
サマーソニックにLArc-en-Cielが出演するのは、結成35周年にして今回が初。8月14日(金)大阪Day1に続き、8月16日(日)東京Day3でもヘッドライナーを務め、ヒット曲を惜しみなく連打すると、ZOZOマリンスタジアムにはいくつもの巨大サークルピットが出現。10月からスタートする35周年を記念した全国ツアー”35th LAnniversary TOUR”を前に、日本が世界に誇るモンスターバンドとしての矜持を示した。
ひとつ前のLE SSERAFIMが出番を終えたのは18時20分。ステージ転換と並行して観客が入れ替わり、アリーナがぎっしりと埋まったように感じたあとも待機列が途切れず、続々と人が押し寄せてくる。午後に降り出した雨は上がり、暑さも収まった19時20分、キャリアを振り返るオープニング映像がスタート。1999年に自身最大動員数を記録した”1999 GRAND CROSS TOUR”、アジアのロックバンド初の快挙を成し遂げたニューヨーク マディソン スクエアガーデンの単独公演、8万人を動員した国立競技場公演、”30th LAnniversary TOUR”といった活動や当時の報道記事をダイジェストで見せていく。列挙されると改めて驚異的なキャリアで、ヘッドライナーに抜擢された根拠は一目瞭然だった。
鳴り響く激しい車のエンジン音。1999年のリリース当時から今に至るまでLIVEの定番曲であり続けている「Drivers High」の幕開けであることは、ファンであれば瞬時に分かっただろう。白煙が立ち込めるステージにメンバーが登場し、yukihiro (Dr)、ken (Gt)、tetsuya (Ba)の順に一人ひとり大写しになるたび大歓声を巻き起こす。最後にhyde (Vo)が姿を現すと飢えた野獣のように歩き回り、「Are you ready, SUMMER SONIC?」と問いかけると、拳を突き上げて大声で応えるオーディエンス。熱狂的で完璧な幕開けだった。
Photo by Toshikazu Oguruma

Photo by Yuki Kawamoto

Photo by Yuki Kawamoto

Photo by Yuki Kawamoto
1998年に「花葬」「浸食 -lose control-」と共にシングル3枚同時リリースされたミリオンヒット曲「HONEY」では、ギターを構えて掻き鳴らしながら歌い出すhyde。「歌ってくれ!」と観客に呼びかける。序盤から惜しみなく代表曲群を放っていくのが潔い。「LArc-en-Ciel来たぜ! サマソニ楽しもうぜ!」「今日LArc-en-Cielを初めて観る人もいると思いますけど、ラルクは実在します(笑)」「すでにサークルピットができてるのは確認しました」と場内を見渡してhydeはうれしそうに笑った。
孤高の芸術性とポピュラリティーを兼ね備えたバンドで、揺るぎない美学を持ち、数々のミリオンヒットを生み出してきた作曲家集団。ロック、ポップ、パンク、ハードロック、メタル、ニューウェーヴ、ゴシック、インダストリアル、EDMなどあらゆるジャンルを横断した楽曲群を誇り、没入感をもたらすシアトリカルなLIVEは観る者を虜にする。アニメとのタイアップによる相乗効果もあり、世界中にファンを拡大してきた。サマーソニックに限らずフェス出演はキャリアの長さに比して多くはなく、ワンマンLIVEはチケット争奪戦。35周年を迎える彼らがこれまでどのような時間を過ごしてきて、”今”はどうなっているのか? 多くの観客にとって、それをリアルに知る貴重な機会となるのがこのステージだった。
「四半世紀前に素敵な未来を想像しながらつくった曲」(hyde)との紹介で始まり、kenがE-bowで奏でる伸びやかで澄んだフレーズが未来感を醸した「NEO UNIVERSE」。打ち込みのリズムと生演奏が絡み合い小気味よいグルーヴを生み出すダンサブルな「Caress of Venus」。アリーナ中央を貫くランウェイにhydeはステップを踏みながら出てきて、髪を風になびかせながら軽やかにパフォーマンス。大阪Day1は喉が本調子ではなかったが、この日は完全復活を遂げていた。

