悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、「書評執筆本数日本一」に認定された、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、外食の支出に悩む人へのビジネス書です。

■今回のお悩み
「稼いでもすぐに外食に使ってしまう」(40歳男性/営業関連)


外食しまくれるほど稼いでいるということは、それ自体が実力であるはず。お世辞抜きで、純粋にそう感じます。節約生活のなか、外食したくてもできないという方も少なくないのですから、それはそれで立派なことです。

ですから、まずはそう自覚してみましょう。"いまの自分"を肯定してみるべきだということ。

もし「稼げていないのに外食で散財してしまう」のだとしたら、それはたしかに問題です。でも、稼げているのですから、そこを出発点として考え始めてみればいいのです。

お金は稼いでいる→ここには裏づけとなる"自信"があるはずです

外食に使ってしまう→ここで明らかになるのは、「稼いでいるのに使ってしまう」という事実

だとすれば、「稼げている自分が、できるだけ外食も続けながら、しかしお金も貯められるようになるにはどうしたらいいのか」を考えればいいわけです。

具体的にどうすればいいのか、3冊の本を参考にしながら解決策を探ってみましょう。

お金に関する本のなかには「消費と浪費をギリギリまで削りましょう」というような話がよく出てきます。消費とは「使ってなくすこと」であり、浪費は「無駄遣い」を意味するわけですから、それらを削ろうという発想は決して不自然ではありません。

今回のご相談についても、消費と浪費を削ることが必要であるように思われます。

その支出が「消費」「浪費」「投資」のどれなのか考える

ところが、『デキない人のお金の使い方 デキる人のお金の使い方』(柴田博人、竹松祐紀 著、CCCメディアハウス)の著者の考え方はちょっと違うようです。

  • 『デキない人のお金の使い方 デキる人のお金の使い方』(柴田博人、竹松祐紀 著、CCCメディアハウス)

消費は、必要不可欠な支出だというのです。したがって、ゼロにするのは不可能。とはいえ、なるべく減らすほうがいいのも事実なので、「賢く消費する」べきだということ。

ただしそれは、1円でも安く買うためにスーパーをハシゴするというようなことではないのだとか。

まずは、自分にとっての「必要不可欠」をきちんと理解することです。そして、お金を使うすべてのシーンで、「本当に必要かどうか」を考える習慣を身につけること。それによって、自分の目的に見合った支出かどうかを見極められます。(74ページより)

「家賃は月収の3分の1が適切」だといわれますが、実際には人によって異なります。「広さが最優先」だとか「駅から5分以内でないとダメ」だったり、求める条件は人それぞれだからです。

たとえばこの法則に従うと、月収30万円の人が家賃に回せるのは月10万円までということになります。しかし、「家にいる時間を大切にしたいから、過ごしやすいこの物件のために12万円を支払ってもいい」という選択だってあるはず。究極的には、「自分にとって必要かどうか」が大きな意味を持つということです。

自分に必要なものを理解していて、そのお金が自分になにをもたらすか、それによって自分にどんなメリットがあるのかを考え、納得してからお金を使うのが「お金の使い方が上手な人」。だから、そういう人には無駄がないわけです。

そして、お金持ちとそうでない人のお金の使い方を理解するために、支出を3つの箱に分類すべきだと著者はいいます。

・消費……生きていく上で必要不可欠な支出
・浪費……ストレスを解消するための支出
・投資……資源を増やしていくための支出
(69ページより)

すべての支出は、この3つのどれかにあてはまるもの。そこで、自分の目の前にいつもこの3つの箱があると意識し、「どの箱にお金を入れるかによって未来が変わっていく」という観点から、「このお金をどの箱に入れる?」と常に考えるべきだということです。

たしかにそうすれば、自分にとっての外食の意味も明確になり、「ここまでは消費だけど、これ以上使うと浪費になってしまうな」というような境界線が見えてくることでしょう。

「メリハリのあるお金の使い方」を知る

経営コンサルタントである『使い方から貯め方、増やし方まで1時間でわかる お金の基本ゆる図鑑』(平野敦士カール 監修、宝島社)の監修者も、ムダな支出がないかチェックすることの意義を強調しています。

