信号で止まるとき、足を着くのは右足か、左足か?

どちらでもいいと思うだろうが、おすすめは左足。理由は右足を着いて滑って転ぶと、身体が車道側へ投げ出される可能性が高いからだ。もちろん右足を着いても違反ではないが、どちらかを選ぶなら左足というわけだ。

このように「自転車に正しく乗れている?」と聞かれたら、多くの人が不安になるだろう。2026年4月から自転車にも交通反則通告制度(いわゆる「青切符」)が適用され、取り締まりが強化された。とはいえ、安全に対する意識を高め、ルールを守って乗っていれば、過度に心配する必要はない。

では、どんなことに注意して乗ればいいのか、街を安全に走るコツを紹介しよう。

  • ヨーロッパ風の建物の前で自転車に乗っている外国人男性。左足を着いて止まっている。

    左足で着地するのが基本

絶対に事故を起こさない。

そう心掛けるのが初歩にして、最終的な目的でもある。

「そんなこと、今さら言われなくても…」と思うだろうが、安全に自転車に乗るというのは、それなりの知識が必要だ。

キッズMTBライダーの育成を長く手掛けてきた東京・瑞穂町のナカザワジムのオーナー、中沢清さんは「クルマとぶつかったら絶対に勝てないし、命を落とすことだってある。だから、自分の命は自分で守りなさい」と子供たちに教えているという。

以下は、大人の初心者にも伝えている基本の「き」である。

  • 東京・瑞穂町のナカザワジムのオーナー、中沢清さん

    ナカザワジムのオーナー・中沢清さん

街はゲームと一緒

物陰から人が出てきたり、見えないところに障害物があったりするかもしれない。ゲームならぶつかってもライフが減るだけだが、現実では大ケガにつながる可能性もある。

また、クルマ(ドライバー)は自転車に気づいていないかもしれない。止まってくれるとは限らないという前提で走ることも大切だ。

危険回避のために歩道を利用するという選択肢も

自転車は車道を走るのが原則だ。しかし、交通状況などから危険を感じ、やむを得ないと判断されるなら歩道を利用する選択肢もある。

歩道を走るときは車道側を徐行する。徐行とは、すぐに止まれる速度のことだ。人通りが多いときは、自転車を降りて押して歩こう。

ただし、必ずしも歩道が安全とは限らない。

ロードバイクなら時速30㎞ぐらいで走ることは難しくないし、電動アシスト自転車だってアシストの効く時速24㎞までは比較的容易に出すことができる。

仮に自転車が時速24㎞、歩行者が時速4㎞で歩道を移動しているとしよう。同じ方向に歩いている人との速度差は時速20㎞ほど。対向してくる人であれば、時速30㎞近い速度差になる。

これは100mを約12秒で走るランナーと同程度のスピードだ。しかも、自転車そのものの重さも加わるので、ぶつかったら大きな衝撃になる。

徐行が求められるのは、こうした速度差による危険があるからだ。

歩行者は後ろを確認せずに進路変更することもある。スマホやイヤホンに注意を奪われている人も少なくない。

さらに街路樹が植わっていたり、自転車やオートバイが駐車していたりすることもある。ほかにも、店先の看板や店から突然出てくる人など、自転車での走行を妨げる要素はたくさん存在する。

路上駐車のクルマを抜くときは……

前方に停車しているクルマがあるときは、バックミラーに注目し、中にドライバーがいるかチェックしよう。

頭が動いているようなら、ドアを開けようとしている可能性がある。急にドアが開いて衝突すれば、大きなケガにつながりかねない。

後方の状況が許すなら、クルマの横を通るときは約1mの間隔をあけたい。タクシーが停車しているときも同様に、突然ドアが開く可能性を意識しておこう。もし、ドアが開いたら大きな声をかけて、存在を知らせることも有効である。

予測性と視認性を高める

ドライバーにとってサイクリストが怖い理由は、視認性が低く、動きが予想しにくいことだ。特に夜に黒い服を着ていると、後続車からは非常に見えにくい。

道路交通法では後方への視認性を確保するため、リフレクター(反射材)の取付けが義務づけられているが、正直それだけでは十分といえない。

より安全に走るためには、発光式のリヤライトを使うと視認性が向上する。できれば複数のライトを使い、ドライバーの注意を引くことが望ましい。また、100円ショップなどに売っている反射タスキやテープを使うのも効果的だ。

  • サドルレールにつけられた発光式のリヤライト。赤く点灯している。

    昼夜問わず安全性向上に効果的なリヤライト

フロントライトは明るい製品を選ぶと、路面がよく見えるようになり、対向車や交差点のクルマからも認識されやすくなる。言い換えれば、夜道の自転車は思っている以上にクルマから見えていないのだ。

そして、周囲が予測しやすい走り方をすることも忘れてはいけない。右左折するときには、ハンドサインを行う。法令上も求められている行為だが、まずは安全確保が優先だ。片手運転によって危険が生じる状況では、無理をしない判断も必要になる。そのうえで、後続車に向けてハンドサインを行うことで防げる危険もある。

なお、停車するときは早めにペダリングするのをやめ、左足を伸ばしておくと、周囲に「あの自転車は止まろうとしている」と伝わりやすくなる。

  • サイクリスト数人が車道を並走している様子。先頭を走る男性がハンドサインを出している。

    進路変更や右左折の際は、ハンドサインを行うことで周囲も動きを予測しやすくなる

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ルート選びも大切

高速道路や陸橋など、自転車が走行できない道路もある。一方で、自転車は一方通行規制の対象外となっている道路もあり、狭い道も通れるので、目的地までの最短ルートを選びやすい。

しかし、安全に速く移動したいのであれば、多少遠回りになっても信号やクルマの少ないルートを選ぶ方がいいこともある。

サイクリングロードは、まさにその「急がば回れ」の代表的な例だ。クルマも人も少ないルートを走るのが気持ちいいことは、田舎道でのサイクリングを想像してもらうと分かりやすい。同じことは都会でもいえる。お互いの存在が認識しやすければ、怖い思いをすることも減り、事故のリスクも下げられる。

もし、少し時間がかかったとしても、気分よく走れるなら積極的な遠回りも悪くない。しかも、信号が少ないルートなら、走行時間が安定するというメリットもある。

  • 道路の自転車レーンを表すイメージ画像。道路に自転車マークが表示されている。

    サイクリングロードは「急がば回れ」を体現する代表的なルート

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加害者にならないために

状況によって異なるものの、歩行者にぶつかれば、自転車側が加害者となるケースは少なくない。警察庁の統計では、2025年の歩行者との事故件数は3,269件で、統計のある2006年以降で最多となった。そのうち歩行者が死亡または重傷となった事故は356件に上る。

中沢さんが「小さな違反を知るよりも、事故を起こさないことが最優先」と教えるのは、被害者になっても加害者になっても、誰も幸せにならないからだ。事故がどうして起きるのかを考え、それに備えてヘルメットやグローブを着用する重要性も忘れてはいけない。

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