Photo by Riei Nakagawara ©SUMMER SONIC All Rights Reserved.
「祈り」から「祝祭」へ
序盤で空気を掌握した後は、更なる濃密なゾーンへと誘っていく。「X X X」のイントロが鳴った途端、場内に歓喜のどよめきが広がった。R&Bとメタルを融合させた発明品のような楽曲で、匂い立つような妖艶さをまとったミドルナンバーである。官能的な赤いライトの下、野外であることを一瞬忘れさせる密室のムードをまといながら、しっとりとアンサンブルを紡ぎ上げていく4人。マニアックなようでいて、実は2011年にオリコンウィークリーチャート1位を獲得したシングル曲だという事実に、LArc-en-Cielの凄みを実感せざるを得ない。
続く「DAYBREAKS BELL」は2007年にテレビアニメ『機動戦士ガンダム00』オープニングテーマとして書き下ろされたメロディアスなダークロックナンバーで、戦禍で無残に破壊された街のイメージ映像を背に披露した。”争いよ止まれ” ”願いは誰にも撃ち落とせない”など印象的なフレーズがヴィジョンに投影され、メッセージを浮き彫りにしていく。大きな拍手に包まれて終えると、静寂のなかyukihiroがマーチングビートを刻み始め、次曲「forbidden lover」へと移行。観客が一斉にスマートフォンのライトを灯すと、スタジアムは巨大な祭壇のように見えてきて、祈りの場へと移り変わった。hydeが被っていたフードは聖衣の一部あるいは頭巾のようにも見え、見開いた目に涙を浮かべ熱唱する姿は圧巻。先ほどまでサークルで狂喜していた観客たちは、異世界へ吸い込まれたかのように、息を呑んで立ち尽くしていた。

Photo by Riei Nakagawara ©SUMMER SONIC All Rights Reserved.

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kenの奏でるギターインプロヴィゼーションは、物憂げなトーンからやがて「MY HEART DRAWS A DREAM」の晴れやかなギターリフのイントロへと移っていく。燃え残っていたヴィジョン内の炎は、雨によって鎮められていった。これまで世界中のLIVEで”夢を描くよ”の大合唱を響かせてきた世界平和のシンボルのような名曲で、コロナ禍による声出し禁止の公演ではハミングで心を通わせた思い出の曲でもある。あらゆる境界線を音楽は超えうること、心の自由を誰も縛れはしないことを詞曲で体現する傑作は、広大で開放的な会場であればあるほど真価を発揮してきたように思う。そのスケール感と魔法はマリンスタジアムでも健在で、すべてが浄化されていくような心地よさを体感させた。
「winter fall」ではhydeがステージを降りて客席エリアを練り歩く一幕も。「レッツゴー、ユッキー」とhydeが声をかけ、yukihiroのドラムから「READY STEADY GO」へ突入。hydeはセンターランウェイへと駆け出し、「遊びたいやつここに来い!」「こんなことめったにないぞ!」と後方の観客をサークルピットに呼び寄せる。キャノン砲が炸裂し祝祭感がいやおうなしに高まっていく。メリーゴーラウンドがヴィジョンに投影されて始まったメジャー1st CDシングル「Blurry Eyes」、2011年に結成20周年の第一弾シングルとしてリリースされた「GOOD LUCK MY WAY」を連打すると、場内にはいずれも大きなサークルピットができており、観客は大声で歌いながら走り回っていた。LIVEを通して最も印象的だったのは、観客が楽しんでいる情景をメンバーが心からうれしそうに、幸せそうに見つめていたことだった。

