ファミリーマートのクレジットカードである「ファミマカード」の発行が開始されました。9月1日から既存会員向けの提供が開始され、10月1日からは新規会員の募集も始まりました。他のカードがポイント還元を打ち出す中、「最大5%割引」という値引きを提供するファミマカードの背景について、ファミリーマート 金融事業本部 金融事業部 部長の寺田晴彦氏とポケットカード 営業本部 営業第一部長の小川岳生氏に話を聞きました。
ファミマで5%引きになるカード
ファミリーマートは、ポケットカードが「ファミマTカード」を2007年から発行してきました。2025年2月までの発行枚数は460万枚を突破しており、特にファミリーマートでの利用が多かったカードです。それを今回、「ファミマカード」としてリニューアルしました。
ファミマTカードは、その名の通りTポイントと連携したカードです。200円の買い物で1ポイントが貯まり、ファミリーマートの利用では最大2%貯まるという点が特徴でした。新たに登場した決済サービスのファミペイとも連携し、チャージで0.5%のファミマポイントが貯まるという点もメリットです。
その後、TポイントがVポイントと統合して新たなVポイントになり、同社としても戦略の転換を図りました。ポイントを固定しないことで、各種ポイントカードを提示してポイントが貯められるマルチポイント化を図りました。
これには、集客力を高めたかったという理由があったといいます。もともと2019年からは店頭でのdポイントと楽天ポイントの付与も開始。決済サービスのファミペイも投入して、複数のポイントを紐付けられるようにしました。この結果、ファミリーマートではVポイントを使っていたユーザーが、普段使っているポイントに流れたことで、Vポイントに特化したファミマTカード利用がわずかに減少傾向にあったとのこと。
寺田氏は、「楽天ポイントやdポイントの提携カードがない」ことへの不満の声もあったと話します。過去には他社ポイントの提携カードも検討したと言いますが、「それだといつまで経ってもポイント事業と一蓮托生になってしまう」と寺田氏は強調します。
そうした状況から、Vポイントのように特定のポイントと連携しなくても魅力的なスペックのカードを作れるのではないかと考え、ポイントと切り離したというのが今回の新カードだと言います。
この背景には、キャッシュレス化の進展もあったと寺田氏は話します。国内全体でのキャッシュレス決済比率は40%を超え、ファミリーマート内でも同等の割合になっているそうです。こうした状況下では、他社クレジットカードよりもハウスカードを利用してほしいという意向が強くなったということのようです。
キャッシュレス決済における手数料を、他社カードではなく、グループ会社のポケットカードに取り込むことで、グループ全体でのメリットに繋げるという狙いもありそうです。この場合、決済手数料を安価に設定できるので、ファミリーマートの店舗にとってもファミマカードを利用してもらうメリットがあるでしょう。
実際、ファミリーマート店頭に現金かファミペイの利用を促す掲示がされていたことが話題になりました。手数料が抑えられるのであれば、ファミマカードはこうした店舗の声にも応えられるものになりそうです。
ポイント還元ではなく割引を提供
カードスペックとして最大の変更点は、特典をポイントではなく割引にしたという点です。ファミリーマートでの利用に関しては請求時に最大5%の割引を提供。さらにファミリーマート以外のJCB加盟店でも請求時に1%の割引を提供します。
以前のVポイントの還元率は、ファミリーマートで2%、他のJCB加盟店で0.5%でした。ファミマカードでは特典がポイント還元ではなく割引には変わっているものの、実質的にはファミリーマートで2.5倍(5%)、JCB加盟店で2倍(1%)の還元に拡大したと考えることができます。寺田氏は、「商品の魅力は高まっていて、ファミリーマートで使うクレジットカードの中では一番お得なカード」とアピールします。
ただし、この「最大5%割引」を実現するためにファミペイとの連携を設定する必要があります。ファミペイはすでにダウンロード数2,700万を超える人気アプリに成長していますが、このファミペイとの親和性をより高めようというのがこの施策だと言います。連携自体もワンボタンで行えて簡単に連携できるとのこと。
