「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。
お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。
前回第177回コラムでは、JR東日本「旅せよ平日! キュン パス」やJR西日本の「QR2dayパス」を活用し、地方への「旅行」を「内見」へと視点を変える考え方についてお伝えしました。「交通費が抑えられるならば、一度候補地を見てみたい」と思って頂けたら幸いです。
移住を検討する際に、アクセスの良さを重視する方も多いでしょう。その点では、首都圏や関西圏からのアクセスが良い静岡県、愛知県、岐阜県、三重県といった東海地方は魅力的ではないでしょうか。しかし、東海道新幹線は「のぞみ」によるスピード重視の移動が主流であり、どうしても特定の主要都市だけに目が向きがちです。
今回は、あえて「ゆっくり、深く」地域を知るための手段として、JR東海が提供するサービスを活用した移住下見術をご紹介いたします。
1.「こだま」を使いこなす。各駅停車で見つける「自分に合うまち」
新幹線が止まる大きな駅の周辺だけを見て「便利だけど、これでは東京とあまり変わらないな」と感じてしまうことはありませんか。「地方のリアルな生活感」は、急行が止まらない駅や、新幹線の各駅停車駅の先に隠れているかもしれません。
そこで、活用したいのが、JR東海が提供するお得な新幹線片道プランの「ぷらっとこだま」(東海道新幹線の東京⇔新大阪)および「行こっか! こだま」(山陽新幹線の新大阪⇔博多)です。
<ぷらっとこだま/行こっか! こだまの特徴>
・コストパフォーマンス:通常の指定席料金よりも数千円単位で安く移動することができます。
・移動の小さな楽しみがある:
「ぷらっとこだま」では、2026年4月1日乗車分より、「ご当地セレクトクーポン」と「1ドリンク引換券」のいずれかを選択して1つもらえます。
「行こっか! こだま」では、到着地でおみやげなどの購入に使える300円利用券(新下関着の場合は500円利用券)がもらえます。
・利便性:EXサービス(ネット予約)専用販売で、出発前日23:30まで予約可能です。仕事の状況次第で急遽「プライベートな時間が1日取れる!」というタイミングでも、柔軟にスケジュール調整ができます。
移住先探しの視点から見た最大のメリットは、「こだま」に限定することで、各駅の風景に目を通すことになる点です。例えば、静岡県内には、熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松と多くの新幹線停車駅があります。それぞれの駅で降り立ち、前回のコラムでお伝えした「スーパーの品ぞろえ」や「夜の街灯の明るさ」を確認するのは、移動コストを抑えつつ、一歩ずつ進むこのスタンスが最適です。浮いた交通費で、現地でのレンタカー代や、地元の不動産情報を集めるための費用に回す。このような「下見」の進め方も良いのではないでしょうか。
2.ファイナンシャル・プランナーが考える「下見コスト」の投資価値
「地方移住に興味はあるけれど、何度も現地に行くのはお金がかかるし…」と二の足を踏んでしまう人は少なくありません。しかし、FPの視点からすると、移住前の「下見」にかける費用は、将来の大きな損失を防ぐための「保険料」のようなものです。
十分な下見をせずに移住を決めて、数か月後に「思っていた生活と違う」と都心に戻ることになれば、引越し費用や不動産の購入や賃貸に係る費用など、数十万円から数百万円の損失が発生する可能性が高いです。
前回と今回のコラムでご紹介したような格安パスを駆使して、数回に分けて現地を訪れて、その総額が5万円、10万円になったとしてもそれは決して「浪費」ではありません。「本当にここで居心地よく生活していけるのか」という確信を得るための、必要不可欠な投資なのです。前回のコラムでも触れたとおり、まずは「ふるさと回帰支援センター」で情報を整理し、相談員さんに現地の「移住コンシェルジュ」を紹介してもらいましょう。
この春、さまざまな鉄道サービスをチェックすることから、あなたの移住計画を少しずつ具体化してみませんか。
