悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、「書評執筆本数日本一」に認定された、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、サウナに行ってみたい人へのビジネス書です。

■今回のお悩み
「今さらですがサウナに行ってみたいです。でもサウナーが怖いです。予習できる本があれば教えてください」(31歳男性/その他技術職)


「わかるー!」

今回のご相談を拝見したと同時に強く共感し、思わず膝を叩いてしまいました(いや、別に叩いてはいないけど)。僕も昔からサウナは好きでしたが、気持ちはまったく同じだからです。

サウナ自体は非常に心地よく、定期的に行きたくなってしまうほど魅力的です。しかし昨今のブームとか、その周辺にいらっしゃる「サウナー」のみなさん、また、そういった方々が嬉々として口にする「ととのう」というフレーズなどには、猛烈な違和感を覚えてしまうのです(あくまで個人の感想ですよ)。

もちろん、サウナーになろうがととのおうが、それは本人の自由です。とはいえ、極端なブームができてそれに翻弄されてしまうと、「いまさらながらサウナに行ってみたい」という方にとってのハードルがぐーんと上がってしまっても無理はありません。

ですから恐怖心から離れ、サウナに入る際にはあえて自分と向き合うべきではないでしょうか?

そもそもサウナを訪れる人は、みんな自分が心地よくなることしか考えていないはず。少なくとも僕は、「どんな人がいるか」なんてことを気にしたことがありませんし、目的は自分自身の中にあるのです。

したがって、あまり気にする必要もないと思うのです。「君、そのやり方はサウナ道に反するぞ」などとツッコミを入れてくる人だっていないはずですしね(いても相手にすべきではありません。いないけど)。

ただシンプルに"自分"に集中し、そこに心地よさを感じればいいのです。

基本的なマナーをチェック

とはいえ、もしも基本的なマナーのようなものがあるなら、それは知っておきたいかもしれませんね。そこで、まずは『医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?』(加藤容崇 著、ダイヤモンド社)のなかから、その問いに対する答えをご紹介したいと思います。

  • 『医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?』(加藤容崇 著、ダイヤモンド社)

著者もまた、「あれがダメ」「これがダメ」というような考え方は好きではないそうです。でも、知ることで楽しめるという人がいたとしても当然の話。そこで著者は本書において、自身が心がけているマナーを紹介しているのです。

□サウナ室に入る前に髪や体を洗う(身を清める)
□サウナ室に持ち込むタオルの水気をしぼる(サウナ室をビショビショにしない)
□サウナ室で汗を飛ばさない
□ロウリュをする場合は、「ロウリュをしてもいいですか?」と一声かける
□サウナ室の中で、大声でしゃべらない
□水風呂に入る前に汗を流す(なるべく水しぶきが飛ばないように、しゃがんで静かに)
□水風呂に入る前に汗を流す水は、水風呂のものを使わないでシャワーを使う
□水風呂内は、静かに移動する(周囲の人の羽衣をとらないように)
□ととのいイスは、使い終わったらかけ湯をする(清潔に保つ)
(194〜195ページより)

どれもサウナに関するマニアックな考え方ではなく、あくまで人として押さえておくべきエチケットでしかないことがわかります。

つまり社会人としてのマナーさえわきまえていれば、「こうしなければいけない」というようなものはないとも考えられるのではないでしょうか?

「サウナ室で汗を飛ばさない」というのは当然ですが、自分がされたとしても怒らないようにしています。たしかに、飛んでくるとイライラしますが、そこで怒りをぶちまけて心が乱れた場合、損をするのは自分です。「まぁいっか」と軽く流しましょう。(195ページより)

たしかに、心地よくなろうと思っている場面で起こってしまったのでは本末転倒というもの。大切なのは、他のサウナ利用者に対しても、施設に対しても謙虚でいること。それがマナーを守ることにつながり、自分自身の精神面にもよい影響を与えてくれるわけです。

サウナに入るベストな時間帯は?