これは、ファミペイに登録したIDをベースにファミマユーザーとして囲い込みを狙ったものだと小川氏は説明します。ファミペイとファミマカードの両軸で利用を促していくことが狙いです。
ファミリーマートとしてはファミペイの利用を第一に拡大していきたい考えで、決済手段は人によって異なるため、好む手段を使ってもらえばいいという立ち位置です。「コード決済が好きならファミペイ、クレジットカードが好きならファミマカードを使ってもらえれば」と寺田氏。ただし、ユーザーにとっては「ファミペイとファミマカードをダブルで使ってもらえればいっそうメリットがある」とアピールします。
5%割引に加え、例えばキャンペーンなどでファミマポイントをファミペイに付与する場合もあるため、ファミペイとの併用が一番お得になる設計になっています。
ファミリーマートでは5%、さらにJCB加盟店でも1%割引という還元率を設定したのは、「コンビニを主戦場とした高還元カードがある中で、後発となるため、従来の(最大)2%水準では勝負できないと考えた」と小川氏は話します。
例えば三井住友カードや三菱UFJニコスでは、コンビニでは「最大20%」のような高還元をアピールしています。これらは一定の条件が必要で最大還元になる人は多くはないでしょうが、ファミペイ登録のみという条件で5%還元(割引)という「インパクトのある数字」にしたそうです。
さらにファミリーマート以外でもJCB加盟店では1%割引とすることで、ファミリーマート以外での利用拡大も狙います。割引額の上限がないため、ファミリーマートの5%割引よりも1%割引の方がコストは大きいはずですが、小川氏は「それでも利用が増える想定で、ポケットカードの既存商品(P-oneカード)で実績のあるコンセプトで勝負をかけた」と言います。
ちなみに、P-oneカードユーザーがファミマカードに移行してしまう可能性もありますが、ポケットカードとしては「どちらかが伸びればいい」(小川氏)という観点ということです。
既存のファミマTカードユーザーは新カードに移行。クレジット機能を使っていないユーザーに対しては更新カードの発行希望を問い合わせますが、「想定以上に利用を再開したいと希望する人が多かった」と小川氏は話します。ちなみにこの場合、カード番号は変更されず、一時的に同じカードが新旧で2枚発行されることになります。旧ファミマTカードは有効期限まではこれまで同様に使えますし、9月1日からは最大2%ポイント還元ではなく最大5%割引の新商品に切り替わっています。
若年層にも分かりやすい割引で勝負
寺田氏によれば、現在のファミマTカードのメイン客層は40~50代の男性が多く、これもかつてファミマTカードを作った人が次第に年齢を重ねていった結果とみられています。そこで、新カードでは若年層を強化セグメントとして拡大していきたい考えです。
大学生や新社会人が初めて持つカードとして保有してもらえるようにアピールしていきたい考えで、さらに加盟店にとっても手数料が安くなることから、店舗でのカード訴求に向けて販促物を制作するなど、ユーザー拡大を図ります。
そのため、カードデザインも配慮しました。従来のカードデザインはグリーンで「ファミリーマート色に偏りすぎていた」と寺田氏。ファミリーマート以外でも使いやすい高級感のあるイメージにしたと言います。
割引にしたというのも若年層を意識した結果というのは小川氏。ポイントの有効期限管理や円換算の還元率の計算が面倒など、ストレスを感じている若年層がいるという調査を踏まえ、割引という形で分かりやすさを出し、カード自体のデザインもシンプルで分かりやすいものにしました。「『使って気がついたら割り引かれていた』という勝負の仕方が、コンビニという業態においては有効」との考え。
ただ、ファミマカードの利用には注意点もあり、Apple Payに登録しての支払いでは5%割引になりません(ファミリーマートでも1%割引のみ)。小川氏は、スマートフォンでの利用も今後増えるとしつつ、現在は物理カードでのタッチ決済を使うユーザーが多く、当面は物理カードでのタッチ決済利用を推進していく考えだとしています。
同社では10月1日の新規会員の募集にあわせて各種キャンペーンも実施。SNSやファミリーマート店内でも広告を行うほか、店舗外の駅や鉄道でのサイネージも含めて、認知を拡大して新規利用者への訴求を促進していきたいそうです。





