
「公務員は福利厚生が手厚い」とよく言われます。一方で、民間企業の会社員が加入する労災保険や雇用保険について、公務員は原則として適用除外です。
では、仕事中にケガをしたり、退職して仕事を探したりするとき、保障はどうなるのでしょうか。また、医療については共済組合、年金については会社員と同じ厚生年金に加入していますが、会社員とは異なる部分もあります。今回は、公務員の「保障」などの福利厚生について、会社員との違いを見ていきましょう。
◆労災保険はない?代わりに「公務災害補償」がある
民間企業の労働者は、仕事中や通勤中のケガや病気などについて、労働者災害補償保険(労災保険)による補償を受けます。
一方、常勤の国家公務員・地方公務員などは、原則として労災保険の適用対象外です。ただし、非常勤職員や会計年度任用職員などは、任用形態や勤務先、業務内容によって、労災保険や公務災害補償など、適用される制度が異なります。
その代わり、常勤の国家公務員には「国家公務員災害補償法」、常勤の地方公務員には「地方公務員災害補償法」に基づく公務災害補償の制度があります。
国家公務員の公務災害補償には、療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、遺族補償などがあります。地方公務員についても、公務や通勤による災害を対象とした補償制度が設けられています。
つまり、「労災保険がない=仕事中の事故が無保障」ではありません。制度の名称や手続きは異なりますが、仕事や通勤中の災害に備えた補償制度が用意されています。
◆雇用保険も原則なし。ただし、職員によって取り扱いが異なる
常勤の公務員などは、原則として雇用保険の適用対象外です。ただし、非常勤職員や会計年度任用職員などは、任用形態や退職手当制度の適用状況によって、雇用保険に加入する場合があります。自分が加入しているかどうかは、給与明細や勤務先の人事担当部署で確認しましょう。
国家公務員には「失業者の退職手当」という制度があり、一定の要件を満たす場合に支給されます。例えば、原則として勤続12カ月以上で退職し、退職後1年以内に失業していること、退職手当の額が雇用保険の失業等給付相当額に満たないことなどが条件です。
地方公務員にも同様の仕組みがあります。例えば、地方公務員についても、退職手当が雇用保険の失業給付相当額に満たず、一定の要件を満たしている場合には「失業者の退職手当」が支給されます。そのため、「雇用保険がないから、退職したら失業給付もない」というわけではありません。
なお、失業者の退職手当は、退職した公務員全員に支給されるものではありません。通常の退職手当が雇用保険の失業等給付相当額に満たない場合に、その差額に相当する額が一定の要件のもとで支給される制度です。
ここでいう「失業」とは、働く意思と能力があり、求職活動をしているにもかかわらず就職できない状態を指します。国家公務員の場合は、ハローワークでの求職申し込みや失業認定などの手続きも必要です。
◆医療は共済組合、年金は厚生年金
病気やケガなど、仕事以外の医療については、公務員は共済組合の「短期給付」を利用します。地方職員共済組合は、短期給付について「民間における健康保険制度に相当するもの」と説明しています。医療費の給付だけでなく、出産や休業、災害などに関する給付もあります。
さらに、共済組合によっては、法定給付に加えて独自の「附加給付」があります。例えば、医療費の自己負担が一定額を超えた場合に、その一部を払い戻す「一部負担金払戻金」などです。具体的な給付内容や条件は共済組合によって異なります。
一方、年金については、2015年の被用者年金制度の一元化により、公務員も会社員と同じ厚生年金に加入しています。以前の共済年金は厚生年金に統一されました。
ただし、公務員には厚生年金とは別に、「年金払い退職給付」という上乗せの仕組みがあります。これは2015年の年金制度一元化に伴って、以前の公務員独自の「職域年金相当部分」が廃止された際に、新たに設けられたものです。退職年金は、終身で受け取る部分と、一定期間受け取る有期の部分に分かれています。
基本となる公的年金は会社員と同じ厚生年金で、そのうえに公務員には年金払い退職給付という仕組みがあるのです。
◆「公務員は福利厚生が手厚い」の中身を知る
公務員には、民間企業の会社員とは異なる保障制度があります。
「公務員は保険がないから保障がない」と考えるのも、「公務員だから全ての保障が手厚い」と考えるのも正確ではありません。公務員には公務員の制度があり、会社員には会社員の制度があります。
それぞれの制度の中身や違いを知っておけば、どの部分に保障があり、どの部分を自分で備える必要があるのかも見えてきます。福利厚生のイメージだけで判断せず、具体的な制度を確認しておくことが大切です。
文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)
会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。3匹の保護猫と暮らす。All About おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド。
文=舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)