これまで4回にわたり、ご紹介してきた「今読んでおくべき」資産形成シリーズも今回が最終回です。「ユニットリンク」タイプの生命保険を始めると決めたら、ご家族を経済的に守るためにいくらくらいの死亡保障を設定したらよいか決め、資産形成機能ではどの特別勘定を通じて投資を行うかを決めることになります。

それぞれの特別勘定は投資信託というファンドに投資をするのが一般的。では、どうやってそのファンドを選べばよいのでしょうか。

このファンド選びの考え方は、個人で買える投資信託の選び方と基本的には同じですが、ユニットリンクの場合、「長期投資」「積立投資」であることが前提になるため、しっかりした計画をたてて、一時的な変動に一喜一憂しないことが大切です。「長期投資」「積立投資」は一般的にリスクを軽減できる投資法と言われています。思い切ったリスクをとることも心がけたいところ。また、ユニットリンクのなかの投資信託は個人で直接買えるものではなく、プロ向けの特別なものであることが多く、個人向けよりも手数料などが安くなっていることもあります。

投資信託が苦手という方の多くは、「損したくない」と考える傾向が強いと言われていますが、ユニットリンクでは預金に近い商品、マネーファンド(金融市場型ファンド)を選んでしまうと現在の低金利下ではほとんど運用成果が期待できないため、資産形成の効果が大幅に低減してしまうと考えられます。

つまり「どんなリスクをとるのか」、前向きに言えば「どのような増える可能性に期待するか」ということを考えることが前提になります。以降ファンドを選ぶステップを紹介します。

ファンドの種類1:資産クラス

資産というのは、株式とか債券といったもの。株式は、短期的には様々な要素で変動しますが、長期的には、企業の業績によって上がったり下がったりすることが基本です。株式ファンドは、複数の企業の株式に投資しているので、たとえば日本の株式に投資するファンドに投資する場合、日本企業の成長性に期待する、ということになります。

債券は、発行体と呼ばれる債券発行者が事前に決まったクーポンを支払うことを約束した証券ですが、金利が変動すると価値が増えたり減ったりすることに注意が必要です。

金利が下がると、クーポンから得られる部分が目減りする一方で、元本部分が値上がりします。また金利が上がるとクーポン収入が増える一方、元本が目減りします。

一般的には金利が高い市場環境のときに投資を行うと、クーポン収入も高いですし、金利が下がっても元本部分が値上がりするので有利と言えるでしょう。逆に長く低金利の続く日本では、金利の高い海外債券にも選択肢を広げることを考えてもいいかもしれません。

また、株式と債券を組み合わせたファンド、バランス型ファンドというものもあります。長期的には、株式と債券は違う方向に動くと考えられており、組み合わせることによって安定的な運用ができると考えられています。

これらの資産クラスには、国内だけに投資する国内型、海外に投資する外国型、国内外に投資するグローバル型があります。

海外に投資する場合には為替の要素が入ってくるため、株式や債券の動きに加えて為替の動向によっても変動します。円高になれば価値が目減りし、円安になれば価値が増加します。そのため、海外に投資する方がリスクが高く(変動が大きく)なります。

下記は、資産クラス別のリスクとリターンの関係を示したものです。一般的には債券、バランス、株式の順にリスク、リターンが高くなります。

ファンドの種類2:運用タイプ

資産クラスは同じであっても、どのように運用するかによってさらにファンドの種類が変わります。たとえば株式に投資するファンドの場合、どのように投資する株式を選ぶかは、プロの運用者が日々判断するのですが、どのような特徴を持って運用するかはあらかじめ決められています。

たとえば国内の株式に投資する場合、市場の平均値(たとえば日経平均)に対してどう運用するか。平均並みに運用しようとするものをパッシブ型、上回るように運用しようとするものをアクティブ型と言います。

パッシブ型はアクティブ型に比べて、組入れている銘柄数が多くなっており、市場の平均に近くなるように運用されます。また、アクティブ運用は銘柄選別のために調査コストがかかるため、手数料が高くなることが一般的です。

どちらを選ぶかは投資する人の好みですが、いずれのタイプも国内の株式に投資していれば、日経平均が下落した場合、レベルは別としてファンド価格も下落していると考えるべきです。

ファンドの選び方

日本の投資信託では、6,000本程度が運用されていますが、そこから個人で選ぶとなると、かなりの知識と情報が必要になります。ユニットリンクでは、代表的な資産クラスに対して、保険会社が、運用力や費用などを考慮してファンドを選別しているため、一般の投資信託から選ぶよりも、かなり選びやすくなっています。

