
当初はペブルビーチ・コンクール・デレガンスや、ラグナ・セカ・スピードウェイでのレース、そして各スポーツカーブランドによるオーナーズミーティングといった小規模な集まりから始まったモントレー・カー・ウィークだが、現在では世界最大の自動車イベントへと成長し2026年も、かつてない規模と熱狂をもって閉幕した。
【画像】一生に一度は訪れたい!エンスージアスト垂涎のモントレー・カー・ウィーク(写真20点)
当初は週末の3日間程度であったこのイベントも、今や1週間どころか、10日間から14日間にも及ぶ長大なスケジュールに、世界中から自動車愛好家たちが集う一大スペクタクルへと変貌を遂げている。イベントの中心は、単なるクラシックカーの展示にとどまらない。
コンクール・デレガンス、クラシックカーレース、オーナーズクラブのミーティングに加え、近年ではオークションが非常に大きな存在感を放っている。特に近年はクラシックカーのみならず、限定生産の最新ハイパーカーなども取引の主役となり、参加層も大きく広がった。この1週間で、世界中で行われる自動車オークションの年間取引額の半分以上が動くと言えば、その凄まじさが伝わるだろうか。2025年には総額4億3000万ドルを超え、今年はコロナ禍明けのバブルをさらに上回る、過去最高の取引額を記録した。
さらに、自動車本体だけでなく、オートモビリアと呼ばれる模型や関連書籍、アート作品に至るまで、自動車にまつわるあらゆる文化がこの街を埋め尽くす。その経済規模は、他に類を見ない圧倒的なスケールを誇り、もはや言葉で表現することは難しい。これほどまでに自動車愛とマネーが交錯する場所は、世界中のどこを探しても存在しないのだ。
モントレー・カー・ウィークは、マニアのための場から、より幅広く、そして深く自動車文化を楽しむスケールの大きな集まりへと進化を続けている。近年では、純粋な愛好家だけでなく、家族連れでバケーションの一環として訪れる層も急増し、各ラグジュアリーブランドも顧客の囲い込みに必死だ。フェラーリ、ランボルギーニ、ブガッティ、メルセデスAMGといったトップブランドは、巨大なパビリオンを設営し、VIP顧客をもてなす。
これはもはや、世界最大のモーターショーが屋外で開催されていると言っても過言ではない。世界中から集まるメディアや愛好家に向けて、新作発表の場としても活用されている。例えば、ランボルギーニはミウラ生誕60周年を記念したオマージュモデル レヴエルトSVを発表し、ブガッティもデストリエを披露。トヨタでさえGR GTを初公開し、休眠状態だったスパイカーが復活モデルを発表するなど、話題には事欠かない。
こうした状況の中、ザ・クエイル・ア・モータースポーツ・ギャザリングの人気は沸騰の一途をたどっている。チケットの入手は極めて困難だが、一歩足を踏み入れれば、そこは別世界。会場内のレストランやカフェでの飲食はすべて無料、ブランドが提供するホスピタリティを存分に味わえる。新車発表の瞬間に立ち会い、世界のエグゼクティブたちと肩を並べる。チケットは数千ドルと高価で入手困難を極めるが、一歩足を踏み入れればそれ以上の価値がある別世界だ
もちろん、イベント全体を楽しむためには、事前の綿密な計画が不可欠だ。北米モントレーはロサンゼルスとサンフランシスコの間に位置し、日本からのアクセスも悪くない。サンフランシスコやサンノゼへの直行便を利用し、そこからレンタカーで向かうのが一般的だ。しかし、世界中から人が殺到するため、航空券やホテルの価格は高騰する。来年の開催日程はすでに発表されているため、参加を検討している読者は、一刻も早く、少なくともホテルだけでも押さえておくことを強くお勧めする。
モントレー・カー・ウィークの真髄を味わうなら、木曜日の早朝に行われる ツアー・デレガンス は見逃せない。日曜日に行われる最高峰のイベント ペブルビーチ・コンクール・デレガンス の出走車両が、モントレー半島からカーメル湾沿いにかけてパレードランを行うのだ。100マイルほど(約160km)のコースを、歴史的な名車たちが自走する姿は圧巻の一言。無料で観覧できることもあり、早朝から沿道には多くのファンが詰めかける。
