「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。
お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。
「移住先の住まい」というと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
「都心部から地方へ移住する際の住まいは、老朽化した古い家屋と土地を購入して、自分の生活に合わせてリフォームして住む」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。移住先で住宅を購入して暮らしている方もいらっしゃいますが、移住先が自分の暮らしに本当に適しているのかは、実際に数年住んでみないとわかりません。また、移住した後に、違う地域で暮らしたいと思った場合、移住先で購入した住宅を処分(売却等)するのは、手間も費用もかかります。
そこで、地方住宅供給公社が賃貸している「DIYが可能な賃貸住宅」で自分らしい住まいを自分で作って、移住先で暮らしてみるのはいかがでしょうか。
今回は、一部ですが、DIYが可能な公社賃貸住宅(地方住宅供給公社が建設し、賃貸している住宅)をみてみましょう。
■愛知県住宅供給公社
<DIYができる箇所>
・天井の補強
つっぱりアジャスター金具(壁に穴をあけずに天井へ突っ張って固定することができる金具)やアコーディオンカーテンなどの取付けによって、ライフスタイルに合わせた間取りに変更できる。
・壁
クロスの張替え、塗装、棚の取付けなどをして、自分好みにアレンジすることができる。
例:壁にDIYで作ったカップボードシェルフ(棚板があり扉のないオープンタイプの収納棚)を設置した。
例:天井の補強部分を利用して、部屋につっぱりアジャスター金具を使い、パーテーションを作った。
■大阪府住宅供給公社
<DIYができる主な箇所>
・壁や柱などの木の部分にくぎ、ビスを打つことができる。
・クッションフロアを貼り替えることができる。
・壁紙の貼り換えができる。
・壁の色を塗り替えることができる。
・扉やふすまの取っ手を取り換えることができる。
・ふすまや扉に、ふすま紙や壁紙、リメイクシートを貼ったり、塗装したりすることができる。
・キッチンの扉などにリメイクシールを貼ることができる。
・カーテンレールを取り換えることができる 。
・押入れにビス止めをしてハンガーパイプを設置することができる。
・スイッチプレート・コンセントカバーを取り換えることができる。
愛知県と大阪府、2つの地方住宅供給公社を見てみると、「DIYができる範囲」は似ていますが、「DIYができる範囲」の細かい部分は異なるので、DIY賃貸住宅にご興味がある方は、DIYが可能な箇所、DIYをしてはいけない箇所を改めて確認したほうがよいでしょう。DIY住宅を賃借する際に注意しなければならないこともあります。例えば、下記のような事項です。
・DIYをするためには、「DIY届出書」を提出しなければならない。届出書所定の条件に従って行うDIYについては、原状回復義務(退去するときに元に戻すこと)が免除される。なお、「DIY届出書」を提出せずに、勝手にDIYをした場合は、原状回復義務は免除されない。
・供給されているすべての賃貸住宅でDIYができるのではなく、賃貸住宅の一部について、DIYが可能な物件があり、DIYができる箇所も物件によって異なる。
終わりに
地方住宅供給公社が貸主の場合、賃借における様々なルールが明確にされているため、「大家さん次第」ということがなく、DIYにおける可否も細かく設定されているので、DIYにおけるトラブルも事前に防げるでしょう。移住する場合、新しい地域で暮らすこと自体刺激が多いので、自宅は、自分好みで落ち着ける空間を作り上げるとリラックスできると思います。移住してすぐに自宅を購入するのは、ハードルが高いと思いますので、まずは、地方住宅供給公社が提供している「DIY賃貸住宅」に住み、新しい地域で、自分の部屋作りをしてみるのはいかがでしょうか。