まだ厳しい暑さが続くなか、インフルエンザが異例の早さで流行シーズンに入りました。
インフルエンザに限らず、子どもが発熱し、ぐったりしていると、「熱のせいかな」「寝かせておけば大丈夫かな」と判断に迷うこともあるでしょう。しかし、小児救急では熱の高さだけでなく、「反応」や「普段との違い」が重視されます。一見眠っているように見えても、受診が必要な状態が隠れていることも。小児救急医はどのように「危険なぐったり」を見極めているのでしょうか。
なぜ「ぐったり」の判断は難しいのか
発熱した子どもを見て、「寝かせておけば大丈夫かな」と迷う保護者は少なくありません。しかし、小児救急でいう「ぐったり」は、単に眠っている状態とは異なります。
発熱すると元気がなくなるのは自然なこと
発熱すると体力を消耗するため、子どももだるそうに横になることが多くなります。倦怠感や頭痛を伴うこともあり、普段のように遊ばなくなったり、食欲が落ちたりすることも珍しくありません。
こうした変化は発熱時によく見られるもので、それだけで重い病気とは限りません。
「寝ている」と「ぐったり」は似て見える
発熱すると眠る時間が長くなることもよくあります。しかし、眠っていても呼びかければ反応し、水分も飲めるのであれば、多くは心配ありません。
一方、小児救急でいう「ぐったり」は、起こしても反応が鈍い、水分が飲めない、起きている時間も元気がないなど、全身状態が悪くなっている状態を指します。保護者にとって区別は難しいものですが、この違いはとても重要です。
小児救急医が見る“危険なぐったり"の特徴
小児救急医はどこを見て「危険なぐったり」と判断しているのでしょうか。
呼びかけへの反応が弱い
最も重要なのは反応です。
呼びかけても目を開けない、抱き上げても力が入らずぐったりしている、目を開けても目線が合わない、反応が普段より明らかに鈍いときは注意が必要です。意識状態が悪くなっている可能性があります。
水分がとれない
水分を飲ませてもすぐ吐いてしまう、飲もうとしない、ほとんど水分を受け付けない場合は、脱水が進んでいる可能性があります。
水分がとれない状態は、小児救急でも重症度を判断する大切なポイントです。
起きている時間も元気がない
熱があって眠る時間が長くても、起きている間に笑ったり遊んだり、水分が飲めたりしていれば、まずは様子を見ることができます。
一方で、起きていても顔色が悪い、ぼんやりしている、目に力がない、ほとんど動こうとしないといった場合は、「ぐったり」と判断されることがあります。
「熱の高さ」だけで判断してはいけない
子どもが発熱すると、保護者は熱の高さを気にしがちです。しかし、小児救急では体温だけでなく、全身状態を総合的に見て重症度を判断します。
高熱でも元気な子はいる
発熱は体が病原体と闘っている反応です。一般的な発熱だけで脳に障害が起こることはありません。
39℃台でも元気があり、水分が飲めて遊ぶことができる子もいます。このような場合は、慌てて救急受診する必要はないことが多いでしょう。
熱がそれほど高くなくても重症なことがある
反対に、熱がそれほど高くなくても、ぐったりしている場合は注意が必要です。
脱水や低血糖などで全身状態が悪くなっている可能性があります。また、腸重積など、発熱がなくても緊急治療が必要な病気もあります。
受診を急ぐかどうかは、熱の高さではなく、「反応」「顔色」「呼吸」「水分がとれているか」を総合的に見て判断します。
こんなときは受診を考えたい
発熱してぐったり見えるときの受診の目安を紹介します。
当日中の受診を検討するケース
次のような場合は、診療時間内に受診しましょう。
・熱はあるが呼びかけにはしっかり反応する
・目線が合い、水分も飲めている
・高熱が3日以上続いている
高熱で元気がなくても、反応がしっかりしている場合は診療時間内の受診でよいことが多いでしょう。
0歳児では、ミルクを飲まない、何となく元気がないなど、普段との違いがあれば早めの受診をおすすめします。
救急受診を考えるケース
次のような症状が一つでもあれば、速やかに医療機関を受診しましょう。状況によっては救急車を要請してください。
・意識がはっきりしない
・呼びかけへの反応が鈍い
・呼吸がおかしい
・顔色が悪い、唇が紫色になっている
・水分がとれず、半日以上尿が出ていない
・けいれんしている
また、体温が41.5℃を超えた場合は体に悪影響を及ぼす可能性があるため、速やかに受診してください。
判断に迷う場合は、#8000(こども医療電話相談)や#7119(救急安心センター事業)なども活用しましょう。
「寝ているだけ」と「危険なぐったり」の違いを知っておこう
医療でいう「ぐったり」とは、全身状態が悪化している状態を指します。「呼びかけへの反応が鈍い」「水分が飲めない」「起きている時間も元気がない」といった様子があれば、熱の高さに関係なく早めの受診が必要です。
家庭では「寝ているだけ」と「危険なぐったり」を区別することは簡単ではありません。しかし、「いつもと違う」という変化に気づけるのは保護者だけです。
迷ったときは一人で様子を見続けるのではなく、医療機関や相談窓口を利用しましょう。また、様子を見る場合でも、子どもは短時間で状態が変化することがあるため、こまめに様子を確認することが大切です。
子どものぐったり感について、小児科の専門医に聞いてみました。
「ぐったり」という言葉に明確な定義はありませんが、例えば呼吸が苦しそうであったり手足が冷たく皮膚色が悪い状態を同時に認めているならば、それは「危険なぐったり」の可能性があります。
もちろん、高熱で眠っているだけでも呼吸の回数が増えることがありますが、呼びかけても反応がない、水分を摂らない、大好きなおもちゃに興味を示さないなど、「いつもならこうするのに出来ない」といった普段と異なる様子を認めた場合は、慎重に観察していただく必要があります。また、発熱が無いにも関わらず「ぐったり」している場合は、より注意が必要だと思います。
お子様を見て感じられた違和感は、お子様が示す何らかのメッセージである可能性が十分にあります。保護者が抱く「何かがおかしい」という感覚は、重症な小児患者を救う第一歩として非常に有用であると考えています。お子様の一番近くに居てくださる保護者の方々が心配や不安を感じられた時は、病院受診をご検討されることをお勧めします。

