今回のテーマは「新幹線」だ。
たまに「貴様、単語を1つ言っとけばとりあえず何か書いてくると思っているだろ」というテーマが出てくる。内容がかぶってはいかんと、他媒体までチェックしてテーマを決めている他所の担当が驚愕していたほどだ。

もちろん金さえもらえりゃ何でも書かせていただくのだが、ただひとつ言っておきたい、俺はそんなに乗り物好きじゃねえ、と。この調子で「キハ75形」とか出されても何も書くことがないのでここらへんで言っておく。

  • 新幹線

当然、新幹線に対しても「感情がない」。
必要性があれば乗るのだが、それもあまりない、私が県外に行くとしたら大体は仕事であり、ほぼ東京だ、そして東京には飛行機で行く。

世の中には、乗り物に乗っている時間を楽しめる人間と、一定時間を超えると狂を発する人間がいる、私は後者だ。

乗り物というのは、じっと座ってなければいけない上に、場合によっては10 cm隣に他人がいる、こんな状況は乗り物に乗る以外ではそんなにない。そして私は乗り物酔いがヒドイ。

つまり私にとって乗り物というのは、苦手な物全部乗せ、サブウェイだったら口に入れる前に具が2,3個落ちている状態だ。

よって、乗り物に乗っている時間は1秒でも減らしたい方である、
東京も飛行機で行くと2時間で着くが新幹線だと4時間はかかる、これは生死を分ける時間だ。

しかし新幹線にも良い所はある。

まず、最近の新幹線には充電コンセントがついていることが多い。乗り物内でスマホの充電が切れるというのは、すなわち「GAME OVER」を意味する。

何もすることがなくなり、あとは虚空を見つめるしかない、外の風景を見ようにも、新幹線というのはトンネルが多いので、大体漆黒の闇である。

それが、ご自由にお使いくださいのコンセントが座席にあれば、安心して電池を食うゲームなどにも興じることができる。

もちろん移動時間中にノートパソコンなどで仕事をすることもできるが、それは2億%しない、むしろ仕事をするぐらいなら虚空を見つめるという強い意志でしない。

これは携帯電話などが普及する前、移動時間中に読もうと文庫本をしこたま持ってくるが結局読まなかったのと同じだ。

物が変わっても我々は未だに「旅先にただの重りを持っていく」ことを止められないのである。

もうひとつ新幹線の良いところは、乗り物の中でも座席が比較的ゆったりしているところだ、特に重要なのは、前の席との間隔である。

飛行機の場合、ここが激狭なのである。一度、普通席が取れず、1,000円高いプレミアム席に座ったことがあるが、プレミアムはここが広い。

だが、座っている時の圧迫感などは正直どうでもいい、問題は便所などに立つ時だ。窓側の席に座り、かつ隣に人がいる場合、通路が狭すぎてほぼムリヤリ通ることになる、体が確実に当たるので、もちろん「すみません! 」は必須だ。

ちょっと体格がいい人だと、通るために1回立ってもらわないといけなくなる、コミュ症はここですでに「1機」失う。

当然、行きがあれば帰りがあるので、席に戻る際、もう1回立ってもらわなければいけなくなり、さらに「1機」失う。

つまり、目的地に着いた時点で、クリボーに1回当たっただけで死ぬ状態になっているのだ、そのぐらいの疲弊がある。

これが「1回のフライトで2回便所に行く」という事態になったら、機内でゲームオーバーしている。

よって、私は飛行機に乗る時は必ず通路側を選ぶようにしている。
窓側か通路側かというのは、乗り物酔いしやすい人間にとっては「この選択が生死を分けた」とナレーションがつくぐらい重要なことであり、もちろん窓側の方がいいのだが、この「すみません! 」を言いたくないので私は常に通路側を陣取る。

新幹線だと席にゆとりがあるので、そこまで気を遣わず便所にいけるのが良い、飛行機よりは遅いが、乗っている時の快適感は新幹線の方が上だ。

そして、新幹線といえば「スゴクカタイアイス」だろう。

新幹線では車内販売があり、そこで売っているアイスがスゴクカタイのだ、このスゴイカタサは経験した者にしかわからない。

やはり、秒で食べられてしまうようなアイスだと、長い道中では間が持たないので、食べるのに時間がかかるよう固くしたのか、と思えば「おいしさを追求した結果、固くなった」らしい。

意外にも、固くしようとして固くなったわけではないようだ。

奇しくもそれが長旅で食べるのにちょうどよくなったのだが、逆にあと10分で降りるという状況でこのスゴクカタイアイスを買ってしまうと、一口も食えぬまま降車することになる。

何でも通販で手に入る世の中だから、あのスゴクカタイアイスも取り寄せようと思えばできるのだろう、しかしあれだけは新幹線で食わなければ意味がない気がする。

筆者プロフィール: カレー沢薫

漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。「やわらかい。課長起田総司」単行本は全3巻発売中。