多くの人が、否応なしに、自身の働き方やキャリアについて考えさせられる機会となったコロナ禍。結果的に、異業種・異職種へのキャリアチェンジに踏み切った人、将来的に検討している人は、どうやら少なくないようです。

そこで、リクルートスタッフィングの事務職未経験者向け無期雇用派遣サービス「キャリアウィンク」のマネジャーを務める井上結実さんに、転職市場の実態や動向、若手社員がキャリアチェンジを成功させる秘訣について、詳しく話を伺いました。

  • キャリアチェンジ「しない」選択は?

年齢にふさわしいキャリアを描けているかどうかを見極める

「今のままでいいのか……」。ふと、そんな疑問を抱いたり、不安や焦りに駆られたりする瞬間は誰しもあると思います。それは自分と向き合い、見つめ直す好機。でも、そこで新たな一歩を踏み出すばかりが正解ではないと、井上さんは言います。

「同じ会社で働いた経験がある程度まとまってあるというのは一つの価値。ここじゃない、ここは違うと頻繫に転職するよりも、どんな仕事であっても『自分がやり切った』と言えるところまで頑張ったという経験が、今後のキャリア形成につながると思います」。

ただ一方で、年齢とキャリアはバランスを取っていく必要もあると井上さん。

「年を重ねるにつれ、その人がそれまでに歩んできたキャリアが、その人自身を表すものになっていきます。今の自分のキャリアは人からどう見えるのだろうか。年齢に応じたふさわしい経験やキャリアを積めているのだろうか。そんな風に自分自身のキャリアを客観的に振り返り、その上で、もうしばらく今の会社に留まるべきか、キャリアチェンジすべきか見極めて、行動を選択する必要があると思います」。

  • 「年齢とキャリアはバランスを取っていく必要もある」と話す井上さん

定期的な振り返りがキャリアを形作る

自分自身を振り返る作業は、誰もが定期的に行うべきだと井上さん。

「当社では半年に一度、採用したキャリアウィンク社員に対し、派遣先での仕事の振り返りを徹底して行っています。就業先の上長の方と本人それぞれに、同じ項目に沿ってパフォーマンスを振り返ってもらい、それを突き合わせてフィードバックするのですが、それを繰り返していると、自分が現場でどのように活躍できていて、どんな要素で評価されているのか、自分のどこに期待をかけられていて、その期待に応えるためにはどうあるべきなのかが分かり、努力すべきこと、目指すべき目標が明確になって、成長のスピードが速まるのです。

また同時に、この作業は、自分の強みを認識するのにも役立ちます。自分はこういうことができると胸を張って言えるようにしておくことは、将来的に転職やキャリアチェンジを選択しようとした時に重要なポイントになります。変化の激しい世の中、叶えたい未来は自分でつかみにいく必要があります。それには、努力をし続けることが大切です。振り返り作業は、キャリア形成において大きな意味を持ちますので、ぜひ皆さんにもお勧めしたいです」。

取材協力:井上結実(いのうえ・ゆみ)

株式会社リクルート スタッフィング
エンゲージメント推進部 キャリアウィンクグループ マネジャー
アパレル系企業2社を経て、2011年にリクルートスタッフィングに入社。現在は、事務職未経験者向け無期雇用派遣サービス「キャリアウィンク」の採用や研修、マッチング業務などに従事。自身のキャリアチェンジ経験も活かしながら、未経験から事務職へチャレンジする人々を応援している。