「いつも大変お世話になっております」

ビジネスにおける定番の挨拶文です。冒頭の挨拶として、ビジネスメールでもよく使われています。一見して丁寧な印象を受けることから、無意識のうちに使用したり、定型文として使用したりする人もいます。しかしながら、どんな時でも使える挨拶文ではありませんので注意が必要です。予期せず相手に違和感を与えてしまったり、思わぬ誤解を生んでしまったりする可能性があります。

「どこまで丁寧に書けばいいの?」「やり取りが続いた場合でも毎回書くべき?」ビジネスメールの挨拶は、多くの人が悩みや疑問を抱くポイントでもあります。メールは、相手とコミュニケーションを取るためのツールの一つ。冒頭に挨拶文を入れるのは、相手とのコミュニケーションを円滑に進めるためです。形にとらわれることなく、迷ったときはその本質に立ち返ってみましょう。

相手に違和感を与えるデメリット

まったく初めての相手から「いつも大変お世話になっております」と書かれたメールが届いたらどうでしょう。多くの人が違和感を覚えるのではないでしょうか。言葉にはせずとも、内心では「別にお世話になっていないけど……」という思いが湧き上がります。これが違和感の正体です。

この違和感は、時にさらなる印象の悪化を招くこともあります。例えば、ある企業のウェブサイトを見て、初めてフォームから問い合わせをしたとします。回答として届いたメールに「いつも大変お世話になっております」と書かれていると、それだけで「マニュアル的な対応だ」と感じられることもあります。親身な対応は期待できないと、不安や不満を引き起こす要因にすらなりかねません。

不意に届いた営業メールにも、こうした挨拶文を見かけることがあります。「いつも大変お世話になっております」と書かれていることによって、相手は「どこで知り合った人だっただろうか」と頭を巡らせるかもしれません。結果、初めての相手と分かれば、その紛らわしさに不快感や怒りすら覚えることも。一見、丁寧に見える無意識の挨拶文が、相手の悪感情を呼び起こす可能性もあるのです。

形にとらわれず自然体で

対面や電話では自然に挨拶ができるのに、ことメールの挨拶となると悩んでしまう人が多いようです。迷ったときは本質に立ち返る。メールの挨拶は「もし相手に会ったらなんと挨拶をするか」「電話をかけたとしたらどう切り出すか」で考えると、悩まずに済みます。

まったく初めての相手と対面したときに「いつも大変お世話になっております」と挨拶することはないですよね。「初めまして」、あるいは電話であれば「初めてご連絡いたしました」と切り出すのが自然です。メールも同様。初めてであることを相手に伝え、その上で相手との関係性や連絡をした経緯を伝えるとスムーズです。その他、ビジネスに適した挨拶としては「お世話になります」も押さえておきたいフレーズ。「(今後)お世話になります」のように未来を見据えた挨拶文として使えます。

取引先など、すでに会社として深い親交がある相手であれば、自身が初対面であっても「いつも大変お世話になっております」と挨拶することもありますよね。背景に「(会社が)お世話になっております」「(スタッフが)お世話になっております」という思いが込められているからです。このように対面や電話でのやり取りを想像すると、メールでのふさわしい挨拶もイメージできるはず。形にとらわれることなく、自然体で臨むのがポイントです。

適切な挨拶が円滑なコミュニケーションの第一歩

「毎回、挨拶を書くべきか」という疑問も氷解したのではないでしょうか。相手とのやり取りが複数回に及んだとき、対面や電話であればどうするか。突如、本題から入るケースは、きっとまれなはず。「いつも大変お世話になっております」と変わらず挨拶するケースもあれば、「先ほどは、打ち合わせのお時間をいただきありがとうございました」のように感謝を伝えるケースもあるでしょう。時には「度々のお電話で失礼いたします」と恐縮する場面も。メールでもそのような機会があれば「立て続けのメールで失礼いたします」の一言からコミュニケーションを始めるのが適切かもしれません。挨拶文を書くのか書かないのかではなく、円滑なコミュニケーションを意識すれば、おのずと答えは出るはずです。

メールの挨拶は定型文ではありません。相手や状況に応じて変化させることが、円滑なコミュニケーションへとつながります。手段が変化しても、本質は変わりません。メールは苦手と感じている方は、対面や電話でのやり取りをイメージすると、解決の糸口が見えるかもしれません。