XGのステージはなぜ観る者を没入させるのか loudboxが明かす「THE CORE」ツアーの設計思想

フジロック出演も控えるXG。その最大の魅力は、7人それぞれの個性が自由に弾けるステージ上のパフォーマンスと、観る者を別世界へと連れていく没入感のある世界観にある。XG初のフルアルバム『THE CORE - 核』を携え、日本公演を完遂した「XG WORLD TOUR: THE CORE」でも、その魅力はさらにスケールアップしていた。宇宙船の内部を思わせるステージ、非対称に配置されたランウェイ、映像、照明、レーザー、パイロを緻密に組み合わせた演出。そのすべてが、XGの音楽とパフォーマンスを立体的に押し広げる独自のライブ空間を形成していた。

【写真】「XG WORLD TOUR: THE CORE」のステージ

その裏側を支えているのが、ライブエンターテインメントの領域で豊富な実績を持つデザインコレクティブ、loudboxだ。今回、Rolling Stone Japanでは、同ツアーを手がけたジェイソン・アルディゾン=ウェスト(Jason Ardizzone-West/クリエイティブディレクター・プロダクションデザイナー)、ジャクソン・ギャラガー(Jackson Gallagher/ビデオデザイン)、ジェレミー・レクターマン(Jeremy Lechterman/ショーディレクター・ライティングデザイナー)、マイケル・”ハンク”・ハンコウスキー(Michael ”Hank” Hankowsky/Notchデザイナー・テクニカルディレクター)へのメールインタビューを実施。XGの”核”をどのようにステージ上で可視化したのか、その制作の舞台裏を聞いた。

ーまずはloudboxについて教えてください。

loudboxは、ジェイソン・アルディゾン=ウェスト(jaw.studio.ny)、ジェレミー・レクターマン、ジャクソン・ギャラガー、マイケル・ ”ハンク”・ ハンコウスキー(FragmentNine)という、ライブエンターテインメント業界で豊富な実績を持つ4人のクリエイターによるデザインコレクティブです。私たちを結びつけたのは、「コンサートは単なるエンターテインメント以上のものになり得る」というひとつの信念でした。ひとつの空間に集まった見知らぬ人々が、畏敬、感動、驚きといった本物の感情を共有する。その特別な体験を生み出すことこそが、loudboxの存在意義です。

このコレクティブは、ジェイソンによるコンセプト主導でストーリー性を重視したステージデザインと、FragmentNineの創造力、高度なテクノロジー、そしてコンサートデザインの経験を融合させています。クリエイティブディレクション、プロダクションデザイン、照明、映像、美術、プログラミングまで、ライブ体験を構成するあらゆる要素を包括的に手がけ、アーティストにとって必要なクリエイティブ面とロジスティック面のソリューションを提供しています。これまでレディー・ガガ(Lady Gaga)、ジョン・バティステ(Jon Batiste)、アッシャー(Usher)、ハイム(HAIM)、XGなど、多くのアーティストのステージを手がけてきました。

ーXGとのコラボレーションはどのように始まりましたか?

ジェイソン:loudboxは、私とFragmentNineが宇多田ヒカルさんの『Science Fiction Tour』で成功を収めたことをきっかけに結成されました。香港で宇多田さんのツアーに帯同していた際、偶然XGも『The First HOWL』ツアーで香港を訪れていて、休日に公演を観る機会があったんです。

そのステージを観て、私たちはすぐにXGの音楽性と才能に圧倒されました。そこから、日本側のクリエイティブプロデューサーであるジョン・ルイス(John Lewis)氏と三井昌子氏(loudbox japan)と、次回プロジェクトでの協業について話し始めました。

XGのメンバーも、私たちの仕事を見てくれていました。そうした経緯もあり、『THE CORE - 核』アルバムおよびツアーの始動にあたって、正式にデザイン面でのコラボレーションに参加することになりました。

XGの”核”をステージでどう可視化したか

ー今回のショーのクリエイティブディレクションは、何からインスピレーションを得たのでしょうか。プロダクションを作るうえで、XGというグループのどのような側面に注目しましたか。また、初めてXGの音楽やパフォーマンスに触れたとき、最も印象的だったことは何でしたか?

