“お笑い芸人のネタを見る方法”といえばテレビをはじめ、現在はYouTubeやSNSの普及により、スマートフォンで楽しむ人も多い。それでも芸人にとって欠かせない存在であり続けているのが「劇場」だ。

開演前の劇場では、スタッフが慌ただしく準備を進め、芸人たちは舞台袖で出番を待つ。観客の目には映らないが、一つのお笑いライブは多くの人の仕事によって支えられている。今回は大宮ラクーンよしもと劇場にて、運営スタッフ、支配人、ライブに出演するジェラードン、タモンズに話を聞いた。

  • 大宮ラクーンよしもと劇場

    大宮ラクーンよしもと劇場

大宮ラクーンよしもと劇場は、2014年7月にオープンした埼玉県初のよしもと常設劇場。JR大宮駅から徒歩1分にある商業施設 大宮ラクーンの6階に入っている。座席数は140席。現在は、大宮セブン、オーミヤンズVといった吉本興業所属のお笑い芸人によるユニットが活躍している。

“攻めたお笑い”を届ける劇場。少数精鋭スタッフに共通する臨機応変さ

はじめに運営スタッフに話を聞いた。プロデューサーを務めながら制作も担当しているという女性は、今年で7年目。子どもの頃からのお笑い好きが高じて、吉本興業には正社員として入社した。日々ライブを企画し、お笑い芸人をキャスティングするほか、チケットの販売促進を手伝い、本番当日のサポートもこなす。

  • 連日、様々なライブが行われている

    連日、様々なライブが行われている

高校生のときに演劇部で音響を担当し、裏方の面白さに目覚めたことが、この職業を志すようになったきっかけだ。それまで、1人のお笑いファンとして「もっとこんなライブを見たい」「こんなロビーにしたい」と温めていたアイデアを、就職後にすべて実現できたという。「チケットがすべて売り切れて、当日の会場が笑いに包まれる、そんな瞬間にやりがいを感じます。笑顔で帰るお客さんをロビーで見かけるとき、『この仕事をやってて本当に良かったな』と実感します」と話す。

どんな人に向いている職業なのだろう? そんな問いかけには「大前提としてお笑いが好きであること、あとは探究心があること、そして本番のトラブルにも対応できる判断力と柔軟性も必要になると思います」と教えてくれた。「大宮では通常の寄席もやりますが、レギュラー公演では前衛的な、攻めたお笑いもやります。演者たちに熱が入り、舞台でもみくちゃになって怪我しそうになることもしばしばなんです」と苦笑いする。

  • ロビーには大宮セブンの大きなポスター

    ロビーには大宮セブンの大きなポスター

大宮ラクーンよしもと劇場は、少数精鋭のスタッフで日々の公演を作り上げている。舞台上の芸人のアドリブや独特なお笑いの言い回し・リアクションなどを、照明や音響、映像がさらに盛り上げていく。

大宮が地元だという音響スタッフは、学生の頃にお笑いの劇場が出来たと知り、友人と公演を見に来たことをきっかけに、この仕事を目指した。「テレビで見るのとは違う、生のお笑いの面白さに驚き、劇場に携わる仕事がしたい! と思いました」

本番中には「銃声ありますか?」や「ここでドラムロール鳴らしてもらって…」など、使う予定のない効果音を要求されることが多々あるとのこと。「大宮はアドリブが多いので、フリー音源をある程度ストックしそこから引っ張ったり、珍しい音源の時は本番中にフリー音源サイトから探して乗り切っております」と、緊張感のある舞台裏を明かしてくれた。

リハーサルや本番での経験を重ねていても、ライブでは不測の事態や思わぬミスをしてしまうことがある。例えば前の組のコント道具やコーナー終わりで道具の一部を舞台から袖に運ぶのを忘れてしまう、といったミスだ。舞台監督の一人は、「次の出番の演者さんに救っていただいた」と、過去の失敗を振り返る。

本番中の連携はもちろん、準備やリハを円滑に進行するために、舞台監督には要領の良さが必要とのことで、「日々尽力しています」と話してくれた。「舞台監督として、演者さんと技術の間に入ることが多いのでコミュニケーション能力もあるといろいろと捗ると思います。元気と体力と大声が出せたら出来ます!」