  • 『使い方から貯め方、増やし方まで1時間でわかる お金の基本ゆる図鑑』(平野敦士カール 監修、宝島社)

大人なら、メリハリのあるお金の使い方をするべきだと。

当然のことながら、お金の使い道は「生活していくために必要な支出」と「楽しみのための支出」に分けられます。今回のご相談における外食は、生活のためでもあり、楽しみのためでもありそうですが、いずれにしても「自分が必要だと思っている支出が、本当に必要なのか」、お金を使う前に確認してみるべき。

お金が入ったら入った分だけ使ってしまうのは、お金の管理ができない人。将来を見据えて、計画的にお金を使いましょう。(40ページより)

手取額から貯蓄をして、残りのお金で必要な支出と楽しみのための支出をまかなえる人は、お金の管理ができる人です。(41ページより)

なお、節約してお金を貯めるのであれば「楽しみの支出」を抑えるべきだと考えがちですが、それは正しくないそうです。なぜなら楽しみがなくなってしまうと、仕事や生活にも張り合いがなくなってしまうから。

つまり重要なのは「楽しみのための支出」で本当に楽しめたかどうか。たとえば外食をした結果、料理の味や雰囲気、時間の使い方など、さまざまなことを楽しめたのであれば、それは価値のある支出だったということになります。

でも、「お金を払った価値がない」と感じたのだとしたら、別の方法(使い方)を検討する必要があるわけです。

それこそが著者の主張する、大人ならではの「メリハリのあるお金の使い方」。

外食もそれ自体を全面的に否定するのではなく、"納得できる外食"と"納得できない外食"を見極め、後者を削除していく。それだけでも、無駄な浪費を減らすことができるのではないかと思います。

「収入と支出のバランス」を意識する

『できる人のお金の増やし方』(リチャード・テンプラー著、桜田直美 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)において著者が伝えようとしているのは、「より多くのお金を手に入れるためのルール」。

  • 『できる人のお金の増やし方』(リチャード・テンプラー著、桜田直美 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

お金の問題が絡んでいるとはいえ、今回のご相談とは趣旨が違うようにも思えますが、決してそうともいい切れないようです。なぜなら、やはり「収入と支出の関係」に焦点が当てられているから。

収入より支出を少なくすることは、絶対に間違いのないルールだというのです。重要なポイントは、収入がいくらだとしても、その範囲で楽しく暮らすことは可能だという事実。毎週シャンパンを飲むのが無理なら、月に一度にすればいいというわけで、これは今回のご相談にもあてはまりそうではあります。

このルールで大切なのは「情報」だそう。そこで、まずはいまの収入と支出の正確な額を把握することを著者はすすめています。

・今後決まっている支出は何か?
・不足の事態への備えは十分か?
・利子や配当などの形で入ってくるお金はあるか?
(99ページより)

収入が足りなくても、支出が多すぎても、修正することは簡単。それより大きな問題は、情報がないこと。すなわち現状を知らず、将来の見通しも持たないことが失敗の原因だというのです。だからこそ、自分の収入を正確に把握すべきだということです。

この一週間でいくら稼ぎ、この一時間でいくら稼ぐか、きちんと知っていなければならない。同じように支出もきちんと管理すること。
これは、いったい自分が生きるのにいくらかかるのか、それをきちんと把握することだ。浪費を知り、使っていない分野を知り、賢く使っている分野を知る。
出ていく額より入ってくる額のほうが多いかぎり、基本的には大丈夫だ。出ていく額のほうが多いのなら、状況を正すために速やかな行動が必要だ。
(99ページより)

興味深いのは、著者が他のページで「日常の小さな喜びをがまんする必要はない」と主張している点。なぜなら、たまの贅沢は成功へのエネルギーだから。つまり、外食を"小さな喜び""成功へのエネルギー"と解釈でき、それをプラスに活用できるのであれば、決して無駄ではないということです。

ただし繰り返しになりますが、「消費・浪費・投資の違い」「メリハリのあるお金の使い方」「収入と支出のバランス」を意識する習慣をつけることはお忘れなく。