すでに選択肢がしぼりこまれたユニットリンクでは、何に注意してファンドを選んだらよいか説明します。大事なことは、一番大きく動く要素を決めることです。

運用のしかたの違いである、アクティブ運用かパッシブ運用かはリターンの違いとしては、資産クラスの違いに比べて変動幅が小さい。たとえば国内株アクティブ運用ファンドと国内株パッシブ運用ファンドのリターンの違いは、国内株アクティブ運用ファンドとグローバル株アクティブ運用ファンドのリターンの違いに比べて小さいため、国内株ファンドかグローバル株ファンドかを決めることがもっとも大事になります。

債券ファンドは株式ファンドに比べて変動が小さくなるため、安定していると言われていますが、現在のような低金利水準では期待できるリターンが小さくなってしまうため、「長期投資」を前提とするユニットリンクでは、株式ファンドという選択肢も検討してみてはいかがでしょうか?

その方法として、株式ファンドで国内外を合わせて投資したり、債券ファンドと株式ファンドを組み合わせたりする方法もあります。

最後に長期積立投資を続けていくと、投資額が大きくなります。そうなったら投資ファンドの実績やライフスタイルの変化によって、投資ファンドを入れ替えたり(スイッチング)、今後積み立てるファンドを変更したりすることを検討するとよいでしょう。

考えておきたい「積立投資」のメリット

ユニットリンクは毎月投資をする「積立投資」、つまり投資するタイミングを分散するという投資のしかたをとっています。そのため、実は一時払いよりもはるかにタイミングの影響を受けにくい投資手法なのです。 下記の図は変動の大きいといわれている外国株式に「積立投資」(ドルコスト平均法)をした場合の資産残高の変化を示したものです。

注目したいのは、スタート当初は投資額が小さいため、変動も小さく、投資額が積み上がっていくと新たに投資した金額よりもすでに投資している額のほうが大きくなるため、変動が大きくなることです。

20年間投資し続けるとしたら、最初の10年程度は投資額が小さいので、リターンが小さいとなかなか資産が積み上がっていかないということになります。低金利で銀行預金にコツコツ積立をしても、金利でほとんど稼げないために、貯金箱に毎月貯金していくのとほとんど変わりなくなってしまいます。

一般的には、大きなリスクをとることのできる前半は、株式を中心としたファンドを選択し、目標とする時期が近付くに従って徐々に安定資産を増やしていくことが、「積立投資」の賢い方法と言われています。

家族を守りながら資産形成するという考え方

ますます資産運用の必要性が叫ばれていますが、短期的にお金を増やすのは簡単ではありません。特に低金利下の日本では、さらにそれがむずかしい環境にあります。

本来資産運用とは、長期的に資産をふやしていく、いざというときに備えておくことが目的です。これがむずかしい点は、当初決めた計画を数年にわたって実行し続けていくことであり、一時的な資産の増減に一喜一憂しないでいることなのです。

ちょっと儲かってしまうとこれが減るのが怖くなってファンドを売却してしまったり、ファンドが損してしまうと継続して投資をするのをやめてしまったり、特に株式や為替の影響を受けるファンドに投資すると、理屈はわかっていても、なかなか長期に投資を続けることができないのが、資産運用のむずかしいところなのです。投資信託で長期投資が実践されにくいのも、こういった点が影響を与えています。

最終回では資産運用を中心にご紹介してきましたが、ユニットリンクは保険と資産運用を行うハイブリッド型の金融商品であり、早期解約では解約控除があったり、保険としてご家族を経済的に守るための死亡保障にまわる保険関係の費用が控除されたりするため、自身の資産形成にはまわらない部分が含まれていることも認識しておくことが重要です。

その上で、ユニットリンクは自身の資産形成にまわる特別勘定への積み立て分については、「長期投資」「積立投資」が自動的にできるため、資産運用に慎重な方でも、家族を守るという大きな目的を叶えながらそれをアンカーにして、長期に自身の資産形成を目指すことができる資産運用のひとつの選択肢と考えることもできるでしょう。

※写真と本文は関係ありません

執筆者プロフィール:アクサ『若者の資産形成を考える』プロジェクト


アクサは世界最大級の保険・資産運用グループ。日本ではアクサ生命等の生命保険事業、アクサダイレクトの自動車保険で知られる損害保険事業、資産運用事業、アシスタンスサービス事業を展開している。保険を活用した資産形成の分野ではユニット・リンク保険のパイオニア的存在。