幼少期から熱血ドラマオタクというライターの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る“脇役=バイプレイヤー”にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第34回はタレントの高橋海人(King & Prince)さんについて。現在放送中の『ブラック校則』(日本テレビ系)に出演中です。この作品は映画、Huluと深夜ドラマだけに収まらない盛大な展開ぶり。ただ今回は連載の企画に沿って、テレビドラマで見た率直な感想を綴ります。何だろう、すんごいお宝を見つけてしまったようなこの胸の高鳴りは……。

どこか気の抜けた雰囲気作りがお見事です

※写真はイメージです

理不尽とも言える、厳しい校則の光津高校。その学校に通う、特に何に対しても情熱を見せることのない、小野田創楽(佐藤勝利・SexyZone)と月岡中弥(高橋)。今まで学校に対して反発や主張をしてこなかった創楽が納得のいかない校則を壊すことを決意する。そんな親友を手助けする中弥。少年たちの主張の行方の結末は?

というのが『ブラック校則』のあらすじ。これは深夜、おっさん&おばさんたちに自分たちの青春を懐古する意味で見て欲しい作品だ。実際、私も視聴をしながら高校生活の厳しかった校則に対して、不満を持ち続けていたことを思い出した。

ブランド制服でダブルスーツだったのに、髪型だけは以前のまま三つ編みにしろ。光津高校と同じくポニーテールも女子校なのに禁止。日本国憲法と同じく、だいぶ昔に作られたしきたり(校則)を自分が生きる時代に押しつけられて、不快な思いをした。昭和時代なら窓ガラスを割って反抗しちゃうところだけれど、タピオカを片手に令和を生きる創楽と中弥は違う。そもそも熱くならない性格の二人が反抗をするのだ。その様子が大人目線には新鮮で楽しい。

創楽は黒髪ルールに反抗して

「蜂って黒を狙って刺すって聞いたんで、怖くて」

と、ある朝突然、蜂防止のネットがついた麦わら帽子をかぶって登校。特に縛りのない昼食の時間に、急遽、クラスでまさかの流しそうめんを開催。奇を衒った創楽は燻製セットを持参して、さすがに教師に怒られる。そんな彼らのキュートでくだらない反発を見ていたら、これは現代版のヤンキードラマだと直感。学園モノの定番で不良どもが次々に問題を起こす、平成初期にかけて大流行した作品たちである。ちなみに私は『はいすくーる落書』(TBS系・1989年)が好きだった。

最近になって昔のようなヤンキーイズムは減ったけれど、10代の心の中にはいつだってフツフツとモヤモヤと、何かがくすぶっている。それが青春だ。その現代風の爆発が、この作品に描かれている。ゆるさとテンポの良さがちょうどよく相まっていて、おもしろい。ちょっと映画版にも興味が湧いてきた。

そして反発を続ける親友に協力して、嬉しそうに見守る中弥がいる。それを演じるのが今回気になった高橋海人さんだ。基本的にビビリな創楽に対するように、思いついたことをポンポンと提案して、周囲を驚かせて、そして動かす。

中弥がいつもだるそう、めんどくさそうに話す雰囲気を醸し出しているのが特徴的だった。でもこの高橋さんの演技にピンときた。

香取慎吾、松潤に続くアジア人役に推薦したい

高橋さんの演技を最初に観たのは昨年放送の『部活、好きじゃなきゃダメですか?』(日本テレビ系)。『ブラ校』と同じくシンドラ枠での放送だった。この枠は個人的に、朝ドラや大河のように、気合を入れて見るわけではない。深夜にイケメンで癒される時間帯だと思っている。特に『部ダメ』放送当時は、記念すべきキンプリのデビュー年。この世に舞い降りたばかりのキラキラした王子を観ようという下心を燃やして、視聴していた。

が、放送直後にその下心は吹っ飛ぶ。高橋さんはズル賢くて、サッカー部をサボることをしか考えていない。でもピッチに上がるとエースの位置。同級生をイジって、マンガ雑誌を破るのが趣味……というのが西野役だった。先述した今回の中弥と既視感のある、だるそうでめんどくさそうな感じがすごく自然に演じていた。

「この人、子役から頑張っていたのかな……」

とこちらを思わせるほど、新人アイドルらしからぬ演技が印象に残る。この手の演技が難しいというのは、いろいろなインタビューで聞いた。やりすぎても、加減してもわざとらしくなる、というのがその理由らしい。確かに学園モノで成功している例は、ドラマオタクの私でもそんなに見かけることはない。

記憶が確かなら、いつも制服のシャツのボタンを3つほど外して着崩していた西野。もし高校のクラスにこういう人がいたら、不動のモテポジションにいるんだろうな、という空気をビジュアルでもふんだんに漂わせていた。それは顔がかっこいい、ということではなくて全身から出す、ちょっと他の生徒とは外れた感じ……と言ったら、女性読者は共感してもらえるだろうか。

この人の演技が見てみたいと妄想が膨らむ。個人的に彼をキャスティングするとしたら、諸先輩方が歩まれてきたアジア人の役はどうだろう? 香取慎吾さん主演『ドク』(フジテレビ系・1996年)、松本潤さん主演の『スマイル』(TBS系・2009年)など、高橋さんエキゾチックな顔立ちをしているし、小麦肌なので似合うのではないかと私の単純予測。

あと上記に挙げた2作は、人種差別もストーリーに加わってきていて、辛いシーンもある。それは避けられるものではないし、逆にドラマを通して表現して伝えていくべき事項だ。人が良くて、でもどこかに悲哀を匂わせるのが、アジア人主人公の王道。そんな機微を高橋さんならどう表現するのか楽しみになってきた。2作学園モノでなんとなく雰囲気が似た配役だったところから、どんな風に逸脱するのだろうか? あ、こちら私の妄想段階です。

『ブラ校』が面白かったのか、気づけばいつもよりだいぶ文字数を超過してしまった。あんまり長いとブロッコリーさんに怒られてしまうので、この辺で止めておくことにしよう。

小林久乃

ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。地元タウン誌から始まり、女性誌、情報誌の編集部員を経てフリーランスへ。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事も持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には10万部を超えるベストセラーも。著書『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が2019年11月27日(水)発売。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。