そして、モントレー市街地ではRMサザビーズやグッディング、ブロードアローといった主要なオークションハウスによるプレビューが開催される。入場料さえ払えば、何日でも、何時間でも、世界最高峰のコレクターズカーを間近で観察できる。これもまた、モントレーならではの贅沢な時間だ。
金曜日は、前述した ザ・クエイル・ア・モータースポーツ・ギャザリング の日だ。チケットを入手できた幸運な読者は、世界最高の自動車ガーデンパーティーを堪能してほしい。さらに、週末にかけては、ラグナ・セカ・スピードウェイで ロレックス・モントレー・モータースポーツ・リユニオン が開催される。今年、この由緒あるサーキットで大きな注目を集めたのは、日本のモータースポーツへの賛辞 というテーマだ。1991年のル・マン優勝車マツダ787Bと、2018年のトヨタTS050ハイブリッドが並んで展示され、日本の技術力が世界でどう評価されてきたかを示す、日本人として非常に誇らしい瞬間であった。
土曜日には コンコルソ・イタリアーノ が開催された。今年は運営体制が一新され、より洗練されたイベントへと生まれ変わった。
そして日曜日、すべての頂点に立つ ペブルビーチ・コンクール・デレガンス がフィナーレを飾る。真のエンスージアストの朝は早い。まだ薄暗い夜明け前、ダウンパトロール(Dawn Patrol:夜明けの偵察)』と呼ばれる、名車たちの入場行進を体験できる。朝霧に包まれた太平洋を背景に、極上のコンディションに仕上げられた200数十台の参加車両が、静寂を切り裂くエグゾーストノートと共に、展示会場である18番フェアウェイへと次々に自走して入場してくるのだ。このドラマチックな夜明けの儀式から始まり、すべての表彰式が終了する夕方まで、丸一日を自動車の美学に浸りきることができる。
芝生を埋め尽くす名車たちのスケールは筆舌に尽くしがたいが、第75回を迎えた今回のペブルビーチにおいて何よりも特筆すべきは、歴史上初めて 日本車だけのカテゴリー が設けられたことである。ジャパン・モータースポーツ と銘打たれたクラスに、日本のル・マン参戦車両などのヘリテイジが威風堂々と展示されている光景は、一人の日本人として感無量であった。
また、 コンセプト・ローン には世界中の自動車メーカーが発表するニューモデルが一堂に会する。今回は日本勢の躍進も際立っており、アキュラの新作コンセプト ネクセラ・ビジョンに加え、奥山清行氏率いるKEN OKUYAMA CARSが新型車 Kode89 をワールドプレミアし、世界中の大物コレクターたちの目を大いに楽しませていた。
今年はミウラ生誕60周年を記念し、世界中から43台ものランボルギーニ・ミウラがグリーンに整列するという壮観な番外編も展開された。隣接して設置された カーサ・フェラーリ では、歴史的なフェラーリが並べられ、パレードランを実施。オーナーたちは一般客が立ち入れない専用ファシリティの中で、極めて優雅なひとときを楽しんでいた。
イベントのクライマックスである ベスト・オブ・ショーの栄冠は、クラーク・ゲーブルがかつて所有していた1935年製デューセンバーグSSJスペシャル・スピードスターに輝いた。ペブルビーチでは毎年、オーセンティックな戦前モデルが頂点に立つべきか それともフェラーリのような美しくモダンな戦後スポーツカーが選ばれるべきか という白熱した議論が巻き起こる。その論争自体が、参加者たちを深く楽しませる極上のエンターテインメントとなっているのだ。ペブルビーチ・コンクール・デレガンスの入場券も年々値上がりしているとはいえ、まだ十分に現実的な価格に留まっている。自動車を愛する者であれば、この日曜日の熱狂には絶対に参加するべきだ。
駆け足での紹介となったが、モントレー・カー・ウィークは一生に一度は体験すべき至高の祭典である。この記事を読んだあなたが、来年のモントレーの空気を吸い、その熱狂の一部となることを願ってやまない。
文・写真:越湖信一
Words and Photography: Shinichi EKKO