良質な睡眠のためには、夜にゆっくりとお風呂に浸かるのがベスト。わかってはいても、飲み会や残業で帰りが遅くなってそのまま寝てしまう……なんてことも多いのが現実ではないでしょうか?

しかし、そんな方に朗報! 朝のお風呂にも、入り方次第で不調を改善する効果があるそうです。温泉療法専門医の早坂信哉先生に、朝風呂の効果や注意点を教わりました。

  • 朝風呂の効果とは?(写真:マイナビニュース)

    朝風呂の効果とは?

低血圧には温冷交代浴と朝シャワー

低血圧は病気ではないから……と深刻視していない方もいるかもしれませんが、めまいや立ちくらみ、目覚めの悪さなど、つらい症状はたくさん。朝は仕事がはかどらなくて困るといったことはないですか?

「低血圧の人にとっておすすめの入浴法は、温冷交代浴です。40℃程度のお湯に3分ほど浸かり、25℃前後の水を手足に10秒かける。これを5~6回繰り返すと、血管の拡張と収縮が連続することで自律神経の調整機能が高まります。また、寝起きがだるくて頭がシャキッとしない場合は、42℃程度の熱いシャワーをサッと浴びましょう。交感神経が刺激されて、身体が『活動モード』に切り替わります」(早坂氏)

朝の1分間でできる加齢臭対策

「加齢臭」というと男性のものと思われがちですが、実は女性も無関係ではありません! 年齢とともに汗などの影響で体臭が強くなると言われています。

「体臭は、皮膚や汗、古くなった角質を皮膚の常在菌が分解することで発生します。中でも加齢臭は、皮脂に含まれる『9-ヘキサデセン酸』という脂肪酸が分解されることで発生すると言われており、この脂肪酸は加齢にともなって分泌量が増えるとされています。この皮脂量を減らすには、朝に1分間シャワーを浴びることが効果的です。皮脂の分泌を抑えて、夕方まで臭いを軽減させてくれます」(早坂氏)

二日酔いのときはぬるめのお湯で15分

吐き気に頭痛に倦怠感……二日酔いに付き物のつらい症状。仕事のパフォーマンスも落ちますし、症状がひどい場合は会社に行くのもひと苦労ですよね。そんなときもお風呂が味方です!

「二日酔いによって引き起こされる不調の原因は、アルコールを分解する過程で発生する『アセトアルデヒド』という物質です。これを分解するには水分が必要なので、まずは水や薄めのスポーツドリンクでしっかり水分補給をしてください。お酒を飲んだ後は、アルコールによる利尿作用で身体が脱水症状になりやすくなっています。水分をしっかりとってから、38℃のぬるいお湯に15分ほど浸かりましょう。湯船の中で身体にかかる静水圧によって利尿作用が働き、二日酔いが早く治ると考えられています。ただし、飲酒直後の入浴は危険なので避けましょう。アルコールは血管を広げるので、脳貧血を起こしてしまう可能性があります」(早坂氏)

知っておきたい朝風呂の注意点

最後に、朝風呂ならではの注意点もご紹介しましょう。

前日の残り湯はNG!
夜にお風呂に入りそびれてしまった場合などに、家族が入ったお湯を朝に沸かしなおして入浴したという経験はないでしょうか?

「前日の残り湯は、きれいに見えても雑菌が繁殖している可能性があり、せっかくお風呂に入っても、雑菌が身体に付着してしまいます。もったいない気持ちはわかりますが、新しいお湯を入れましょう」(早坂氏)

熱いお風呂に要注意!
朝は、自律神経が副交感神経から交感神経に切り替わるタイミング。実は、血圧が上がりやすく、急激な寒暖差によって脳卒中や心筋梗塞などが引き起こされる「ヒートショック」のリスクが高い時間帯なのだそうです。

「熱いお湯には目を覚ます効果がありますが、脳卒中などの危険を避けるには、5分以内の入浴でサッと済ませることが大切。血圧が上がりやすい40代以降の方は特に気を付けましょう。また、入浴前の水分補給もしっかりと。冬場などは、脱衣所を温めて浴室との温度差を少なくしておくことも重要です」(早坂氏)

体温を上げすぎない!
お風呂好きの方は、朝から長湯をしたくなるという気持ちもあるかもしれませんが、お風呂を出た後に二度寝ができるような休日などのタイミング以外は我慢が必要とのアドバイスも。

「お風呂で血流を良くして身体を温めることは大切ですが、朝風呂で体温を上げすぎてしまうと、しばらくして体温が下がり、眠気が訪れてしまいます。そうすると、日中の活動性も低くなってしまうため、朝風呂の場合は体温が上がりすぎないよう短めに入浴するといいでしょう」(早坂氏)

お風呂は手軽に実践できるもっとも身近な健康法。正しい入り方を身につけて、日々の体調を整えましょう!

監修者

早坂信哉 (はやさか しんや)

東京都市大学人間科学部教授、医師、博士(医学)、温泉療法専門医。
お風呂を医学的に研究している第一人者。「世界一受けたい授業」「チコちゃんに叱られる!」など多数のメディアに出演。著書に『たった1℃が体を変える ほんとうに健康になる入浴法』(KADOKAWA)、『入浴検定公式テキスト』(日本入浴協会)、『最高の入浴法 ~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(大和書房)など。