顧客対応はスピードが求められます。問い合わせへの迅速な対応が、相手に好印象を与え、満足度の向上へとつながります。もしメールで問い合わせをしてから数日が経過しても、相手から何の音沙汰もなかったとしたらどうでしょう。「メールは読んでもらえただろうか」と不安になったり「後回しにされているのではないだろうか」と不信感を覚えたりするのではないでしょうか。
ホームページを見ての問い合わせなど、初めての相手ともなればなおさら。対応の遅れが印象の悪化をもたらします。もし相手が複数の企業に同様の問い合わせをしていたとしたら、1日、2日と時間が経過するのに反比例して、相手から選ばれる可能性が低下することでしょう。問い合わせへの初動対応に満足感が得られなければ、その先、具体的なやりとりに進展したとしても、円滑なコミュニケーションが期待できないと想像できるからです。
問い合わせには速やかに対応したほうが良い。誰しもが頭ではそう理解しています。にもかかわらず、実践できないのはなぜなのか。その背景には、多くの人が抱えるある思い込みが影響しているようです。
返信を遅らせてしまう思い込みとは
興味深い統計データがあります。2023年6月に一般社団法人日本ビジネスメール協会が発表した「ビジネスメール実態調査2023」の結果によると、返信が遅れてしまう理由の第一位は「すぐに結論が出せない」でした。問い合わせのメールに当てはめると、「すぐに回答が出せない」から返信が遅れてしまうということ。確かに、問い合わせの内容について、調べないと分からない、上司の決裁が必要など、すぐに回答できないケースがあることは容易に想像できます。一見、もっともな理由にも感じられますが、ここが落とし穴。どうしても問い合わせに対して回答がそろった時点で返信しようとする人が少なくありません。これこそが、返信を遅らせてしまう思い込みの正体です。
電話や対面で問い合わせをした時のことを思い出してみてください。すぐに回答を得られたこともあれば、そうではなかったこともあると思います。しかしながら、もしその場では回答が得られなかったとしても、相手がまったくの無言、無反応だったということはありませんよね。「確認してご連絡いたします」のように、何らかの反応を示してくれたはずです。メールの難点として、相手の反応が分からないということがあります。反応が得られないからこそ、不安や不信感を覚えるのです。回答がそろわないから返信ができないというのは思い込みに過ぎません。回答に時間がかかるのであれば、まずはメールを受領した旨を返信しましょう。
期限を設定することが相互メリットに
受領の連絡は迅速な対応への第一歩。その上、さらに満足度を向上させるために実践したいポイントがあります。それは、問い合わせに対していつまでに回答するのかを明記しておくことです。期限が書いてあることによって、受信者と送信者の双方にメリットをもたらします。
ビジネスでは、一つの案件に複数の人が携わることも珍しくありません。例えば、ある商品の販売価格について問い合わせがあったとします。その際、問い合わせのメールを送った本人が購買の意思決定をしているとは限りません。回答を受けて上司や他のスタッフと共有することもあるでしょう。あるいは、その回答をもとに自社のクライアントへ見積もりを提示することも考えられます。いつまでに回答が得られるのかが分かれば、相手は関係者に対しても先回りした連絡が可能となります。仮に購買の意思決定をする当事者だったとしても、いつ回答が得られるのかが分かれば安心ですし、先の予定も立てやすくなりますよね。
期限を決めることは、自分の行動を約束することにもつながります。さまざまな業務に追われる中、どうしても期限のない仕事は後回しになりがち。せっかく初動対応として受領の連絡をしても、その後の回答が遅れてしまえば、やはり相手からの評価は下がってしまうことに。期限があればこそ、自身の業務も計画的に進められるというものです。
「時間的速さ」ではなく「タイミングと期限」
問い合わせのメールでは、希望する回答期限を提示されることもあれば、されないケースも数多くあります。相手からは期限を提示されなかったとしても、いつまでに回答するのかを明記することのメリットは計り知れないものがあります。受領の連絡に書いた期限までに回答するということは、言うなれば、勝手に約束をしてそれを守っているだけのこと。それでも、相手の目には約束を守る人と映るはず。もし何度か問い合わせを受けたとしたならば、回を重ねるごとに信頼が増していくことでしょう。
顧客対応はスピードが求められます。冒頭に書いた言葉ですが、これは決して回答までに要した時間だけを指しているのではありません。大切なのは、相手が安心感を得られるかどうか。相手が不安にならないよう適切なタイミングで反応を示すこと。相手が先回りしやすいよう期限を設定し、その約束を守り続けること。こうした積み重ねが満足度の向上へつながっていくのです。