「社会人になったのであれば、保険に入るべきだ」と考えていませんか。とは言え、どのような保険に入ったらいいのかよくわからない、という方に病気やケガなどの医療に関する保険についてご案内します。
保険の大別と役割
保険は、大きく公的保険と民間の保険の2種類に分類されます。公的保険は、社会保障とも呼ばれ、最低限度の生活を保障しています。公的保険には、国によりすべての国民が加入することが義務付けられています。
一方、民間の保険は、契約時に定めた所定の状態になった時、保険金や給付金が受け取ることができます。民間の保険に加入するか否か、またどのような内容の契約にするかは、個人が自由に決めます。
公的保険~既に守られている部分
公的保険は国の制度であり、既に私たちは加入しています。公的保険のなかで、会社員が加入している医療部分の保険は、健康保険です。健康保険の保険料は、給与の額によって決まります。例えば、20万円の給与をもらっている人の保険料は毎月約2万円です。
ですが、給与明細から毎月天引きされているのは約1万円です。健康保険の保険料の半分は会社が負担することになっているからです。
さて、健康保険はどのような場合に何をしてくれるのでしょうか。
・健康保険
健康保険は、業務以外の事由で病気やケガをした時、治療費の窓口負担分の一部が軽減され、3割になる制度です(年齢により負担率が異なる)。治療費が3,000円だった場合、医療機関の窓口では3,000円の3割である900円を支払います。900円であれば問題なく支払えることがほとんどでしょうが、例えば手術などを行い、治療費が100万円であった場合はいかがでしょうか。
窓口では100万円の3割である30万円を支払わなければなりません。高額の治療費は、大きな負担になることが考えられます。そのため、高額療養費制度が用意されています。
・高額療養費制度
高額療養費制度は、1カ月の治療費の上限が決められており、その上限額を超えた差額が返ってくる制度です。例えば年収300万円の場合、1カ月の上限は5万7,600円になります。治療費が100万円かかり、窓口負担分が30万円であったとしても、負担するのは5万7,600円で済みます。
さらに過去12カ月以内で3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回該当」となり、上限額が下がります。年収770万円以下ならば、4回目から4万4,400円が上限額になります。
しかし、窓口では治療費の3割を立て替えなければなりません。上限負担額との差額が返金されるのは、高額療養費申請のおよそ3カ月後となります。高額だと立て替えられない場合も考えられます。そのような場合は、会社の健康保険組合または協会けんぽなど、保険証に記載されている組合から、事前に「限度額適用認定書」を発行してもらいましょう。
「限度額適用認定証」を医療機関の窓口で提示すれば、窓口での支払いは上限額までとなり、立て替える必要はなくなります。
・その他の給付
業務以外の事由で病気やケガをし、3日以上仕事を休んだ場合、4日目以降、健康保険から「傷病手当金」が給付されます。一方、業務上の事由で病気やケガをした場合は、会社が加入している労災保険により、治療費の全額が無料となり、4日以上仕事を休み給与を受けていない場合は、休業給付が支給されます。
民間の保険~自分で補う部分
民間の保険は、自分で選択して加入します。民間の保険のなかで、病気やケガに備える保険は、「医療保険」などです。それでは医療保険は、どのような場合に何をしてくれるのでしょうか。
・医療保険
医療保険は、病気やケガで入院した時には入院給付金、所定の手術を受けた時には、入院の有無にかかわらず手術給付金が受け取れる保険です。また、先進医療による療養を受けた時の保障や、成人病で入院した時の入院給付金の支払日数延長などを特約として付保し、販売されています。
医療保険には「掛捨型」と「貯蓄型」があります。同じ保障内容の場合、「掛捨型」の方が保険料は安く抑えられています。保険会社や保障内容にもよりますが、20代男性の掛捨型の保険料は毎月2,000円前後で設定されていたりもします。
どのような民間の保険に加入したらよいかを考える
病気になったりケガを負ったりしても、前述のとおり、健康保険による医療費の3割負担や高額療養費などで、私たちの負担はある程度軽減されます。しかし、個室を利用した時の差額ベッド代や、先進医療の技術代、入院中の食事代などは、健康保険の適用外で全額自己負担となります。そのような場合に備えて貯金をしましょう。
ただ、先進医療の技術料の中には数百万円かかるものもあります。貯金では不足し、先進医療の技術代が支払えずに療養を断念せざるを得ない場合も想定されます。そのような場合に備えて医療保険に加入しておくと、治療費を心配せずに療養に専念できます。
私たちは既に公的保険に加入しているので、民間の保険は、公的保険で足りない部分をカバーする目的で、加入を検討しましょう。転職や結婚、そして子の誕生などの転機には、公的保険で足りない部分も変化し、保険の加入や今まで加入していた保険の見直しを検討してみましょう。