ビジネスメールでは基本の型を身につけるのが最初のステップ。型が身についていれば応用が利き、自分なりに崩すこともできるようになるでしょう。基本の型を構成する「宛名」から「署名」までの7つの要素を、順を追って書く。こうすることで基本を押さえた違和感を与えないメールに仕上がります。
メールを書き始める前に目的を整理
いざメールを書き始める前に、必ずすべきことがあります。それは、メールを送る目的を整理すること。メールを送って実現したいこと、メールを受け取った相手に望む行動。そうした目的を明確にします。目的が曖昧なままに書き始めると「なぜメールを送ってきたのか分からない」「何が言いたいのか分からない」といったメールになってしまいます。それではメールを読んだ相手を困らせるだけ。でも、そのようなメールは珍しくありません。
送り手としては伝えたつもりでも、読み手には伝わっていないことがあります。誤解を招いたり、意図しない解釈をされたり、望む行動をとってもらえなかったり。そういうときは、目的が曖昧なメールを送っている可能性があります。
相手に望む行動を描く
目的を整理するときは、メールを送って自分がしたいことだけでなく、メールを読んだ相手に望む行動を書くところまでがセットです。
例えば、上司にメールで報告をするとしましょう。本日、取引先と打ち合わせを行った。その内容を上司にメールで報告する。この場合、メールを送る目的が「報告する」という部分で止まってしまうことがあります。その状態でメールを送ると上司から「もっと詳しく報告してください」「何を報告したいのか分からない」と戻されてしまう可能性があります。報告をしているのに何がだめなのか。
それは、報告を読んだ上司にとってもらいたい行動が描けていないことに原因があります。事実を報告しただけでは足りません。報告する内容を読んで、上司に指示を仰ぎたいのか、決断してほしいのか、さまざまな求める行動があります。そこまで書いてこそ報告という目的を成し遂げたメールに仕上がります。
目的は、報告がしたい、相談がしたい、お願いがしたいなど、いろいろとあります。そこまで整理できているのに何かが足りない、指摘を受けてしまう。そんなときは、そのメールを読んだ相手に求めることが明確になっているかを確認しましょう。
全てを伝えようとしない
メールを送ってしたいこと、メールを受け取った相手に望む行動といった目的が定まったら、情報を取捨選択します。メールで伝える内容を整理します。情報を選択する際、送り手が伝えたいことだけを書いたのでは足りません。読み手が知りたいことも伝えます。
そうすると、どうしても情報が多くなってしまいがちで、何から何まで伝えようとすると文章が長くなり、かえって論旨が分かりにくくなります。読み手の負担にもなります。一つのテーマに関連して伝えたいことが多いときは、一度に伝えようとせず、メールを分けて伝えるのも一つの方法です。
論点が明確になったら、メールの要点がつかみやすいよう、要旨(結論)を書いて詳細を述べるという文章構成が有効です。メールは熟読するものではありません。一目で読んで理解できるメールが求められます。メールの全体像を示して一目で用件が分かるように書きましょう。
読み手のことを思うのが自分のためにもなる
メールを書く上で重要なのは、自分都合ではなく読み手目線を持つこと。一文を短くすることで論旨がとらえやすくなります。句読点や文節で改行する、行間を空けることによって読みやすいレイアウトになります。
メールを書き始める前に目的を明確にして伝える情報を整理する。メールは要旨(結論)を書いたあとに詳細を書く。読みやすいレイアウトを心がける。そうした工夫は、読み手の理解を促すだけでなく、メール作成の時間短縮にもつながります。返事ももらいやすくなります。相手のことを思ってすることは、自分のためでもあるのです。
平野友朗
一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事、アイ・コミュニケーション代表取締役。1974年生まれ。筑波大学人間学類(認知心理学)卒業。広告代理店勤務を経て2003年に日本で唯一のメルマガコンサルタントとして独立。2004年、アイ・コミュニケーション設立。2013年、一般社団法人日本ビジネスメール協会設立。ビジネスメール教育の第一人者として知られ、メールマナーに関するメディア掲載1,000回以上、著書26冊。メールを活用した営業手法には定評があり、メールとウェブマーケティングを駆使して5,000社の顧客を開拓。メールスキル向上指導、組織のメールに関するルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などを手がける。官公庁や企業などへのコンサルティングや講演、研修回数は年間120回を超える。著書や監修本には『仕事を高速化する「時間割」の作り方』(プレジデント社)、『仕事が速い人はどんなメールを書いているのか』(文響社)、『カリスマ講師に学ぶ! 実践ビジネスメール教室』(日経BP社)、『誰も教えてくれなかった ビジネスメールの書き方・送り方』(あさ出版)、『イラッとされないビジネスメール 正解 不正解』(サンクチュアリ出版)、『短いフレーズで気持ちが伝わる モノの書き方サクッとノート』(永岡書店)などがある。
セミナー情報「ビジネスメールの教科書」、メールマガジン「平野友朗の思考・実践メルマガ【毎日0.1%の成長】」。
日本ビジネスメール協会
日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、これまでにメールに関する書籍を中心に27冊出版(内2冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,000回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信してきた。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行っており、本調査は、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。
ビジネスメールに関する研修(講師派遣)や講演(公開講座)を実施。2時間でビジネスメールを学ぶ、「ビジネスメールコミュニケーション講座」は東京を中心に毎月開催。研修の問い合わせも受け付け中。