『人生を変えるサウナ術 なぜ、一流の経営者はサウナに行くのか?』(本田直之、松尾大 著、KADOKAWA)のふたりの著者は、これまで20年以上にわたってサウナに入り続けてきたのだそうです。

  • 『人生を変えるサウナ術 なぜ、一流の経営者はサウナに行くのか?』(本田直之、松尾大 著、KADOKAWA)

当時はいまのように本格的なサウナ施設も少なく、「こうやって入るとよい」といった具体的な方法論もなかったのだとか。ただ自分たちの「気持ちいい」という感覚に身を任せ、手探りでサウナに入り続けてきたのだといいます。

いまやサウナイベントをプロデュースしたり、サウナ室のディレクションを手がけたりもしているそうですが、やはり重要なポイントは「ただ自分たちの『気持ちいい』という感覚に身を任せ、手探りでサウナに入り続けてきた」という部分なのではないかと思います。

ところで、サウナに入るのにベストな時間帯はあるのでしょうか? そんな疑問に対し、著者はこう答えています。

まずビジネスパーソンにおすすめで、実際にエグゼクティブ層で入っている人が多い時間帯は朝だ。通称「朝ウナ」である。(中略)
朝、サウナに入ってシャワーを浴びると、とにかくスッキリして、その後の仕事の集中力もぐんと上がる。アクセルを踏み込むようにスタートダッシュを切って、素晴らしい1日を始めることができる。(103ページより)

ただし、朝に何セットも繰り返してゆっくり入るのはおすすめしないそう。朝から何度も入ると身体が疲れてしまい、副交感神経が優位になり、眠くなってしまうから、というのがその理由です。

そして最もおすすめの時間帯は、夕方〜7時くらいの「夕食前サウナ」である。(中略)
1日の疲れも溜まってきて汗もかいている時間なので、ここらで一度身体をいたわってあげるのにもちょうどいい。
この時間帯のサウナは、朝とは逆に少しゆっくり、複数セットにわたって入ってあげると、副交感神経優位になり夜の安眠効果が高くなる。(中略)サウナに入って美味しいものを食べたら、あまり夜更かしせずにコテっと寝てしまうのがベストだ。(104ページより)

「サ飯」に何を食べるべき?

となると、サウナに入ったあとに食べるものについての知識も蓄えておきたいところ。そこで最後に、『自律神経の名医が教える! サウナのトリセツ』(小林弘幸 著、学研プラス)をご紹介しましょう。

  • 『自律神経の名医が教える! サウナのトリセツ』(小林弘幸 著、学研プラス)

ここには「サ飯」についての解説があるからです。

健康面に配慮すると、最初に食べる「サ飯(サウナ飯)」は、糖質や脂質が多く含まれるもの、また「GI値」が高いものは避けたほうがよいでしょう。GI値とは、「グリセミック・インデックス(Glycemic Index)」の略語で、「食後の血糖値の上昇度を示す指数」のことです。GI値が高い主な食べものは、炭水化物や甘い菓子、いもなどの根菜類、GI値が低い食べものは、肉や魚、乳製品などのたんぱく質、野菜などです。 血糖値の急激な上昇は、糖尿病リスクを高めるだけでなく、血管の内皮細胞を直接傷つけるデメリットもあるため、注意が必要です。(162ページより)

サウナに入ると代謝がよくなり、腸からの吸収力が向上することになります。そのため、最初に糖質や脂質が多いものやGI値が高いものを食べると、肥満になりやすく健康にもよくないわけです。

「血管の筋トレ」の効果を考えれば、血糖値の上昇を抑えて肥満を予防・改善するだけでなく、血液の流れをよくして、腸内環境を整える食生活をおくることが重要です。
その観点からいえば、サウナ後に最初に食べるべき「サ飯」には、食物繊維が豊富に含まれる野菜や海藻、きのこなどがおすすめです。(164ページより)

食事の最初に食物繊維を摂ると、「水溶性食物繊維」が腸のなかでゲル状になって腸壁をコーティングし、糖質や脂質の吸収を抑えてくれるというのです。

また、「不溶性食物繊維」は腸のなかで水分を吸って膨張し、満腹感を促してくれるそう。さらに余分な糖質や脂質を絡めとり、腸の蠕動運動を促進して体外に排出し、腸のなかをきれいに掃除してくれるのだといいます。

つまり、最初に野菜や海藻、きのこなどをたっぷり食べてから、たんぱく質や炭水化物を適量摂れば、腸内環境を整えることに役立つわけです。


サウナについては、実際に入ることだけに意識を集中させてしまいがちかもしれません。しかし入る時間や、そのあとに食べるべきものについても考えて臨めば、よりよい効果が表れるのではないでしょうか。

いずれにしても、心地よくなることだけを意識すべきだと思います。そうすれば、サウナのある生活はよりよいものになるはずだから。