電通の社内横断チームで子どもの好奇心を育てる温かみのあるAIの使い方を考える「AIうえおラボ」と東京・立川の屋内キッズパーク「PLAY!PARK」は9月9日、初のコラボレーション企画でとして、AIと遊びを組み合わせた体験型イベント「みらいのたまご」を開始した。開催期間は9月23日までとなっている。

今回は、オープン初日に「みらいのたまご」を体験してきたので、その様子を紹介する。

また「みらいのたまご」の企画者である、電通 CXCC エクスペリエンスニュートラルデザイン1部プランナーの飯田羊氏、エイアンドビーホールディングス PLAY!PARK企画担当の原美咲氏に、企画の概要を聞いた。

  • 左から電通の飯田氏、PLAY!PARKの原氏

    左から電通の飯田氏、PLAY!PARKの原氏

30種類の生き物から生成、約300万通りの「聞いたことのない鳴き声」

PLAY!PARKは、2020年に誕生した約1000平方メートルの屋内広場で、「未知との出会い」をコンセプトに、子ども自身が遊び方を見つける体験を提供している施設。大型遊具だけでなく、絵の具や楽器、日替わりのワークショップなどを展開しており、既製の遊具に頼らない遊びを継続的に開発している。

そこで開催される「みらいのたまご」は、子どもたちが会場内に設置された大きなたまごにカラフルな布やひも、コップなどさまざまな素材を貼り付け、その装飾を天井付近に設置されたカメラがリアルタイムで読み取り、その特徴に応じてAIが、たまごの中にいる「みらいの生き物」の声として生成するという体験だ。

  • PLAY!PARK内に設置された「みらいのたまご」

    PLAY!PARK内に設置された「みらいのたまご」

さらに生成された鳴き声を聞いた後は、子どもたちがたまごの中にいると思う「みらいの生き物」を絵に描く。完成した作品はPLAY!PARK内に展示され、同じたまごを体験しても、それぞれ異なる生き物や世界観が生まれる構成になっている。

用意されている声は、オオカミ・クマ・鳥・クジラ・ヘビ・セミなど、子どもが身近に感じられる約30種類の実在する生き物の鳴き声をベースに作成されたもの。それぞれの生き物の声の特徴を抽出し、子どもがたまごにつけた「もふもふ」「とげとげ」「ころころ」「にょろにょろ」「ひらひら」という5つの素材の特徴に合わせて再構成する仕組みだ。

  • 5つのオノマトペで分けられた素材が用意されている

    5つのオノマトペで分けられた素材が用意されている

動物そのままの鳴き声を再生するのではなく、元の音から特徴となる骨格を抽出し、そこに「コロコロ」や「ニョロニョロ」といった特徴を加える。元の生き物のDNAを残しながら、子どもの装飾によって架空の生き物へ「進化」させるような考え方だ。

「組み合わせによって生成される音のバリエーションは約300万通りに及びます。開発時に特に時間をかけたのが音の調整で、どのような組み合わせになっても子どもたちが怖がらず、生き物の気配を感じながら『どんな生き物だろう?』と想像できる音にすることにこだわりました」(飯田氏)

  • 「みらいのたまご」で聞こえる声について説明する飯田氏

    「みらいのたまご」で聞こえる声について説明する飯田氏

この声の生成には、音楽の専門家も加わっており、システムとして成立するだけでなく、「誰も聞いたことがないが、子どもに受け入れられる生き物の鳴き声」を目指して調整を重ねたという。

また「具体的な動物を連想させすぎない声であること」にもこだわっている。例えば「ニャー」という声を聞けば、多くの子どもが「猫」を思い浮かべてしまう。子どもの自由な発想を妨げないために、あえて何の生き物か特定できない抽象的な音へ変換することで、同じ音を聞いても一人ひとりが異なる生き物を想像できるような声となっている。

スクリーンを置かないAI体験 「デジタルを意識させない」遊びへ

原氏によると、発想のきっかけは、以前からPLAY!PARKに設置されていた「大きなたまご」だったという。

「子どもたちから『このたまごの中には何がいるの?』と聞かれることが多く、逆に『何がいると思う?』と問い掛けると、『ユニコーン』『財宝』『たくさんのヒヨコ』など、大人の想定を超えるさまざまな答えが返ってきていました。そこで、たまごから振動や音が返ってくれば、さらに想像を広げられるのではないかと考えました」(原氏)

  • 「みらいのたまご」の発想のきっかけを語る原氏

    「みらいのたまご」の発想のきっかけを語る原氏

こうした発想から、「みらいのたまご」では「子どもの自由な発想」を重視しており、AIを使った企画でありながら、子どもが操作するスクリーンやディスプレイを設置していない。

企画段階では、体験を分かりやすくするために画面を設置する案も検討されていたが、最終的には、子どもに「AIを使っている」と意識させるのではなく、通常の遊びの中に技術が自然に溶け込んでいる状態を目指し、スクリーンを使わない構成が選択された。

「たまごは割ってみるまで何が入っているか分からないものであり、『みらいのたまご』においても正解はありません。『子どもの数だけ正解がある』という考えのもと、日常生活でも『こんなものがいるかもしれない』『こういうことが起こるかもしれない』と、自分の考えを広げるきっかけにつなげられたらと期待しています」(原氏)

子どもたちは、布などの素材を触ってたまごを飾り、耳を近づけて音を聞き、そこから生き物を想像してクレヨンで描く。表面上はアナログな遊びであり、その裏側でAIが機能しているのが今回の企画のポイントだ。

  • 「みらいのたまご」で自由に遊ぶ子どもたちが多く見られた

    「みらいのたまご」で自由に遊ぶ子どもたちが多く見られた

アナログとデジタルの共存で「子どもの成長を後押し」

PLAY!PARKにとって、今回のようなAIをはじめとするデジタル技術を本格的に取り入れた遊びは新しい試みで大きな挑戦だったという。

原氏は「アナログな体験を大切にしてきた基本姿勢を維持しながらも、新たな技術も組み合わることで、子どもの成長や発想を後押しする企画に挑戦したい」と今後の意気込みを教えてくれた。

一方の飯田氏も「幼い子どもにはできるだけ手触りのあるアナログな体験をさせたい」とした上で、以下のように今後の展望を語った。

「これからの子どもたちはAIやデジタル技術と切り離せない時代を生きていきます。それなら、親御さんが安心して『遊んでいいよ』と言えるAIやテクノロジーの使い方を、PLAY!PARKさんとともに考えていきたいです」(飯田氏)