気になっているけど一度も食べたことがないものって、ありますね。私にとってはホヤがその代表です。苦みがあって、特有の匂いもあって、でもそれを乗り越えればやみつきになるとか。最初のハードルが高すぎます(笑)。
「そんなあなたにはこれ!」と、どこかで聞いたことのある台詞で迫ってきたのは缶詰博士。「ホヤは加熱するとマイルドになります。なのでまず缶詰から入るのがオススメなんです」。
なるほど、そうなんですね博士。ていうか、ホヤも缶詰になってるんですか?
溺れた時の味
食用ホヤは宮城県以北の海で育つ。なので東北出身の僕にとって、ホヤの刺身や酢の物は幼時から見慣れていた。でも好きなわけじゃない。苦みもさることながら、磯臭のダイレクトさがきつい。まるで海で溺れた時の味なのであります(個人的な感想です)。
しかし蒸しホヤというのを初めて食べて、見方が変わった。加熱することで溺れた匂いは消え(個人的な感想です)、うまみがぎゅっと凝縮されていた。
このカンナチュールの「ホヤのアクアパッツァ」も、オリーブ油やにんにくと一緒に煮てあるから、きっとおいしいはずであります。
まずローリエ
さあ本日もご唱和下さい。開缶!
と、まず目に映るのは大きなローリエの葉1枚。ちょっと拍子抜けしたような、でもほっとしたような。
ホヤということで若干身構えていたので、このワンクッションがあって良かったかもしれない。
このローリエとにんにくのおかげで、全体の匂いは完全なイタリアンだ。その合間に、あの懐かしのホヤちゃんが「あ、どうもご無沙汰です」という缶じで匂ってくる。それはつまり磯っぽい匂いである。若干不安になってきた。
大きくてプレッシャー
主役のホヤを箸上げすると、この有様。デカい、デカ過ぎるぞ。持ち重りするほどのサイズだ。
いつもなら主役は大きければ大きいほど嬉しい。例えばこれが牛肉だったらどうだろう。ありがたくて小躍りするはずだ。
しかし、今回はプレッシャーである。「加熱してるから大丈夫」と編集部に言った手前、大丈夫じゃなかったら困る。ビリー・ジョエルも耳元で「プレッシャー!」と叫んでいる(1982年のヒット曲)。
イタリアンとして缶成
かくのごとし。逃げをうってひと口サイズにカットしてしまった。真のホヤ好きなら、あのままがぶりがぶりとかじっていけたはずだ。
しかし、こうして切って分かったこともある。内側のオレンジ色が鮮やかなのだ。表面はだし巻き卵のように淡い黄色だし、その対比が美しい。
ともかく、ひと口いってみましょう。むむっ、あれれ。おいしいです。
味付けがとてもいい。イタリアンとして缶成しているし、ケッパーの野趣溢れる風味も利いている。赤いパプリカもうまみを添えて、その結果、海で溺れた時の味はきれいに消えている。
飲み込んだあとに特有の苦みが出てくるが、それも透明感があって、いやな苦みではない。ホヤにトライしたい御仁には、間違いなくオススメであります。
缶詰情報
カンナチュール/ホヤのアクアパッツァ 税込1,296円
カンナチュールの直販サイトなどで購入可