藤井 風(Fujii Kaze)フジロック「伝説のステージ」を総括 苗場を愛で満たした歴史的名演

7月25日・土曜のGREEN STAGEのサブヘッドライナーは、フジロックの長年のアプローチが結実したFujii Kaze(藤井 風)。初のCoachella出演を経て、「Pre: Prema Tour」の真っ最中。土曜1日券はもちろんのこと、3日券が早々と完売した最大の要因と思われる国内最高峰のアーティストの貴重なライブを観ようと、GREEN STAGEは尋常ではない数のオーディエンスで埋め尽くされた。

たくさんの階段が組み込まれた華やかなセット。宮川純(Key)、DURAN(Gt)、KOBY SHY(Ba/バンドマスター)、佐治宣英(Dr)に広瀬未来(Tp)、馬場智章(Sax)、池本茂貴(Tb)というホーン隊を加えたバンドメンバーが登場し、サウンドチェックをスタート。LEDビジョンにはFujii Kazeが何かを食べている映像が流れる。

19時になり、再度メンバーが登場。暖色系の照明が光り、宮川による鍵盤の旋律が流れると、一気に神聖な空気に包まれた。Fujii KazeはなんとPA卓あたりから客席エリアの中を、サックスを吹いて歩きながら現れた。ゆっくりとステージへたどり着くと、大きな拍手と歓声が上がる。1曲目は「ガーデン」だ。息をすーっと吐いて「空の果て~!」と第一声を発した。

ビートの効いたパワフルなアンサンブル。Fujii Kazeが「フジロックー!」と伸びやかに口にし、「まつり」へ。頭上で両手を左右に揺らすと、オーディエンスもそれに続く。サビはもちろんみんなであの盆踊りを想起させる振りを踊る景色が広がった。

メロディアスな鍵盤の旋律に続き、「Na, na, na-na-na」というスキャット。「何なんw」だ。ハンドマイクで練り歩きながら、唯一無二の伸びやかな歌が苗場の空に気持ち良く伸びていき、サビでマイクを向けると、特大のシンガロングが巻き起こった。階段をのぼり、最上段に置かれたピアノを立ちながら演奏。一挙手一投足が楽曲の世界観を際限なく広げていくかのようなパフォーマンスだ。広大なGREEN STAGEを完全に手中に収めている。

流れるような動きで再びピアノを弾き、「死ぬのがいいわ」のメロディを奏でた。ホーン隊の高らかな旋律が鳴り、スペシャルなアレンジが施される。ピアノに寄りかかり、究極の恋愛ソングにも、究極の自己愛の曲にも聴こえる多層的なメッセージを悩ましげに歌い放つ。ボーカルの迫力が増す中で、コーラス、ホーン、バンドの音が鳴り、音像はアバンギャルドに変化していく。

内なる愛を感じて、至福のフィナーレへ

そこから自己紹介を挟み、インクレディブルなバンドメンバーを一人ずつ紹介。「This song is for you」と前置きして、「You」へ。会場を心地よいグルーブで包み込む。「幸せですか? 幸せは自分の内側にあります」と口にして、「夏がこれからも平和な喜びで溢れた季節でありますように、という願いを込めてサマーソングをやります」と語り、「Love Like This」へ。さまざまな愛の形を浮かび上がらせる。ドラムがビートを刻み、ホーンが鳴り、ぐっとスローになった「きらり」のアレンジにどよめきが起こった。音楽は我々と同じく生ものであり、その日その場所で形が変わるものなのだ。Fujii Kaze はその音楽と完璧に一体化する。リッチで芳醇な「きらり」に数万人が酔いしれた後、彫刻のようなポーズを決め、しばらく静止。陽気なアンサンブルが鳴ると共に動き出し、「花」へ。祈りのような歌を木々に溶け込ませた。

最新アルバム『Prema』に込めた想いを話し、「内なる愛を感じてみなさんに歌ってほしい曲があります」と言って、アカペラで「Prema!!」と歌い始める。何度か「Prema」というワードを通してのオーディエンスとの想いの交歓が行われた後、演奏がスタート。サビで「Prema」の合唱が響き渡った。

曲が終わって、「みんな優しい。このまますくすく優しい子に育ってね」と話すと、温かな笑い声が上がった。続いて、ピアノの弾き語りによる「満ちてゆく」。広大なGREEN STAGEにFujii Kazeの静謐なピアノと歌だけが響く。2番からはバンドが加わり、壮大なサウンドスケープが広がっていった。GREEN STAGEにはスマホライトの波が出現。29年間のフジロックの歴史の中でも、ベストモーメントのひとつだろう。

流麗なピアノを奏で、「yeah」とつぶやくと、「幸せになってください。それだけです。満足することに上手になりましょう」と静かに語りかける。困難な時代を生きる人々の道標となるような言葉を残し、この幸福な時間が残りわずかであることを示すかのように「Okay, Goodbye」へ。福音のような歌とアンサンブルを鳴らし、名残惜しそうに階段に座ったFujii Kaze。手を振って、「Goodbye」と一言。

重厚なギターリフが響くと、ステージに膝をついたFujii Kazeが後ろに倒れた。「Hachikō」のイントロが流れる。キレの良いダンスを踊り、ブラックのショルダーキーボードを弾き倒し、熱狂の渦を作り出すと、何度もお辞儀をして笑顔で手を振り去っていった。この上ない余韻を残して、伝説のステージは幕を閉じた。

〈SETLIST〉

1. ガーデン

2. まつり

3. 何なんw

4. もうええわ

5. 死ぬのがいいわ

6. You

7. Love Like This

8. きらり

9. 花

10. Prema

11. 満ちてゆく

12. Okay, Goodbye

13. Hachikō