会社に自分と合わない人がいるとストレスが溜まりますね。後輩Bさん(女性)に対して「ストレスが溜まってしょうがない……」というAさんより相談されました。

  • 会社に自分と合わない人がいてストレスを感じますか?

自分への自信を持てない後輩

Bさんは(Aさんから見ると)あまりに、自分に自信がなく、言い訳がましくて、コミュニケーションを取るたびにストレスを感じるそう。

「人って、どんなことでも褒められたら嬉しいし、モチベーションがUPするじゃないですか。だから、僕は極力、後輩たちを褒めるようにしているんです。

先日、ある仕事をお願いすると、うまく仕上げてくれたので、『うん、よくできている。さすがBさん』と褒めたんです。そうしたら、全力で否定するんですよ。『ただ、言われた指示に従ってやっただけで、自分なんて全然駄目なんで……』と」。

せっかく褒めたのに、それを素直に受け止めてくれないBさん。そんな彼女に対して、Aさんは以下のように評価します。

「よく言えば謙虚なのかもしれません。ただ、それを超えて、ともかくネガティブなんです。常に『自分なんて駄目な人間』といった言葉ばかり出てくる。だから、彼女がいると、職場の空気がネガティブに支配されるんです」。

自分の成功を認められないパターン

ここで考えてみましょう。

Aさんは、「人って、どんなことでも褒められたら嬉しい」と言っていますが、本当にそうでしょうか? 実は、誰でも「『どんなことでも』褒められたら嬉しい」わけではありません。

自分に自信がない人の場合、自分の成功を認められない場合があるのです。そういった人の反応パターンを2つ紹介しましょう。

「成功回避動機」パターン

このパターンを持つ人は、成功すると他人から疎まれると感じ、自分の出した成果から逃げようとします。また、失敗したときに自尊心が傷つくことを軽減するため、やる前から「言い訳」をする傾向も見受けられます。

「インポスター症候群」パターン

このパターンを持つ人は、うまくできたとしても、それは、単なる運やタイミングであり、自分自身は、褒められるに値しない人間である。そして、実際の自分よりも能力があると他人が勘違いして褒めてくれているだけ……という認識を持ちます。

いかがでしょうか? あなたの周囲にも、こういう反応をする人がいませんか?

Aさんに、この2つのパターンを紹介したところ、Bさんは、「成功回避動機」の反応パターンに当てはまるような気がするということでした。

自己肯定感の低い人への対処方法

そもそも、なぜ、こういったパターンを持つようになるのかというと、一言でいえば、自己肯定感の低さです。

幼少期からのコンプレックスや、失敗体験の積み重ね、親を含めた周囲からかけられた言葉の積み重ねなどから、こういった思考パターンが形成されてきたものですから、根は深いのが現実です。

だから、こういった傾向のある人に対して、「もっとポジティブに!」といったメッセージを出してもなかなか響きません。では、どういう対処をしたら良いのでしょうか。

まずは、人間関係ストレスの緩和は、「自分と他人は違うのだ」ということを自分の中で腹落ちさせることです。人間は、無意識のうちに相手と自分は同じであるという思い込みを持ちがちです。

自分と他人は違うという認識

今回でいえば、AさんとBさんの「褒められたときの反応の違い」に注目しましょう。

Aさん自身は「どんなことでも褒められたら嬉しい」という反応をする人です。だから、それを他者も同じだろうと期待し、その期待通りにならないからこそ、ストレスが発生しているわけです。

まずは「人それぞれ」だということを認識しましょう。ただし「褒める」ということそのものは、とても効果的であることは間違っていません。

では、Bさんのような反応パターンを持つ人には、どうしたら効果的かというと、「成果」ではなく「プロセス」、つまり、仕事ぶりや努力を褒めると効果的です。

今回のAさんの場合であれば、「よくできている」という成果ではなく、「短い時間で正確にやってくれた」といったプロセスを褒める方が効果的なのです。

相手を褒める場合は、相手に合わせて「どこを褒めるか?」にも留意してみてください。

執筆者プロフィール : 阿部淳一郎氏

ラーニングエンタテイメント 
代表取締役

若手の採用・育成・定着に強い人材開発コンサルタント。早稲田大学教育学部卒。筑波大学大学院(ストレスマネジメント領域)修了。保健学修士。社会人教育を行う東証一部上場企業等を経て2004年に起業。「メンタル不調者を減らし、若者の能力を引き出す」をコンセプトに人材開発業務に従事。大企業から中小・ベンチャー企業、学校、行政まで研修登壇実績は約1500本、コンサルティング実績30社。サンフランシスコ・シリコンバレーへも事業展開中。大学での就職活動領域における講師歴も長い。『これからの教え方の教科書(明日香出版社)』など著書3冊。『NHK』『日経新聞』『読売新聞』『日経アソシエ』『週刊SPA!』など取材実績も多数。