ヤマハ発動機は、「感動創造企業」を企業目的として掲げ、世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供することを目指している。そして、それを実現するために全社的に展開されているのが2024年にスタートした「Next Kando Actions(NKA)」と呼ばれる活動となっている。
この「Next Kando Actions」は、社員を起点としたブランディングを推進していくことを目的としたプロジェクト。ヤマハ発動機では、モーターサイクルをはじめ、ボートなどのマリン関連、電動アシスト自転車、さらにはロボティクスなど幅広い事業を展開しているが、グローバル化に伴い、各拠点ごとに、ある程度の裁量をもったコミュニケーション活動やブランディング活動が実施されている。
ヤマハ発動機が大切にしているのは、製品を通じて、社内外さまざまなステークホルダーに感動を届ける「感動創造」という考え方。その観点から、社員一人ひとりのブランド理解やブランド意識を高めていくとともに、社員のエンゲージメントや会社への誇りを醸成することによって、次なる感動を持続的に生み出していくことができるという考えのもと、「Next Kando Actions」は推進されている。
「Next Kando Actions」では、社員のブランド理解のために、体験型コンテンツの企画や社内外でのコミュニケーション活動を実施しており、これまではブランディングを担う部門が中心となって進めてきた。しかし、各部門がそれぞれ自律的に取り組むことで、より全社的に活動が広がるという考えから、2026年2月より、それぞれの部門に「Next Kando Actions」の担当者をアサインし、ブランド理解や社員エンゲージメントの向上を目指す新たな取り組みがスタートしている。
そこで今回は、各部門で「Next Kando Actions」担当として活動する、調達本部 戦略統括部調達人材戦略グループの横路氏と、企画・財務本部 企画財務人材戦略グループの阿部氏の2人に、それぞれの活動内容について伺った。
それぞれの部署で感じていた製品への「距離感」
まずは、それぞれが見た各本部の抱えている組織課題について話を聞いてみた。
今年1月に転職してきたばかりという横路氏は、「調達本部はお取引先との関係づくりに重点を置く業務性質上、また普段は、パーツ(部品)を取り扱うため、その先のエンドユーザーや完成品からは少し距離がある」と振り返る。そして、前職でも全社活動の社内展開に参画していたことから、「Next Kando Actions」を推進する立場として、今後、活動を広げていく上での課題も意識するようになった。
一方阿部氏は、財務・企画本部は「財務関連の業務が中心であり、エンジニアと比べると、どうしても自社が展開する製品やサービスから物理的に距離があるため、自分たちの事業の中身を知る、作っているものを知る、提供するサービスを知る、ことが大切である」とし、「製品体験」の機会を増やしていくことが課題に感じているという。
「Next Kando Actions」による課題解決
日本国内だけでも約400人の社員がいる調達本部。その規模ゆえに「日常業務で接点の少ない社員同士もいる」という意見をヒアリングした横路氏は、「Next Kando Actions」の活動を推進する“アンバサダー”を募集。アンバサダーを立てることによって、新たな横のつながりが生まれ、「部門や職場を越えて交流できる機会が増えている」と話す。
そして、アンバサダーからの提案を受け、「電動車椅子」の試乗体験を実施。普段は部品単位で業務にあたっている社員が、完成品である電動車椅子に実際に試乗し、どのような動きをするかを知ることによって、「自社の製品をより身近に感じられるようになった」と横路氏は笑顔を見せる。
一方、阿部氏が「会社を知る」活動の一環として作成したのが「NKA(Next Kando Actions)パスポート」。いわゆるスタンプ帳で、ヤマハ発動機が生産しているバイクやモーターボートに乗るといった製品体験のほか、サッカーチーム「ジュビロ磐田」の応援など、同社が関わる活動を知ることにつながる様々な体験を行うことでスタンプを押すことができる。「NKAパスポート」には様々な活動が記載されているが、記載されていない活動においても、NKAの主旨に沿っていれば、その活動に対してもスタンプが与えられるという。
「同僚でも上司でもよいので、誰かに、例えばバイクに乗った、フォーミュラEを観戦に行ったなどの体験を少しでも話してもらって、そしてスタンプを押してもらう」ことによって、スタンプを押すことが会話の糸口につながることを強調。「普段あまり話したことのない人に対し、NKAパスポートに書かれている体験が会話のきっかけになる」ことから、コミュニケーションツールとしての活用にも大きな期待をかける。
なお、スタンプをいくつ集めても景品などは用意されていないという。「景品などを用意してしまうと、自由であるはずの活動が強制になりかねない」と阿部氏。「自発的な意欲の発動を大事にしたい」という考えのもと、「まずはみんなでやってみよう。みんなで楽しんでみよう」というスタンスを大切にしているという。
「財務部は、どうしても製品と距離のあるところで仕事をしているので、NKAパスポートをきっかけに、いろいろな製品やサービスを知ってほしい」という阿部氏の思いは、「我々の製品やサービスを頭に描きながらステークホルダーを知ることは、自分たちのスキル向上にも役立つはず」と、さらに一歩踏み込んでいく阿部氏。様々な製品やサービスを体験し、感動することをきっかけとして、最終的には組織活性or業務の成果にも繋がることが、NKAパスポートの目標となっているという。
さらなる課題解決に向けた今後の展望
「Next Kando Actions」の担当者として活動を始めて約半年。「ポジティブに変化したと自信を持ってお伝えするのは時期尚早」という横路氏だが、「Next Kando Actions」関連のイベントなどを開催する中で、同じ本部でも、業務上なかなか接することのない人たちが話すきっかけになっていることに加え、「Next Kando Actions」の認知度が徐々に向上していることにも、一定の手応えを感じているという。
一方、阿部氏の手掛ける「NKAパスポート」がスタートしたのは今年7月。約2カ月が経過した時点では、「企画・財務本部にNKA活動を楽しんでもらえるようになるには、まだまだこれからというのが正直なところ」と打ち明けるが、「朝、出社したら、誰かの机の上にNKAパスポートが置かれていたり、スタンプを押している姿を見かけたりすると、楽しんでくれている社員も現れている」ことから、「私が言ったから、誰かが言ったからではなく、自発的に楽しみ始めている方がいるのは、非常にポジティブな変化」と評価。その一方で、パスポートの配布だけで盛り上がるかといえば「明確にノー」であり、いかに関連したイベントを仕掛けていくかが今後の課題になるという。
「こういった活動は、いわゆる“2:6:2の法則”ではありませんが、毎回参加してくださる方と、興味はあるけど参加は未定の方、そしてまったく参加されない方に分かれる」という横路氏。全員参加を理想としつつも、現実的には、中間の6割にリーチして、参加意欲を生み出していくことが今後の課題であり、「そのためにも、どのように盛り上げていくか、どのように巻き込んでいくかを考えていく必要がある」とした。
同様にイベント展開は検討しているものの、「あくまでも自発的な参加」を期待する阿部氏。「NKAパスポート」は構想段階から、「社員の自発的な意欲」を大事にしてきたという。その意味でも、重視すべきは「遊ぶ心」であり「楽しむ心」。今後のイベント展開についても、「まずは自分が楽しむことを前提」であり、「社員の自主性を尊重したい」と断言した。「Next Kando Actions」というキーワードのもと、ヤマハ発動機を知り、楽しむことが重要であり、いかに多くの人が自発的に参加したくなる環境を作っていくかが、今後の課題であり、目標になると話した。