ジェイソン:今回のコンサートは、XG初のフルアルバム『THE CORE - 核』を支えるツアーです。制作の出発点として、「Core(核)」という概念そのものが非常に大きなインスピレーションになりました。

XGを構成する7人のメンバーは、それぞれが独自の才能と表現力を持っています。そして7人がひとつの集合体となったとき、個々の力の総和を超えた、特別な全体像が生まれる。今回のステージデザインでは、その”核”を支え、視覚的に増幅させることに焦点を当てました。

ステージは、抽象的なスペースマシンであり、同時に巨大な楽器のような存在でもあります。宇宙船、異星の風景、ファッションランウェイ、コンサートステージなどへと、自在に姿を変えていく空間として構想しました。

初めてXGの音楽や映像作品に触れたとき、私たちはとても強い衝撃を受けました。K-POP、J-POPといった既存の枠ではなく、新しいジャンル”X-POP”として、既存のカテゴリーや枠組みを超えようとする姿勢があった。その精神には人を惹きつける力があり、今回のツアー制作にも大きな刺激を与えてくれました。

ジャクソン:XGのビジュアルの世界を掘り下げ始めたとき、私たちはかなり興奮しました。XGには大胆で表現力のあるイメージを好む感覚がありますが、同時に全体を貫く洗練された軸もある。単に派手で混沌としているわけではなく、緻密に作り込まれたスタイルとストーリーが存在していました。その世界観を、今回のショーと新作アルバムを軸にした一連の活動の中で、さらに発展させたいと考えました。

Photo by loudbox

ーステージデザインで目を引いたのは、ランウェイが中央ではなく、片側に寄せられていたことです。このレイアウトには、どのようなクリエイティブ上の意図があったのでしょうか?

ジェイソン:私たちは常に、「コンサートとはこういうものだ」という固定観念に挑戦したいと考えています。今回のステージ自体がユニークな非対称のデザインだったので、ランウェイも中央に置く必要はありませんでした。

ただ、それ以上に重要だったのは、ステージ正面中央という最も価値のあるスペースに、ランウェイではなく観客のエネルギーを置きたかったということです。ランウェイを片側に寄せることで、ファンをアーティストにより近づけることができましたし、Bステージもファンに囲まれた島のような空間にすることができました。

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ーショー全体を通して、映像演出が非常に印象的でした。中には長尺のシネマティックな映像シークエンスもあり、かなりの時間と労力が注がれていることが伝わってきました。映像コンテンツ全体のコンセプトと、制作過程で印象に残っているエピソードを教えてください。

ジャクソン:映像コンテンツで重視したのは、曲ごとの見せ場を作るだけでなく、ショー全体をひとつの世界として立ち上げることでした。ジェイソンはステージを、形を変える機械であり、楽器のようなものだと表現しています。私の仕事は、スクリーンにも同じように振る舞わせることでした。つまり、楽曲ごと、セクションごとに異なるビジュアル世界を持ちながらも、それぞれが断片的に見えるのではなく、ひとつの連続した体験としてつながっていくことを大切にしました。

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ショーは宇宙船の内部から始まり、トンネルを進んでいきます。ある場面では、スクリーンが私たちの乗る宇宙船の窓となり、宇宙の虚空を映し出す。時には、冒険の感覚を呼び起こすために、異星の世界を旅していく場面にもなります。後半になると、映像はより抽象的で余白のある空間へと移行していきます。それは、メンバーと観客の間にある壁を取り払い、感情的なつながりを生み出すための空間でもあります。

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また、いくつかの楽曲ではライブカメラの映像を取り込むことにも力を入れました。私たちの生活はデジタルデバイスに大きく支配されていますし、コンサートでは、ステージ横の大型スクリーンだけを見続けてしまうこともあります。そこでライブカメラの映像をステージ上の映像演出に取り込むことで、観客の視線をもう一度、目の前で起きているライブ体験へと戻したかったんです。

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ー照明デザインも非常に際立っていました。会場常設の照明はほとんど使わず、ツアーのために持ち込んだ機材で構成されているように見えました。照明へのアプローチと、デザインを導いた主な考え方について教えてください。

ジェレミー:今回の照明では、ステージ全体をひとつの立体的な空間として捉えることを大切にしました。照明、映像、美術、特殊効果がそれぞれ別々に存在するのではなく、「宇宙船の内部」という共通の世界観を支えるために連動している。その中で照明デザインは、ステージ全体の画をまとめ、ショーの空気を決定づける大きな役割を果たしました。

