SDGs(持続可能な開発目標)の考えが広まるにつれ、今まで不人気だった食材にもスポットライトが当たるようになりました。下処理や調理を工夫することで、美味しく食べられるようになったそうです。

「この10月に出た新商品がまさにそれ。生臭いと敬遠されてきたマグロの血合いが、高級グルメ缶詰に仕上がっています!」

そう興奮気味に語るのは缶詰博士の黒川氏。一体どんな缶詰なのでしょう?

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  • カネシメ/我が鮪・本鮪の角煮 左:味噌煮、右:木桶醤油

    カネシメ/我が鮪・本鮪の角煮 左:味噌煮、右:木桶醤油

三浦市発のマグロ缶

マグロの名産地として知られる神奈川県三浦市。三崎港には料理店が並び、いつも魚を焼く匂いが漂っている。ちょいと足を伸ばせば城ヶ島があり、安房埼灯台までの道程はまるでアイルランドの荒れ地のようだ(よく知らんけど)。

そんな三浦市で近年、マグロの血合いの研究が行われている。血合いには「セレノネイン」という抗酸物質が含まれていて、食べ続けることで活性酸素の生成防止&消去とか(マジか)、損傷したDNAの修復とか(すげえ)、健康増進に役立つことが分かってきたそうな。

そこで誕生したのが今回の缶詰「我が鮪・本鮪の角煮」だ。三浦市でマグロの卸と加工業を営む「カネシメ」が協力企業と共同で開発。醤油煮と味噌煮の2種類が10月中旬から販売されることになった。

  • 本鮪の角煮・木桶醤油の外観と内観

    本鮪の角煮・木桶醤油の外観と内観

弓削多醤油を使用

醤油煮を開けると、脳髄を刺激する香ばしい匂いが立ち昇った。加熱したマグロに醤油、ショウガが溶け合っており、雑味がなくすっきりした匂いだ。

ちなみに、使われている醤油は「弓削多醤油」の木桶醤油であります。今では希少な伝統製法で造られた醤油だ。

  • 本鮪の角煮・味噌煮の外観と内観

    本鮪の角煮・味噌煮の外観と内観

生臭さはまったくなし

味噌煮を開けると、やはり加熱したマグロの香ばしい匂いが立ち昇った。血合いを思わせる生臭い匂いはまったくしない。

意外なのは、味噌の匂いがかなり控えめであること。缶汁の色合いも薄いから、味噌のコッテリさを強調しない方向で仕上げたのだと思う。

  • 左:木桶醤油、右:味噌煮

    左:木桶醤油、右:味噌煮

マグロ本来の風味

木桶醤油と味噌煮をそれぞれ箸上げしてみる。焦げ茶色の部分が血合いだが、それ以外の肉も付いている。カネシメのM氏に訊いてみると、血合いは背身と腹身の間にあるため、その周囲の肉も一緒に切り出しているという。なるほど、そのほうが製造効率が良さそうだ。

どちらも脂が乗っていて、噛むたびに脂がにじみ出る。加熱したマグロの香りが素晴らしく、血合いを食べている感覚はほとんどない。

味付けは、味噌煮のほうが木桶醤油よりも甘さがあり、それでいて飲み込んだあとはすっきりしている。

  • ねぎまで堪能

    ねぎまで堪能

うまみを吸ったネギがたまらん

かくのごとし。鍋でネギを焼いたところに木桶醤油の中身を入れ、水菜を加えて「ねぎま」に仕立ててみた。

鍋の余熱で温まったマグロが、抜群にウマい。噛むたびに甘い脂とうまみが湧き出てくる。そのうまみを吸ったネギと水菜がまたたまらん。これ、まさしく「ねぎま」だな。

翌日は味噌煮でねぎまを試してみたが、ほっこり甘い味になっただけでおいしさは変わらなかった。

缶詰情報
カネシメ/我が鮪・本鮪の角煮 味噌煮、木桶醤油 各150g 約1,300円
全国の高級食品店や小売店などで10月中旬から発売予定