TUIDEが鳴らす「余裕」 “Soultronic”に宿るR&B、ハウス、ガラージの記憶

HYBE MUSIC GROUP傘下の新レーベルABDから、7人組ガールグループTUIDE(テュイド)がデビューした。8月24日に1st EP『TUNE & PLAY』をリリース。同日、韓国・ソウルのYES24 LIVE HALLで行われたメディアショーケースでは、タイトル曲「SUN KISS」と先行公開曲「GRLS」のステージを披露した。

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筆者も今回ソウルに足を運び、そのデビューの瞬間を現地で見届けた。「HYBEの新ガールグループ」という大きな看板とは裏腹に、彼女たちの音楽とパフォーマンスに触れて、まず印象に残ったのは、その”力みのなさ”だった。

「SUN KISS」は、強烈なドロップやドラマティックな展開で畳みかけるタイプのデビュー曲ではない。「Ba-da ba-ba-ba」というシンプルなフックを軸に、ゆったりとしたトップラインと躍動的なリズムのコントラストで聴かせる。ハウスやガラージを思わせる軽やかなグルーヴに、レイヴ由来の高揚感をさりげなく忍ばせた、洗練されたエレクトロニック・サウンドが重なる。ロック的なダイナミズムや、ポップスの華やかな意匠とは少し離れたところで鳴っている音楽だ。

ショーケースでSEAH(セア)は、『TUNE & PLAY』をひとつの言葉で表すなら「余裕」だと話していた。この言葉は、TUIDEの音楽を紐解くうえで重要なヒントになる。

彼女たちが掲げる音楽的なキーワードは「Soultronic」。ソウルの温かさとエレクトロニックの洗練を掛け合わせたスタイルだが、5曲を通して聴くと、それは特定のジャンルを指すというより、異なる音楽言語を自由に行き来するための考え方に近いように感じられる。

「ABD」では90年代R&B/ソウルにヒップホップのグルーヴとローファイな質感を重ね、「Echo」はディープハウスとアップテンポなクラシックハウスを横断する。「Flip-Flop Girl」ではG-Funkを現代的に解釈し、「GRLS」ではUKガラージの跳ねるビートが前に出る。さらに「Echo」では、ジャネット・ジャクソンが2001年に発表した「All For You」のメロディを引用する形で取り入れている。

90年代から2000年代、そして現在へ。90年代から現在までのR&Bやダンスミュージックの記憶が、一枚のEPの中で軽やかにつながっている。

なかでも「SUN KISS」のグルーヴは、日本で2000年代に親しまれたブラジリアン・ハウスやボッサ・ハウス、当時のクラブとカフェを行き来していたようなサウンドを思い起こさせるところがある。興味深いのは、TUIDEがそうした過去の音楽を”レトロ”として提示していないことだ。特定の時代のスタイルを再現するというより、そこにあった身体を自然に揺らす感覚を、現在のK-POPへと持ち込んでいる。

(P)&(C) ABD

その姿勢は歌詞にも表れている。「SUN KISS」では〈No big show〉と歌い、言葉ではなくリズムで語り、心臓の鼓動にグルーヴを委ねるよう促す。自分を必要以上に大きく見せるのではなく、自分自身の声と感覚を信じる。セアが口にした「余裕」は、サウンドだけでなく楽曲の言葉にも通底している。

そして、その感覚は振付にも表れていた。

「GRLS」のステージで印象的だったのは、フォーメーションを揃えて見せる場面だけでなく、一人ずつ中央に出て、それぞれのダンスを披露していく流れが組み込まれていたことだ。ダンスバトルと呼ぶほど競技的ではないものの、セッションを眺めているような解放感がある。決められた振付の中に、個人のグルーヴを見せるための余白が残されている。

会見でJIA(ジア)が口にした「自由なムーブ」という言葉が、その印象と重なる。現地で配布された資料にも、TUIDEのパフォーマンスはビートを「合わせる」より「乗る」動きを見せる、とある。7人をひとつの型にはめるのではなく、それぞれの身体性を残したまま、ひとつのグルーヴへと調律していく。

「GRLS」の歌詞にも、その精神は分かりやすく表れている。既存のルールに従うのではなく、自分たちで新しいルールを作る。そして終盤には〈Nothing to prove〉と歌う。何かを証明しようと力むのではなく、自分たちのリズムで進むという姿勢は、ステージで感じた解放感とも重なっていた。

それはボーカルについても同じだろう。SEOHEE(ソヒ)は、GroovyRoomから、メンバーそれぞれのボーカルトーンと個性を生かし、何かを無理につくろうとせず、あるがまま自然に表現することが大切だという趣旨のアドバイスを受けたと話していた。異なる声や個性を均質化するのではなく、それぞれの持ち味を生かす。その考え方が、サウンドとパフォーマンスの両方を貫いている。

全5曲の制作の中心を担ったGroovyRoomは、韓国ヒップホップシーンで存在感を示してきたプロデューサーデュオ。日本では2019年にSKY-HI × SALU「Goodbye To The System」をプロデュースするなど、日本のアーティストとの接点も持つ。

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TUIDEの新しさは、未知のジャンルを発明したことではない。90年代以降のR&Bやクラブ・ミュージックの語彙を行き来しながら、その歴史の重さではなく、”乗る”ことの楽しさを軽やかに取り出していることにある。

音を詰め込みすぎない。ボーカルで過剰にドラマをつくらない。振付も、ただ揃えることだけを目的にしない。それぞれの声と身体が遊べる余白を残す。

デビュー作で自分たちの個性を声高に主張するのではなく、まずは自分たちのリズムと感覚を信じる。その「余裕」こそが、TUIDEが『TUNE & PLAY』で鳴らした最初のアイデンティティなのかもしれない。