名古屋を中心に活躍する、エンタテイメント男性集団「BOYS AND MEN」略して「ボイメン」。東海エリア出身、在住の男性たちで結成され、東海のローカル局すべてにレギュラーを持つだけでなく、タイ、インドネシア、シンガポール、ミャンマーで番組を持つなど、活躍は著しい。地方創生が叫ばれる今、地方発のエンタテイメントがここまで大きくなった理由について、フォーチュンエンターテイメント 代表 谷口誠治さんに話を伺った。
地元タレントに興味のない人たちをどう振り向かせるのか
――BOYS AND MEN(以下、ボイメン)は2012年頃から、活発になってきたのでしょうか。
2012年は、じわじわと話題にはなってきて、舞台『ホワイト★タイツ』の東京公演も、満員になってきたりしました。2012年の4月からは、CBCラジオで『BOYS AND MEN 栄第七学園男組』という生放送の番組も始まって、現在も続いています。ラジオをやることによって、イベントのMCなどもメンバー同士で話を回せるようになってきたというのはありますね。CDも、最初はプロモーションとしてリリースしてきましたが、ソロを含め、定期的にリリースするようになりました。
その後は、とにかくイベントに出演しまくりました。行政がやっているもの、テレビ局がやっているもの、無料のものでもなんでも。それで、名古屋の方にも認知されるようになってきたんです。名古屋の人って、東京や大阪のタレントには食いついても、地元のタレントにはあまり食いつかない。でもそんなことは気にならないくらい、テレビに出たおしたらどうだろうと思って、2014年に10本以上のレギュラー番組を作ろうと、動き回りました。その結果、2014年4月に、看板番組と、メンバーがレギュラー出演する番組13本がスタートしました。毎日メンバーの誰かが必ずテレビに出ていて、イベントでも見かける。そうやって、やっと名古屋の方にも認知されるようになっていったんです。
――最初はミュージカルの観客5人からスタートしたわけですが、2015年には、日本ガイシホールで『ボイメン騎士 THE FINAL 夢の1万人ライブで重大発表!「オレ、卒業します。」』を開催されました。1万人を集めるということで苦労はありましたか?
そうですね、簡単じゃありませんでした(笑)。その頃のボイメンの有料のイベントって、最高でも1,600人くらいのホールでやっていたんです。だから、1万人を集めるなんて、どうかしてるんじゃないかと言われていました。そこで、チケットの値段を3,900円に設定しました。ガイシホールでやるには、普通10,000円くらいの値段設定じゃないと赤字なのですが、赤字でもいいからとにかく1万人を集めようと……。4,000人くらいはチケットを買ってくれるんじゃないかなと読んでいたので、3,900円だったら、友達もつれてきてくれるんじゃないかと思ったんです。読みの通り、8,000枚までは売れました。
あとの2,000枚は、もうボイメンが手売りをして、なんとか1万人を集めました。実際、企業に営業をして買ってもらおうと思えば、買ってもらうこともできたかもしれません。でもそれで来られなくなる人がいて、空席ができたら意味がない。だから、招待も極力なしにして、本当に見に来てくれる人にこだわって売りました。
――最初のミュージカルでとにかく無料で見に来てもらうのとは逆の手法だったんですね。1万人を集めたあと、何か変化はありましたか?
一気に世界が変わりました。2カ月後にはすべてのイベントが即完で、チケットが取れないという声が聞こえるようにまでなりました。だいたい、会場を押さえるのは1年前だったりするので、1度1万人を集めたからと言って、急に普段の会場の規模を変えることはできなかったので、苦労しましたね。
――現在は、ボイメンはアジアでも活動にも力を入れられているそうですが。
2015年10月からは、タイのWorkpoint CREATIVE TVという局で毎週土曜の10時から『ボイメン☆MAGIC ~夜の魔法をキミに~』を放送しています。アジアに関しては、総務省に予算をもらい、東海テレビと組んで、『忍者ボイメンくん ~昇龍道で修行でござるよ~』という番組を、ジャカルタ(インドネシア)やミャンマー、シンガポール、マレーシアでオンエアしています。
アジアでは、日本のタレントがちゃんと根付いたことがないんですよね。もちろん、アジアツアーをやって人が集まるということはあるんですが、地元に根付いた日本のタレントはいないので、誰もやったことのないことを成し遂げたいという思いはあります。今後、タイでライブをする予定もあります。それまでに、英語詞で歌ったり、タイ語での挨拶ができるように準備しています。
――今までアジアでの認知には、例えば台湾のF4の『流星花園~花より男子~』のように、ドラマの影響も大きかったと思いますが、そのあたりはどう捉えていますか?
もちろんその重要性もあると思いますが、今はボイメンとともに、東海エリアをアジアに認知してもらおうということで、観光大使も兼ねてのアジアでの活動をしているところです。だから番組の中では、忍者の格好をしながら観光地をロケして、東海3県を知ってもらおうとしています。
ボイメンは、愛知県の「LOVEあいちサポーターズ あいちエンターテイメント大使」や、「なごやめし博覧会」のPRキャラクターなども務めていて、行政と一緒にやっています。もちろん、ドラマや映画をアジアに持っていきたいとは思いますが、今はまず東海のことを知ってもらいたいという思いで活動しています。
――谷口さんは、プロジェクトの進め方で、こだわっている部分はありますか?
やると決めたら、その目標までにやらないといけないことを、逆算しているだけなんですよ。だから例えば、1万人コンサートをやると決まったら、そのために今は何をしていないといけないのかを考えます。成功するか考えながらやるほうが難しいですからね。イメージできないものは形になりませんし、ゴールが見えないまま走ってもたどり着けないと思うので。そのために初期投資がかかるのは当たり前だと考えています。
――今後のボイメンの目標、展開はどうなりそうでしょうか。
2016年に、映画『復讐したい』『白鳥麗子でございます!』が公開される予定です。目標としては、名古屋から全国を目指すだけでなく、名古屋からアジアを目指したいですね。メーカーにしても、飲食店にしても、地方発なら、東京ではなく世界を見ている企業が成功していると思うので。例えば、カレーハウスCoCo壱番屋も本社は愛知ですが、アジア全域で成功しています。ボイメンの活動も、今すぐにアジアで成功できるということではないかもしれませんが、今はゴールのためのベースを作っているところです。
――ありがとうございました。
西森路代
ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トークラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。