
グレイシー・エイブラムス(Gracie Abrams)が本日7月17日、待望のニューアルバム『Daughter from Hell』をリリースした。彼女はこの通算3作目で、よりスケールの大きなサウンドを獲得しつつ、自身の内面世界をさらに深く掘り下げている。
〈脇腹にナイフを刺したまま生きている/そのまま無謀なドライブにでも行くつもり〉と、グレイシー・エイブラムスは3曲目の「The Knife」で歌う。『Daughter From Hell』に「ナイフ」という言葉が登場するのは、これが最初でもなければ最後でもない。彼女はアルバム全体でナイフについて4回も言及しているうえに、そこには見事なピアノバラードである「The Knife」をカウントしていない。エイブラムスにとって、これらの刃物は自身の痛みを表現するための道具だ。ねじれ、骨まで達し、そしてしばらくその場に留まり続けるような痛みを。そして『Daughter From Hell』を聴いていると、彼女がそれを気に入っているのではないかとさえ思えてくる。〈それを抜いてみろと挑発されている〉と彼女は歌う。〈きっと一生刺さったままでいるだろう〉。
『Daughter From Hell』への期待は高まる一方だ。それは3rdアルバムというものが、あらゆるアーティストのキャリアにおいて成否を分ける、極めて挑戦的な瞬間として知られるから、という理由だけではない。映画監督のJ・J・エイブラムスとハリウッドのプロデューサーであるケイティ・マクグラスの娘であるエイブラムスは、2023年にデビュー作『Good Riddance』をリリースした。同年、彼女はテイラー・スウィフトの「Eras Tour」でオープニングアクトを務め、グラミー賞の最優秀新人賞にノミネートされた。その1年後、彼女は2ndアルバム『The Secret of Us』をリリースし、そのデラックス盤には自身初のトップ10ヒットとなった、極めて中毒性の高い快活なナンバー「Thats So True」が収録された。「ネポ・ベイビー(親の七光り)」と一蹴されることもあったが、彼女はそのレッテルについて、気品と自覚を持って語ってきた。また、彼女はくだらないミームのネタにもされてきた。インターネットの意見によれば、彼女は万年サッド・ガール(悲しげな少女)だが、そうである資格などないというのだ。見事に割れた腹筋を持ち、同じく見事に割れた腹筋を持つ有名俳優と交際しているなら、なおさらである。
しかし、スリリングなシングル「Look at My Life」でエイブラムスが認めているように、彼女は望むものを手に入れたものの、それがどうもしっくりきていない。実際、それはある種、最悪な時間になりうる。『Daughter From Hell』には、幽霊、空想の友人、消えゆくエンジン、電車が衝突する予感などが登場する。一方で、これは現時点における彼女の最高傑作であり、焦燥感や美しさ、大人になることに伴うすべての重荷できらめく16のトラックが収められている。エイブラムスはNapsterや『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』と同い年(1999年生まれ)でありながら、ソングライターと呼ばれる人々がキャリア全体をかけて手に入れようとするような、円熟した知恵をもって曲を書いている。〈頂点には信じられる人など誰もいない〉〈20代でこんな風に感じるなんて〉と、彼女は長年のコラボレーターであるアーロン・デスナーやジャスティン・バーノン(ボン・イヴェール)と共同制作した「Humming」で繊細に歌う。
エイブラムスの最初の2枚は、心地よいほど内省的であり、ささやくようなベッドルーム・ボーカルを穏やかなサウンドに乗せて、彼女の秘密をヘッドフォンへと直接届けてくれた。しかし、彼女の曲はときおり似通って聞こえるリスクがあり、サウンド/歌詞の両面でお互いの個性を殺し合ってしまうところがあった。しかし、彼女はデスナーと共同プロデュースした最新作でそのイメージを完全に払拭し、かつてないほど深く掘り下げ、実験的な試みを行っている。タイトル曲は、これまでの彼女の作品にはない、生々しく、衝撃的なロックナンバーであり、間違いなく彼女のキャリアにおいて最も優れた楽曲の一つだ。彼女は母親に感謝すると同時に、問題児だったティーン時代を謝罪し、歪んだギターの音に乗せて歌う。〈私は厄介者だった、あなたは私を飲み込んでくれた/私はあなたに口調が似ていると言われる〉。
エイブラムスは本作で、ボーカル面でも飛躍を遂げている。「Good Reason」での軽やかなオクターブを飛び越えるような歌声や、「Men Like You」のサビでアデルさながらに熱唱する様子を聴いてみてほしい。親友であるポップシンガーのオードリー・ホバートと共同執筆した「Mini Bar」は、「Thats So True」と同じように語りかけるようなスタイルが特徴だ。ただ、そこにはおどけた表情はなく、代わりに、外出することに関する滑稽なほど共感できる一節〈角のミニマートにいる/50ドルとわずかな脳細胞を持って〉や、社交不安に関する一節〈パーティーにいるけれど/おかしくなりそうと思うのは私だけ?それともあなたもそう?〉が描かれている。このようなユーモアと繊細な脆さこそが、リボンを身につけ白いスカートを穿いてライブにやってきては、全曲の歌詞を叫ぶように大合唱する熱心なファンたちを、彼女が惹きつけてやまない理由である。
その直後のトラックである「Imaginary Friend」は、「Mini Bar」の賑やかさとは実に対照的だ。言わば祭りのあとの静けさであり、静かな翌朝のための、無駄を削ぎ落としたアコースティックの名曲である。エイブラムスはこれを、『Daughter From Hell』におけるもう一人の共同作業者と共作した。交際中の俳優、ポール・メスカルである。〈私の想像の産物なんかにならないで〉とエイブラムスは言い張る。〈だけどあなたはそうなの、本当に大嫌い〉。幸せな恋愛関係にあるときに優れた音楽を書くのは難しいかもしれないが、エイブラムスにその問題はないようだ——彼女はかつてないほどクリエイティブである。〈あなたはすべてについて真実を話す〉と、彼女は繊細なストリングスが特徴の「Afflictions」で歌う。〈あなたのすべての苦悩の中で/それが私の一番のお気に入り〉。
『Daughter From Hell』のオープニングを飾る、「Hit the Wall」の軽快なシンセが鳴りだす瞬間から、エイブラムスは自分がなぜ〈崩壊のパターンのなかで生きている〉のかを模索しようとする。彼女は自分の指針であるジョニ・ミッチェルを、ある一節に巧みに忍び込ませている。〈廊下で「A Case of You」が流れている/私が大したことではないと思おうとしている幻覚〉。これが『Daughter From Hell』の残りの部分のトーンを決定づけている。なぜなら、このカナダの伝説的アーティストと同じように、エイブラムスは自身の最大の武器がソングライティングであることを知っているからだ──ナイフなど必要ない。
From Rolling Stone US.

グレイシー・エイブラムス
『Daughter from Hell』
発売中
再生・購入:https://gracieabrams.lnk.to/DFH_JP

【日本盤情報】
◾️『ドーター・フロム・ヘル(ジャパン・デラックス・エディション)』(限定盤)
・7インチ・サイズ紙ジャケット仕様
・解説・歌詞・対訳付
・本人メッセージ翻訳
<封入特典>
・フォトカード4枚
・フォトブック(制作風景を収めた20ページ)
◾️『ドーター・フロム・ヘル』(通常盤)
・解説・歌詞・対訳付
・本人メッセージ翻訳