悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、「書評執筆本数日本一」に認定された、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、「仕事のやりがい」を実感できない人へのビジネス書です。

■今回のお悩み
「"仕事のやりがい"を実感できない」(28歳男性/営業関連)


ビジネスパーソンである以上、多かれ少なかれ「仕事のやりがい」について悩むことはあるものです。

「一生懸命やっているのに達成感がない」とか、「同じことの繰り返しだから、やりがい以前の問題なんだよなー」などなど。

20代のころに苦悩した経験は僕にもあるので、そういった気持ちはとてもわかります。あのころは、「人間ひとりひとりに分け与えられた“可能性”というものを、自分はもう使い切ってしまったのかもしれない」とか、しょーもないことを考えたりしたっけなぁ。

あとから振り返ればそれは誰しもが通る道であり、「可能性を使い切った」なんてことはありえないんですけどね。

ただ、悩みのまっただなかにいるときは、そんなことにすら気づけないものでもあります。

ですから、「どうにかなるって!」と強く声をかけたくなるものの、それだけでは解決しないこともわかっています。自分が悩みまくっているのに「大丈夫だよ」なんていわれたら、「あんたになにがわかるんだ」と抵抗を感じられても当然ですからね。

しかし、そうはいっても、いまいるその場所からはなんとか抜け出さなければなりません。そこで今回も、それぞれが個性的な3冊のビジネス書に答えを委ねたいと思います。

「つまらない仕事」を見直す

自分の成長につながるとは思えない仕事が続いていれば、どこかのタイミングで「あー、つまらない」と感じてしまったとしても無理はありません。つまり、やりがいを実感できない理由が、"仕事のつまらなさ"に起因しているというケースもあるということです。

そんな状況を逆転させるためには、「自分から仕事を生み出す」ことが必要だと訴えるのは、『仕事ができる人の逆転ワザ42』(濱田秀彦 著、すばる舎リンケージ)の著者です。

  • 『仕事ができる人の逆転ワザ42』(濱田秀彦 著、すばる舎リンケージ)

たとえばルーティンワークが多くてつまらないのなら、まずは上司を筆頭とする周囲に「自分のありたいこと」を宣言するべきだというのです。

上司といえども、部下の気持ちを100%理解できているわけではないので、口に出してみるべきだという考え方。ただし「この仕事はやりたくない」というだけでは不平不満と捉えられてしまうため、「こういう仕事をやってみたい」と具体的に伝えるのがベストだといいます。

たしかにそれなら伝わりそう。でも、なかには「やりたい仕事」が思いつかないというケースもあるかもしれません。はたして、そういった場合はどうしたらいいのでしょうか?

そんな時には、自分で仕事を作ってみます。与えられた仕事を受け身でやっているだけでは、状況を変えることはできません。(18ページより)

とはいっても、自分の企画で新しい仕事を作るのは難しいもの。新規事業をスタートさせたいと思っても自分だけで実現できるものではありませんし、新商品を生み出すにしても、そのための部署などが必要になるのですから。

けれど、そこまで大きく考えなくても、いま目の前にある“つまらない仕事”を見なおしてみればいいのです。

つまらない仕事の代表は、単調な仕事。でも、単調ということは、効率化したり標準化できるということ。自分の仕事について上司に「もっと効率化して、誰でもできるようにマニュアル化してみたい」と言えば、上司は歓迎するでしょう。(18ページより)

たとえば、売上データの誤りを見つけて訂正する仕事を与えられていたとしましょう。単調な仕事ですから、慣れてくればつまらなく感じる可能性は大いにあります。

でも、その仕事のなかで感覚的にチェックポイントにしていることを関数に置き換え、怪しいデータには自動的に色がつくように試作してみたとしたら、その取り組みが上司の目に止まって評価につながるかもしれません。それは充分に考えられることです。

だいいち、もし試作が了承されなかったとしても、その提案はムダにはならないはず。なぜなら、提案したという行為自体が評価につながる可能性も否定できないからです。

単純作業を「つまらない」と思いながらこなし続けても、生まれるものはありません。しかし、よりよい提案に結びつける努力をすれば、それなりの変化が見込めるわけです。

自分で自分を「肯定する」

ところで「仕事のやりがいを実感できない」のなら、もしかしたらその根底には「仕事を通じて誰かにほめられたい」という思いがあるのかも。それが満たされないから、やりがいを実感できないという可能性も考えられるわけです。

