仕事でメールを使っていて、イライラしたり、ムカッとしたりすることはありませんか?
忙しい中、読んだけれど「何が言いたいのかよく分からない」「このメールを読んで、私はどうしたらいいんだろう」と困ってしまうメール。「どうしてこんな書き方をするんだろう」「もっとほかに言いようがあるだろう」と気分を害してしまうメール。「こんなメールでは、気持ちよく仕事ができないよ」と思うようなことがあります。
一方で、「この書き方で失礼ではないかな」「これで大丈夫かな」と自分のメールに不安を抱く人も少なくありません。
送り手側としては仕事でメールを使っている以上、相手を嫌な気持ちにさせようと思って使っているわけではないけど、受け手にとっては不快なメールになってしまうことがあります。送り手はそんなつもりはない、だけど無自覚に受け手に迷惑をかけていたり、失礼なことをしていたり。そこがメールの難しいところでもあります。
半数近い人がビジネスメールでイラっとを経験
日本ビジネスメール協会が発表した「ビジネスメール実態調査2017」によると、過去一年間に仕事でメールを受け取り、不快に感じたことが「よくある」(4.09%)と「たまにある」(38.50%)の合計が42.59%で、4割を超える人が不快に感じたことがあると分かりました。実に半数近い人が仕事でメールを受け取り、何かしらイラっとしたことがあります。
「そうそう」「あるある」と思う方もいれば、「イラっとしたことなんて、特にないなぁ」という方もいるでしょう。不快感は個人差があります。同じメールでも、受け取り方は人それぞれ。メールに良い、悪いはありません。
人によって感じ方が違うことを理解して、もしかしたら送ったメールが相手をイラっとさせているかもしれないと自分のメールを振り返ることが、メールでの誤解を防ぎ、信頼関係を築くことにつながります。
イラっとされるメール10の特徴
不快に感じた内容の第1位は「質問に答えていない」(35.59%)です。こちらが質問したことに答えてもらえないと、発言を無視されたようで、こちらのことを軽視されたようで不快に感じることがあります。
質問への答えが書いてなければ「こちらへの回答がないようですが」と催促しなければなりません。それもストレスになります。「答えにくいのかな? 都合の悪いことは無視するのかな?」とマイナスな印象を抱くこともあるでしょう。
第2位以降は「文章が失礼」(31.96%)、「文章が攻撃的」(25.49%)、「文章が曖昧」(25.20%)、「必要な情報が足りない」(20.59%)、「メールが読みづらい」(19.22%)、「文章が冷たい」(17.06%)、「誤字や脱字」(16.96%)、「文章が長い」(16.86%)、「無駄な情報が多い」(16.18%)と続きます。
相手の立場に立って考える
「必要な情報が足りない」は「質問に答えていない」とも共通する点があります。メールの目的を考えると本来なら書いてあるべきことが書いてなければ、読み手は追加で質問したり、確認したりしなければならず、その分やりとりに時間がとられ、メールの通数も増えて負担になります。
「無駄な情報が多い」のも読み手の負担になります。読むのにも時間がかかるので、読まなくていいことにまで目を通すのは無駄な時間です。無駄な情報、不要な情報が多いと何を伝えたいのか要点をつかむのに時間がかかることも。
「文章が曖昧」だと要領を得ず、読み手は困惑します。正しく伝えたければ、伝えたい情報に集中し、不要な情報、無駄な情報は排除して書きます。
読み手にとっては「文章が失礼」であったり「文章が攻撃的」であったり感じるものも、書き手としては無自覚であることが大半です。コミュニケーションの姿勢が文章に表れます。優位に立ちたいという気持ちが文章に表れて、失礼な物言いになっていないか、気を付けた方がいいですね。場合によっては第三者に自分のメールを読んでもらい、印象を聞いてみるのもオススメです。
正しく伝え、気持ちよく動いてもらうために
「文章が冷たい」と受け取られるのも、簡潔に伝えたつもりが言葉足らずになっていたり、命令口調な印象を与えていたり。お願い一つとっても、相手が気持ちよく動いてくれるかは伝え方にもよります。
急な依頼も「今日の18時までに確認してください」と「お忙しいところ誠に恐縮ですが今日の18時までに確認していただけますでしょうか」とでは、依頼される側の受け取る印象も異なります。
ときにはクッション言葉を使って、やんわりと伝えた方が相手も受け入れやすく、簡潔に伝える以上に効果があることも。ただし、回りくどい文章やクッション言葉を多用すると、かえって分かりにくくなるので注意しましょう。
分かりにくいメールの特徴の一つに、「文章が長い」というのがあります。接続助詞で文章をつなげると長くなります。「~ですが、~なので、~でしたが」と延々と続く文章は「結局、何が言いたいの? 」と読み手のストレスを増すだけ。読み間違えてしまうリスクも高まります。メールは何度も読み直すものではありません。文章は短くまとめた方が、読みやすく、分かりやすくなります。
「メールが読みづらい」のは一文が長いことのほかに、メール全体でみると、改行がない、行間がない、箇条書きが使われていないといった傾向があります。裏を返せば、文章を短く、箇条書きを使って情報を整理し、適度に改行、行間を空けて空白を作るだけで読みやすいメールになります。
「誤字や脱字」があると、「メールを確認していないのかな」「雑だな」といった印象を持たれることもあるので、送信前には必ずチェックする癖を付けたいですね。
今回の結果から、何が読み手にとって不快になるかが分かりました。何が相手を不快にさせる可能性があるかを知っているだけでも、取るべき行動が絞られます。あれやこれやと気にすると、時間がかかるばかり。注意すべきポイントを絞り込めば、メールを効率よく活用できます。
不快の内容、上位10項目を目安に「そういうメールにならないように」と意識してメールを書く、使うだけでもメールは変わります。自分は気にしないとしても、相手がどう思うかなと想像し、配慮することがメールコミュニケーションを円滑にするポイントです。
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執筆者プロフィール : 平野友朗(ひらのともあき)
一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事、アイ・コミュニケーション代表取締役。1974年生まれ。筑波大学人間学類(認知心理学)卒業。広告代理店勤務を経て2003年に日本で唯一のメルマガコンサルタントとして独立。2004年、アイ・コミュニケーション設立。2013年、一般社団法人日本ビジネスメール協会設立。ビジネスメール教育の第一人者として知られ、メールマナーに関するメディア掲載1,000回以上、著書25冊。
メールを活用した営業手法には定評があり、メールとウェブマーケティングを駆使して5,000社の顧客を開拓。メールスキル向上指導、組織のメールに関するルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などを手がける。官公庁や企業などへのコンサルティングや講演、研修回数は年間100回を超える。セミナー情報「ビジネスメールの教科書」、メールマガジン「平野友朗の思考・実践メルマガ【毎日0.1%の成長】」。
日本ビジネスメール協会
日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、これまでにメールに関する書籍を26冊出版(内2冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,000回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信してきた。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行っており、本調査は、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。
ビジネスメールに関する研修(講師派遣)や講演(公開講座)を実施。2時間でビジネスメールを学ぶ、「ビジネスメールコミュニケーション講座(ベーシック編)」は東京を中心に毎月開催。研修の問い合わせも受け付け中。