数ある投資の中でも、少額から始められ、郵便局や銀行でも買える、といった敷居の低さから、多くの人の注目を集める「投資信託」。老後の資産形成にも有益だと言われていますが、本当に投資信託でお金を増やすことはできるのでしょうか。

この連載では、金融商品の斡旋や販売をしない中立的なお金の学校ファイナンシャルアカデミーが、投資信託の「よくある落とし穴」の中身を分解しながら、着実に資産形成をするためのヒントをお伝えします。

連載最終回の今回は、確実に2,000万円を作るためには欠かせない「長期投資の2つの落とし穴」について学んでいきましょう。

  • 長期投資で損する人、2つのパターン※画像はイメージ

投資信託は「20年以上保有」がオススメ

これまでにもお伝えした通り、投資信託は、短期間で頻繁に売買することも多い株式投資と違って、一度買ったら長く持つ「長期投資」が鉄則です。

ですが「長期」とは一体どれくらいの期間を指すのでしょうか。1~2年くらいでしょうか? それとも5年くらいでしょうか? 結論から言うと、是非「20年以上」を目安に考えてもらいたいと思います。その理由はずばり「20年持てば元本割れしなくなる」という可能性が高いからなんです。

金融庁が発表した「つみたてNISA」に関する資料の中に、興味深いデータがあります。資産と地域を分散した投資信託を、5年間保有した場合と20年間保有した場合で、運用成績にどのような差が出るかを表したデータなのですが、5年間だと残念ながら元本割れするケースも見受けられる中、20年間保有すると、元本を割り込むケースが見事にゼロになっているのです。

投資にリスクはつきものですが、時間を味方につけることで、そのリスクを極限にまで抑えることができる、という良い例だと言えるでしょう。

ですが、このような事実がありながらも、実際には投資信託で大きな損失を出してしまう人も少なからずいます。その典型が「暴落相場時に怖くなって途中で手放してしまう」というパターン。実際に、2021年春のコロナショック時には、投資信託スクールの受講を検討している人から「今回、投資信託で大きな損を出してしまった。勉強して取り戻したい」といった相談もありました。

一方で、投資信託スクールの受講生は、コロナショックをとても前向きに捉えていました。なぜなら、長期でコツコツ買い続けている人にとって、暴落相場は、価格が下がって安く買える絶好のチャンスだったからです。

株式を短期で売買する場合、適切なタイミングで「損切り」をすることも非常に重要ですが、投資信託は「長期投資」、言い換えれば、売らずに持ち続けることが鉄則です。

もちろん長く保有する中で、コロナショックのような暴落相場を何度か経験することもあるでしょう。ですが、ドルコスト平均法でコツコツ積み立てをしている人であれば、そんな時ほどたくさん買えるチャンスですし、そういった相場を経験した人の方が結果的には資産を大きく増やすことができるのです。

暴落相場真っ只中だと、含み損の金額を見て不安に襲われるかもしれませんが、この不安な気持ちこそが落とし穴だと思って、決して下がったタイミングで売らずに長く持ち続けてください。

長期投資でも、ほったらかしはNG!

視点を少し変えましょう。「長期投資」の大切さはおわかりいただけたかと思いますが、では、毎月自動でコツコツ積み立てさえすれば、運用の状況と結果は、タイムカプセルのように20年後に見ればそれで良し、というものなのでしょうか? 答えはNO。長期投資の2つ目の落とし穴は「ほったらかしで良い」と勘違いしてしまうことです。

もちろん、身につけた知識を総動員して自分の価値観にあった商品を選べば、日々値動きを確認して一喜一憂する必要は全くありません。ですが、着実に理想とするゴールにたどりつくためには、1年に1回程度「リバランス」を行う必要があるのです。

実は投資の世界には、年○%増を目指す人なら、株式は○割、債券は○割、商品は○割持つと良い、といった資産配分の黄金ルールが存在します。こういった資産の組み合わせや比率のことを「ポートフォリオ」と呼びます。ポートフォリオの組み方は授業でも時間をかけて学ぶとても大切なポイントなのですが、この状況を1年に1回程度調整する必要がある、というわけです。これがリバランスです。

簡単な例で説明しましょう。Aさんは、株式に投資する投資信託を50%、債券に投資する投資信託を50%持つのが自分の目標を達成するのに最適だと考えたとしましょう。ですが1年経ってみると株式の時価が値上がりしたために、資産の割合が、株式60%、債券40%になっていたとします。

その場合、株式に投資する投資信託を一部売って、債券に投資する投資信託を買い増して、最初に決めた50%ずつの割合に戻す、ということをします。一見面倒に思えるこの一手間こそが、安定的に資産を育てるためには不可欠なのです。

いかがでしたでしょうか。全10回という限られた連載でしたが、あちこちに潜む落とし穴に気をつければ、投資信託は資産を増やせるとても有効な手段であることがおわかりいただけたかと思います。

もしあなたが今35歳で、貯蓄はゼロだけれど、60歳までに2,000万円を作りたいと考えるなら……。投資信託なら毎月3万円の積み立てでも、年6%で運用できれば2,000万円という大きなゴールを達成できます。でも、タンス預金なら900万円、イマイチな投資信託を選んでしまって年2%の運用なら1,160万円にしかなりません。

この大きな差を生み出すのは、運でも景気でもなく、正しい知識。さぁ、しっかり知識を身につけて、あなたの未来を変えていきましょう。

ファイナンシャルアカデミー

お金の教養を身につけるための「総合マネースクール」。2002年の創立以来、東京校・大阪校・ニューヨーク校・WEB受講を通じて19年間で延べ60万人が、貯蓄や家計管理といった生活に身近なお金から、資産運用、キャリア形成、人生と社会を豊かにするお金の使い方までを学んでいる。現在、全くの初心者でも投資の基礎知識をわかりやすく学べる「株式投資スクール体験セミナー」「投資信託スクール体験セミナー」などを無料提供している。