貿易に関する知識や実務能力を測る「貿易実務検定」をご存知でしょうか。国際競争の激化やTPP(環太平洋パートナーシップ)が影響し、近年、貿易を取り巻く環境は刻々と変化しています。

こうした中で貿易業務を行うには、貿易実務についての幅広いスキルや知識を身につける必要があり、そのレベルを客観的に証明するのが「貿易実務検定」です。では、この検定に合格すると、仕事上でどのように生かせるのでしょうか。貿易実務検定の内容や、レベルごとの難易度とあわせてまとめてみました。

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貿易実務検定の内容や各級の難易度

貿易実務検定は、日本貿易実務検定協会が主催する民間の検定です。貿易実務についての知識、実務能力がどの程度あるのかを確かめる検定であり、レベル別にA~Cの3つの級に分かれています。各級の内容や難易度をそれぞれ見てみましょう。

C級

最も難易度の低い貿易実務検定C級は、おおむね1~3年以上の実務経験レベルであり、定型業務をこなすための知識があることを証明できます。C級の試験は年5回開催され、合格率は50~60%と比較的高くなっています。試験科目と配点は、「貿易実務(150点)」と「貿易実務英語(50点)」の合計200点で、2科目の合計が160点(80%)を基準として試験委員長の定める点が合格基準点となります。貿易実務初心者はまずC級で基礎固めをし、さらに上級の試験へステップアップしながら実務を着実に身につけていくのが良いでしょう。

B級

貿易実務検定B級は、おおむね1~3年以上の実務経験レベルで、貿易実務経験者の中堅層を対象としています。B級の試験は年3回開催され、合格率は40~50%程度です。試験科目と配点は、「貿易実務(150点)」「貿易実務英語(100点)」「貿易マーケティング(50点)」の合計300点です。合格基準点は、3科目の合計が210点(70%)を基準として試験委員長の定める点となります。

A級

貿易実務検定A級は、最も難易度の高い級であり、おおむね3~4年以上の実務経験レベルです。貿易実務において、判断業務を行うことができる実力を証明する級です。A級の試験は年1回実施予定で、合格率は30%前後となっています。試験科目と配点は、「貿易実務(200点)」「貿易実務英語(150点)」「貿易マーケティング(100点)」の合計450点です。合格基準点は、各回の基準点(3科目の合計)により決められます。

なお、C 級とB級の出題形式は全て選択式で、A級は選択式と記述式で試験が行われます。各級で共通して出題される貿易実務の内容としては、貿易に関する金融、法務、書類、保険、通関などのほか、為替や貨物の知識などが問われます。

B級は実務の出題範囲がC級とほぼ同じですが、難易度はアップします。特に、ある程度の判断業務をこなしながら正しい手続きを行うことが求められるため、法務の知識が問われています。A級になると税務の内容も加わり、各分野の深い知識が必要です。さらに、ある具体的な事例とそれに対して取るべき処置を解答する「事例式」の問題が出題されますし、書類作成の比重も高く、試験中の解答に時間を要するようです。

貿易実務検定は、受験資格に制限がなく、誰でも受けられる検定です。C級から順を追ってA級まで目指す人もいれば、基礎力のある人はいきなりA級から受験する場合もあるようです。いずれにしても、貿易に関わる仕事をするならA級合格まで目指したいですね。

ちなみに、貿易に関する資格として「通関士」があります。通関士の試験は、貿易関連法規、特に通関について深く掘り下げる内容ですが、一方の貿易実務検定では、マーケティングや商談、契約、クレームなど貿易実務について幅広い内容を学習する点が違いとして挙げられます。

貿易実務検定をどのように生かせるか

貿易実務の専門知識が得られる貿易実務検定。その資格は、仕事にどのように生かせるのでしょうか。

貿易実務検定はその名の通り、貿易に携わる職場で活躍するための検定です。国際取り引きのある部署や企業で働くことを希望するなら、就職や転職の際に資格を持っていると有利になるでしょう。特に転職の場合、貿易実務検定の取得を応募資格としている会社もあります。

また、勤務年数ごとに貿易実務検定の各級の合格が必須条件となっている商社やメーカーもありますし、貿易実務のレベルが客観的にわかる貿易実務検定は、昇進の判断材料としても使われています。そのほかに、インターネットで個人輸入ビジネスを行う際にも、貿易実務の知識やスキルを活用することができるでしょう。

貿易実務検定の特徴としては、各級の内容やレベルがすべて公開されているため、貿易実務の知識や業務遂行能力の客観的な証明になるということです。就職や転職の際、自分にどの程度のスキルが備わっているかアピールできますし、採用する企業側としても獲得したい人材の明確な目安として貿易実務検定を利用できるメリットがあります。

貿易実務のエキスパートを目指すなら

貿易実務検定で問われる内容は、実際の実務に直結するものばかり。そのため、本検定に沿った研修が行われる企業もあるほどです。世界と日本を結ぶ貿易の仕事に就くのであれば、貿易実務検定を受けながら実務の知識とスキルを取得し、エキスパートを目指したいですね。

武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント

会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。

イラスト=竹村おひたし