このショーでは、照明機材を舞台裏に隠すのではなく、あえて見せる設計にしています。どこに機材を置くのか、それを支える構造をどう見せるのか。そうした要素自体が、光の演出と同じくらいステージのビジュアルを形づくっています。

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XGの世界へ観客を引き込み、音楽が持つ強さを視覚的にも増幅させる。そうした大きくダイナミックな場面を作るのは、本当に楽しい作業でした。一方で、数人のメンバーだけで見せる親密なシーンでは、あえて照明の数を絞り、必要な光だけを明確に当てています。そうすることで、この規模の公演ではあまり見られないほど、振れ幅の大きい表現が可能になりました。

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ーその一方で、レーザーの使用は比較的抑制されているように感じました。そこには明確なクリエイティブ上の理由があったのでしょうか?

ジェイソン:レーザー、映像、照明、パイロなど、あらゆる演出要素は、本当に必要な場面で使うことを重視しました。それらはあくまでXGの音楽を引き立てるためのもので、派手に見せること自体が目的ではありません。

私たちはもともと演劇のフィールドで経験を積んできましたし、私自身も今も演劇の舞台デザインに携わっています。だからこそ、ひとつひとつの演出には、ただ派手だからではなく、「なぜそこで必要なのか」という理由があるべきだと考えています。コンサート全体にも、一本の物語の流れのようなものを持たせたいんです。

そのため、それぞれの曲で何をどこまで使うのかは、とても慎重に考えています。必要なものを、必要なだけ使う。ただし、楽曲が求める場面では、演出を一気に最大限まで引き上げることもあります。たとえば「O.R.B」では、使える演出を惜しみなく投入しました。

Photo by loudbox

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ジャクソン:全員が同時にソロを取ることはできません。私たちは、ショーのビジュアルの流れが、音楽と物語の感情の流れにきちんと寄り添うよう、かなり意識して作っていきました。やりすぎるのは簡単です。でも、ショーのあまりに多くの場面で、あまりに多くのことをしてしまうと、観客は疲れてしまいます。

「O.R.B」のようにショーのピークを担う楽曲が最大限の熱狂に到達できるのは、そこに至るまでの楽曲で観客に余白を与えているからです。大事なのは、コントラストと緩急です。すべてを最初から最後まで最大出力にしてしまえば、逆にどの瞬間も特別ではなくなってしまう。大きな見せ場があるからこそ、引き締まった親密な場面が生きる。そして、その静かな場面があるからこそ、次の大きな瞬間がさらに際立つ。そうした流れがなければ、すべてはただのノイズになってしまいます。

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緻密な制約の中で生まれたライブ空間

ーloudboxは数多くの国際的アーティストのステージを手がけてきました。一方で日本では、消防法などの規制によって、プロダクション上の制約が生じることもあります。日本公演の準備にあたって、規制面での課題はありましたか。また、それにどのように対応しましたか?

ジェイソン:世界各国には、パイロの使用、ステージと観客の距離、照明や映像機材を吊り込む際の安全基準など、それぞれ異なる規制があります。私たちは、そうした条件を最初からデザインに織り込むようにしています。制作が進んでから制約に気づき、やりたい演出を諦めることにならないようにするためです。

たとえば日本では、観客とステージの間に必要とされる安全距離が、北米やヨーロッパに比べてかなり大きい。そのため、花道やランウェイのように客席側へ張り出すステージをどう設計するかは、より難しくなります。ランウェイを中央ではなくサイドに配置した理由のひとつも、そこにありました。アーティストとファンの距離をできるだけ近づけながら、現地の規制も守る。その条件をただの制約にせず、ステージ体験を面白くするためのアイデアに変えたかったんです。

マイケル:日本の制作チームと現地クルーについても、ぜひ触れておきたいです。技術的にもクリエイティブ面でも要求の高いプロダクションでしたが、彼らは毎公演、私たちのビジョンを本当に見事な形でステージ上に実現してくれました。しかも、常に大きな熱意を持って取り組んでくれた。このショーがこれほどスムーズに成立したのは、彼らの努力と専門性があってこそだと思います。

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ーこのプロジェクトを振り返って、最も難しかったことは何でしたか。また、特にこだわって完成度を高めたいと感じた要素はありましたか?

