年末調整が近付き、人事部や総務部などにさまざまな書類を出す時期になりました。生命保険や共済に加入していて生命保険料控除を適用するためには、「給与所得者の保険料控除申告書」と、保険会社などから届く「保険料(共済掛金)払込証明書」を提出する必要があります。

  • 出所:国税庁サイト

生命保険料控除の仕組み

平成24年以降に契約した生命保険や共済は、一般の生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3種類に分類されます。控除額は、3種類それぞれの年間保険料(掛金)を<生命保険料控除額の速算表>に当てはめて計算します。年間保険料が8万円以上である場合、控除額は一律4万円です。3種類をそれぞれ最大に適用した場合、合計12万円の生命保険料控除を受けられることになります。

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個人年金保険はどの控除の対象になるのか

ここで確認していただきたいのが個人年金保険。ネーミングに「年金」という言葉が入っているからといって、個人年金保険料控除の対象となるわけではありません。個人年金保険料控除の対象になる「年金」は次の(イ)~(ハ)の要件をすべて満たしたものです。

  • 出所:国税庁サイト

ですが、実はこの要件を満たしただけでは個人年金保険料控除の対象にはなりません。この要件を満たした上で、「税制適格特約」という特約を付加しないと個人年金保険料控除の対象にならないのです。

控除額の差はどのくらいか

税制適格特約が付いている場合と付いていない場合では、どのくらい保険料控除額が変わってくるのでしょうか。

例)加入している保険(すべて平成24年以降に契約したもの)
(1)終身保険(一般の生命保険料控除の対象):年間保険料8万円
(2)医療保険(介護医療保険料控除の対象):年間保険料8万円
(3)個人年金保険※税制適格特約付き(個人年金保険料控除の対象):年間保険料8万円

例の(1)~(3)の保険に加入していた場合、(1)~(3)の保険料それぞれを生命保険料控除額の速算表に当てはめて控除額を計算します。この例では、それぞれの控除額は4万円、合計で12万円控除することができます。

一方、仮に(3)の個人年金保険に税制適格特約が付いていなかった場合、(3)の保険料は個人年金保険料控除の対象ではなく、一般の生命保険料控除の対象になります。そうすると、一般の生命保険料控除の対象となる保険の年間保険料は(1)と(3)の合計16万円となり、控除額は4万円。(2)医療保険は先ほどと変わらず控除額は4万円のままです。

生命保険料控除額は、一般の生命保険料控除額4万円と介護医療保険料控除額4万円の合計で8万円になります。本来、12万円控除できるはずが、特約が付いていないことで8万円になってしまいます。これは、4万円に対する税金分だけ多く納税しているということ。

こんな事態になっていないか、保険会社などから届いた「保険料(共済掛金)払込証明書」を確認しましょう。「年金」という名前が付いている保険に加入しているのに「個人年金保険料控除の対象」などの欄にチェックが入っていない場合や、「一般の生命保険料控除」の欄にチェックが入っている場合は、「一般の生命保険料控除」の対象になっているということです。

そんな場合は、まず(イ)~(ハ)の要件を満たしているかを確認しましょう。満たしている場合には保険会社に連絡をして税制適格特約を付加してもらいましょう。特約保険料は無料です。

また、例えば受取期間が5年である確定年金に加入しているために、(ハ)の要件を満たしていないために一般の生命保険料控除の対象となっているような場合、受取期間を10年以上に変更することで税制適格特約を付加することができます。そうすると個人年金保険料控除の対象として節税に繋げられる可能性があります。保険会社に相談してくださいね。

国分さやか

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お金の教室 おさいふほんわか心もほんわか 代表
創価大学教育学部を卒業後、旧日本興業銀行の保険代理店や政府系金融機関に従事。"得をする方法を知りたい!"という一般生活者が多いものの、実は金融知識の不足から損をしている場面、しかも損をしていることにすら気付かない場面があまりに多い現実に問題意識を抱く。これを解消することを決意し、金融教育に携わる仕事を希望してFPの資格を取得。金融資産が増やすことだけでなく、幸福度数も増えることを大切にしている。現在、個人相談業務と並行して、金融の基礎知識を学ぶためのセミナーやFP資格講座、高校・大学、企業への出張講義などで活動中。


2013年
・第4回日本一のマネー講師決定戦E1グランプリにてグランプリ受賞
・第4回FP向上のための小論文コンクールにて奨励賞受賞
2014年
・三省堂より初めての出版(その後、学研出版等より計5冊の出版)
・日本FP協会電話相談員
・資格の学校TAC専任講師
2015年
・NHKラジオ「午後のまりやーじゅ」「ごごラジ!」お金のコーナー担当
2016年
・日本FP協会パーソナルファイナンスインストラクター

<保有資格>:CFP、FP技能士1級、相続アドバイザー2級、小学校教諭第一種、幼稚園教諭第一種