徳島県が233.8人と最も多く、次に東京都226.3人、3番目に兵庫県223.2人となっています。一方、最も少ないのは沖縄県で139.4人、次に福井県152.2人、3番目に青森県153.0人となっています。薬剤師が最も多い徳島県と最も少ない沖縄県では、94.4人も差があります。

また、人口の多い地域の方が薬剤師の数も多いとは限りません。人口の多い愛知県の薬剤師数は168.3人、埼玉県は175.5人であり、全国平均190.1人を下回っています。

※出典 : 平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
図14 都道府県(従業地)別にみた薬局・医療施設に従事する人口10万対薬剤師数
※人口10万対比率は、「人口推計(2018年10月1日現在)」(総務省統計局)の総人口により算出したもの

  • 都道府県(従業地)別にみた薬局・医療施設に従事する人口10万対薬剤師数

    (表1)都道府県(従業地)別にみた薬局・医療施設に従事する人口10万対薬剤師数

終わりに

私が住んでいた地方は薬剤師の数が少ない地域だったため、薬剤師が常勤しているドラッグストアが少なかったのかもしれません。

地方に在住していたころ、ロキソニンという第1類医薬品の鎮痛剤を購入するために薬剤師のいるドラッグストアへ足を運んだことがありました。その際に「薬剤師は不在のため、15時以降まで第1類医薬品を販売できません」と言われ「来る前に電話で薬剤師が在勤しているか確認すべきだった」と感じる出来事がありました。

地域によって薬剤師の数にばらつきがあると、地域によって「すぐに必要な薬を購入することができない」ということが何度も起こり得るでしょう。できるだけ地域差なく、必要な時に薬を購入できるとよいですね。