ジェイソン:最大の課題になるだろうと思っていたのは、スケジュールでした。プロダクションやスケジュール上の事情もあり、バンドと一緒に行うプロダクションリハーサルの時間はそれほど多くありませんでした。

ただ、XGは一人ひとりの集中力が高く、才能にもあふれた、本当にプロフェッショナルなアーティストです。限られた時間の中でも、こちらの意図をすぐに理解し、リハーサルを重ねるたびにショーを着実に形にしていくことができました。日本のプロダクションチーム全体の仕事の精度も非常に高く、そのおかげで制作は驚くほどスムーズに進みました。

ジャクソン:制作期間はかなり限られていました。通常であれば、この規模のプロジェクトには6カ月以上かかるところですが、今回は実質3カ月ほどしかありませんでした。それでも、チーム全員が同じゴールを共有し、高い集中力で取り組んでいました。途中で方向性を大きく変えたり、新しいアイデアを後から加えたりする余裕はあまりありませんでしたが、最初から目指すものが明確だったので、限られた時間の中でも大きなブレなく進めることができました。

ジェイソン:私たちは基本的に完璧主義者なので、いつだって「もっと時間をかけて探求したかった」と感じる部分はあります。ただ、日本公演がどのように仕上がったかについては、全員とても満足しています。ステージ上でメンバーたちが本当に楽しそうにしているのを見るのも、とても嬉しいことです。そして、今後の北米やタイなどのツアーでも、XGと一緒に仕事を続けていけることを楽しみにしています。

ー今回のプロジェクトを通じて、あらためて見えてきたXGの新たな魅力や強みはありますか?

ジェイソン:XGは非常に強く、しなやかで、才能にあふれたアーティストたちです。そんなグループの仕事を間近で見ることができるのは、私たちにとって大きな光栄です。

ジャクソン:その音楽や世界観に触れる時間が増えるほど、その魅力はますます深まっています。今でも、XGの音楽、人生、ペルソナについて、惹きつけられる要素を新たに発見し続けています。

このプロジェクトに長い時間軸で関われていることは、本当に貴重な経験です。私たちの仕事では、初演に向けて作り上げたショーを、その後は大きく変えずに展開していくことも少なくありません。でも今回は、ツアーを重ねる中でショーも物語も少しずつ進化していく。そのプロセスに関われていることが、とても嬉しいです。

Photo by loudbox

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XG WORLD TOUR:THE CORE

JAPAN

2026年2月6日(金)・7日(土)・8日(日)神奈川・Kアリーナ横浜

2026年2月17日(火)・18日(水)大阪・大阪城ホール

2026年2月21日(土)・22日(日)愛知・IGアリーナ

2026年3月14日(土)福井・サンドーム福井

2026年3月20日(金・祝)宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ

2026年3月25日(水)・26日(木)兵庫・GLION ARENA KOBE

2026年4月4日(土)・5日(日)福岡・北九州メッセ

2026年4月10日(金)・11日(土)・12日(日)東京・国立代々木競技場 第一体育館

ASIA / AUSTRALIA

2026年7月19日(日)タイ・バンコク IMPACT Arena

2026年7月22日(水)フィリピン・マニラ SM Mall of Asia Arena

2026年8月2日(日)香港 AsiaWorld-Expo Hall 10

2026年10月12日(月)オーストラリア・メルボルン Rod Laver Arena

2026年10月14日(水)オーストラリア・シドニー Qudos Bank Arena

2026年10月17日(土)台湾・台北 Taipei Arena

UK & EUROPE

2026年9月2日(水)イギリス・ロンドン

2026年9月5日(土)フランス・パリ

NORTH AMERICA

2026年11月3日(火)アメリカ・オークランド Oakland Arena

2026年11月5日(木)アメリカ・ロサンゼルス Crypto.com Arena

2026年11月9日(月)アメリカ・シカゴ United Center

2026年11月12日(木)カナダ・ハミルトン TD Coliseum

2026年11月14日(土)アメリカ・ニューアーク Prudential Center

2026年11月17日(火)アメリカ・ダラス American Airlines Center

2026年11月22日(日)メキシコ・メキシコシティ Arena Ciudad de México

XG WORLD TOUR:THE CORE Special Website

https://xgalx.com/xg/tour/thecore/