Photo by Riei Nakagawara ©SUMMER SONIC All Rights Reserved.
過去と未来をつなぐ「虹」
サマーソニック2026とのコラボレーション動画として一部先行公開されていた新曲「総天然色」は、写真も動画も撮影OKとアナウンス。「撮ってもいいけど盛り上がれよ!」と呼びかけたhyde。35周年にしてこれほどフレッシュで大空が似合う新曲が生まれたことは、LArc-en-Cielの未来に希望を持たせてくれる。
大阪では声の調子が悪かったことに触れ、不安だったと正直に明かし「今日はみなさんのおかげで持ち返すことができました」と感謝を述べたhyde。「LArc-en-Cielは35周年を迎えました。首の皮一枚で繋がっておりますが(笑)。みんなのおかげです、本当にありがとうございました」とも語り、最後に届けたのは「虹」。LArc-en-Cielとはフランス語で虹を意味することから、バンドそのものを体現する代表曲の一つ。活動休止を経て現在の4人で歩き始めた起点の曲であり、節目のLIVEで披露されてきた、メンバーにとってもファンにとっても特別な曲である。35周年を本格的にここから動かしていく──そんな覚悟が伝わってくるような、胸を打つ歌であり演奏だった。

Photo by Riei Nakagawara ©SUMMER SONIC All Rights Reserved.
「ミライ」のインストゥルメンタルをBGMに、フィナーレの打ち上げ花火が夜空を彩った。hydeとtetsuyaが肩を組んでランウェイを歩いてくると、観客はレアなツーショットに悲鳴を上げる。「これが一番の花火じゃない?」とtetsuyaが笑顔で語りかけ、うなずいたhyde。冷静に考えるとフロントマンとリーダーのツーショットがなぜ珍しいのだろうか?とも思うのだが、メンバー4人がステージで一列に並ぶ場面すら見覚えがないのだった。そのような独特の距離感を保ちながら、ひとたび音を鳴らせば、4人でなければ決して織り成せない世界が出現する。「首の皮一枚」とhydeは表現したが、バンドがこれほど長く続くのは決して当たり前ではなく奇跡と言ってよい。
この日ZOZOマリンスタジアムに集った観客は、LArc-en-Cielの名曲たちと人生のどこかで出会い(あるいはこの日初めて知り)、2026年の今も第一線に立ち続けヘッドライナーという大役を任された彼らと、”今”という時を分かち合った。曲を通して青春時代の自分と”再会”した人もいただろう。35年存在し続けるということは、聴き手の人生の一部になるということを意味する。セットリストはヒット曲を連打するだけでなく、今の時代に問うべきメッセージを盛り込んだ骨太な構成となっており、絶望から光を掴もうとする壮大な物語をも描き上げた。観客一人ひとりの心を揺さぶってカタルシスをもたらし、バンド自身も、35年続けてこなければ決して見られなかったような絶景をこの日、目にしたのではないか。同時代を生き、参加した一人ひとりが語り部として後世に伝えたくなるような、まさに伝説的名アクトだった。
【写真ギャラリー】LArc-en-Ciel@サマーソニック東京会場 ライブ写真(記事未掲載カット多数)

Photo by Riei Nakagawara ©SUMMER SONIC All Rights Reserved.
LArc-en-Ciel ”35th LAnniversary TOUR”
2026年10月9日(金)、11日(日)、12日(月祝) [東京]国立代々木競技場第一体育館
2026年10月31日(土)、11月1日(日) [福岡]マリンメッセ福岡 A館
2026年11月21日(土)、22日(日) [愛知]IGアリーナ
2026年11月28日(土)、29日(日) [神奈川]横浜アリーナ
2026年12月12日(土)、13日(日) [千葉]ららアリーナ 東京ベイ
2026年12月16日(水)、17日(木) [大阪]大阪城ホール
2026年12月24日(木)、26日(土)、27日(日) [東京]有明アリーナ
Official Website https://www.LArc-en-Ciel.com
35th LAnniversary 特設サイト https://le-ciel.com/L35
Instagram https://www.instagram.com/larcenciel.official/
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