しかし『あーーーーー!!!仕事も人間関係もいろいろめんどくさ!!!と思ったら読む 人生をシンプルにする本』(山田マキ 著、ダイヤモンド社)の著者は、「人にほめられることが人生の優先順位で1位」になってしまうと、なかなか厄介だと指摘しています。

  • 『あーーーーー!!!仕事も人間関係もいろいろめんどくさ!!!と思ったら読む 人生をシンプルにする本』(山田マキ 著、ダイヤモンド社)

期待が大きいというのは、相手から返ってくることを望んでいるということ。つまり、常に見返りを求めて行動するようになり、自分の心を満たしてくれる「何か」を探し続け、寄りかかり続けることになってしまうのです。 いっそのこと、最初から人に褒められなくてもいい、褒められる必要などまったくない! と考えるようにしてみてください。(143ページより)

人の考え方や価値観は、ライフステージや環境に応じて変化していくもの。子どものころに好きだったものをいまも好きだとは限りませんし、わずか数年前と現在を比較してみても変わっていることは多いはず。もちろん、他の人だってそれは同じです。

そして、そう考えた結果、人に頼って(人に満たしてもらって)生きることが、いかに不確定要素に満ちたものであるかがわかるのではないでしょうか?

そもそも、誰かに認められなくたって自分は常に存在しているのです。人に認められる必要など本当はありません。
誰かに満たしてもらうために人生を使うよりも、自分で自分を満たすようにするのが、よりシンプルな生き方に戻るための方法だと思います。(144ページより)

この、「よりシンプルな生き方に戻るために、自分で自分を満たすようにする」という部分が重要なのでしょう。だとすれば自分で自分を満たす方法を知りたいところですが、それは、ただただ自分のあり方を肯定することに尽きると著者は述べています。

自分を肯定し続ければ、やがてそれが充実感につながっていくということです。

「人から褒められる」ことを期待しない

『8カ国の超わがままエグゼクティブに学んだ 世界一打たれ強い働き方』(フラナガン 裕美子 著、実務教育出版)の著者もまた、ほめことばには期待すべきではないと主張しています。「自分をほめるのは自分自身」なのだと。

  • 『8カ国の超わがままエグゼクティブに学んだ 世界一打たれ強い働き方』(フラナガン 裕美子 著、実務教育出版)

そのことに関連して本書で引き合いに出されているのは、パワハラ受難のまっただなかにあった、社会人1年目の著者の体験談です。

体育界気質そのもののボスは、「下の者は黙って耐えろ理論」で著者を叱ったのだそうです。そして、延々と続くトップダウン式の説教を著者が退屈に感じ始めたころ、ボスがこういったというのです。

「まさか君は褒められないと仕事ができないんじゃないだろうな。仕事をして褒めてもらおうなんて甘い期待はするんじゃない。マネージャーは親じゃないんだぞ」(25ページより)

こう指摘されたとき、著者は「もしかして、どこかで『ほめてほしい』と思っていたのかもしれない」と気づいたのだとか。

たしかに、すべての人に認めてもらおうと考えることがナンセンスであり、ましてや仕事にやりがいがないことをそのせいにすることなどは言語道断であるわけです。

だからこそ、「ほめことば、認められることばは期待しない」ことが重要なのだということ。相手から認められることに期待するのではなく、精一杯仕事をして、自分で自分を評価することこそが必要なのです。

客観的に自分の仕事ぶりを分析し、よくやったと思えば正当な評価を自分に与えること。
自分で自分を褒めて、自分を認めてあげることで、自分自身にエネルギーを与えること。
これが正しい働き方なのです。(26ページより)

そういう働き方をしていれば、評価はあとからついてくるもの。そして、そうなったときには、自分でも気づかないうちに、仕事にやりがいを感じるようになっていたりするものなのかもしれません。

そういう意味では、焦りは禁物。コツコツ続けることに意味があるのです。