取材に応じた滝澤夏央【写真:編集部】


 


 西武・滝澤夏央内野手が、攻守で存在感を高めている。4月30日の日本ハム戦から32試合連続出塁を記録するなど、打撃面でもチームを支えてきた。だが、開幕直後の打席では「欲が出ていた」と振り返る。長打や打球速度を意識する中で、見つめ直した自分に求められる役割とは。滝澤の現在地に迫った。(取材・文:灰原万由)

 
プロフィール:滝澤夏央
2003年生まれの新潟県出身。地元の強豪・関根学園高から、2021年育成選手ドラフト5位で西武に入団した。プロ1年目の5月に支配下契約を結ぶと徐々に頭角を現し、昨季は125試合に出場。今季は守備だけでなく打撃でもチームを牽引し、さらなる成長を遂げている。
 
「欲が出ていた」見失っていた自分の打撃
[caption id="attachment_273194" align="alignnone" width="1200"] 埼玉西武ライオンズの滝澤夏央【写真:産経新聞社】[/caption]
 

 

 
 昨季は自己最多の125試合に出場し、チーム2位の21盗塁を記録。高卒5年目の今季は初めて開幕スタメンを勝ち取ると、ここまで77試合に出場し、打率.293、1本塁打、19打点(7月11日終了時点)をマークしている。
 
 4月30日の日本ハム戦からは32試合連続出塁も記録するなど、華麗な守備で評価を高めてきた内野手が、打撃面でもチームを支えている。ただ、今の姿にたどり着くまでの道のりは、決して平坦ではなかった。
 
 今季序盤は、打撃面で試行錯誤が続いていた。
 
 昨秋からチーム全体で筋力強化に取り組む中、自身もパワーアップの必要性を感じていた。オフの間も体づくりを続けて迎えた春季キャンプでは、打球の飛距離が伸び、打球速度も上がるなど、明らかな変化が表れていた。手応えがあったからこそ、シーズンに入ると結果につなげたい思いが強くなった。
 
 「今までやってきたことを出したい気持ちが強すぎて、スイングが大きくなっていました。長打を打ちたいとか、打球速度にこだわったりとか、ちょっと欲が出ていたのかな」
 
 開幕前に思い描いていた打撃と、実際の打席での感覚にはズレがあり、「思ったような結果も出ず、正直苦しかった」。手応えを持って臨んだシーズンだったからこそ、そのギャップは大きかった。
 
 その中で滝澤は、打席で何を優先するべきかを整理し直していった。筋力強化で得た手応えを、どう実戦で生かすのか。結果を求めるほど長打や打球速度に意識が向いたが、打席を重ねる中で、自分に求められている打撃は少しずつ見えてきた。
 
 「自分みたいなバッターはトレーニングも大事ですけど、やっぱり出塁率。次のバッターにどうつないでいけるのか。長打じゃなくても単打でとにかく出塁することが、自分のバッティングに求められていることなのかな」と、自分に必要な打撃を捉え直した。
 
 昨季取り組んでいた練習をあらためて継続し、打席では長打への欲よりも、まず塁に出ることを大切にした。その姿勢が一打席ごとの結果に結びつき、32試合連続出塁という記録へとつながった。
 
 打撃面の試行錯誤は、技術だけにとどまらなかった。気持ちの切り替えについては「めちゃくちゃ苦手です。メンタルもそんなに強くないと思います」と自らを分析。だからこそ、結果が出ない打席をどう受け止めるかが大きな課題になった。
 
 「打つ打たないにしても、納得のいく、自分の中で感覚的にいい打席だったらプラスに捉えるようにしました」
 
 凡退した打席でも、内容に納得できれば次につなげる材料にする。プロである以上、結果が求められる現実は変わらないが、結果だけに飲まれない考え方が、打席の安定感を支えている。
 
 自分に求められる役割を意識する姿勢は、データとの向き合い方にも表れている。打球速度や飛距離を確認しながらも、数字を見る上でより意識しているのは打球角度だ。
 
 「角度が上がってしまえば、当然(自分は)パワーもないのでアウトになる確率は増えるのかなと」と、角度がつきすぎることへのリスクも頭に入れる。
 
 求めているのは、ただ強く、遠くへ飛ばす打球ではない。「いいヒット性の当たりで角度をつけることは意識してやっています」と、安打につながる形を求め続けている。


 
「出られるポジションで結果を残したい」任された場所で果たす役割
[caption id="attachment_273187" align="alignnone" width="1200"] 取材に応じた滝澤夏央【写真:編集部】[/caption]
 

 

 
 打撃で自分の役割を見つめ直した一方で、守備でも与えられた役割を全うすることを何より大切にしている。
 
 守備では二塁、遊撃、三塁をこなす。出場機会につながる強みである一方で、「一つ一つ全く違うポジションなので、似たようなポジションっていうのはないですし、バッターが打ってくる景色とか角度が全く違います」と、複数の守備位置を任される難しさも感じている。
 
 一つのポジションで出続けたい思いは持ちながらも、「今季は出だしが悪すぎたので、そういうことを言える立場じゃないと思っていますし、出られるポジションで結果を残したい。ただそれだけです」。守る場所を選ぶより、任された場所で必要とされるプレーを重ねることに意識を向けている。
 
 守備力を磨く上で大きな存在になっているのが、球界屈指の守備力を誇る源田壮亮内野手だ。プロ入り後から自主トレに弟子入りし、打球への入り方や、対応の仕方を細かく学んできた。
 
 今春は、自分の長所と捉えてきたスピードについても「普通に(打球を)取っても速いんだから、もう少しゆっくり、丁寧さも大事にした方がいい」と源田から助言を受けた。
 
 速さに頼り切るのではなく、捕球までの入り方、送球へのつなぎ、細部の丁寧さを加える。源田から学んだことを、実戦での守備に落とし込んでいる。

 
「守備で流れを変えられる選手に」滝澤が描く理想の内野手像
[caption id="attachment_273192" align="alignnone" width="1200"] 取材に応じた滝澤夏央【写真:編集部】[/caption]
 

 

 
 そうした積み重ねの先に、滝澤が目指す守備の姿がある。
 
 「守備で流れを変えられるような選手になりたいですし、やっぱり守備でいいプレーをすると、その後のバッティングや走塁に、自分自身の気持ちも乗ってくる」
 
 好守から自分のリズムをつくり、チームにも勢いをもたらす。守備で流れを動かす選手へ、滝澤は一つ一つのアウトに価値を込めている。
 
 その考え方を象徴するプレーが、今季序盤に生まれた。
 
 4月12日のロッテ戦、1-1で迎えた延長10回表。先頭のグレゴリー・ポランコの打球が二塁後方へ上がった。落ちれば無死の走者を背負い、追いついた流れを手放しかねない場面だった。ここで滝澤は背走気味に打球を追い、最後はダイビングキャッチ。先頭打者の出塁を許さず、ピンチの芽を摘んだ。
 
 直後の10回裏には林安可のサヨナラ本塁打が飛び出し、チームは勝利を収めた。滝澤の好捕は、追いついた直後の流れを途切れさせなかったワンプレーだった。
 
 守備で試合の流れを呼び込み、評価される選手になる。その先にある目標の一つが、ゴールデン・グラブ賞だ。「いつかはそういう評価をいただきたい」と、守備で認められる選手像を描いている。
 
 源田と二遊間で同時受賞したい思いについても、「もちろんその気持ちは大きいです」と力を込めた。華麗なプレーだけでは届かない賞だからこそ、出場を重ね、確実にアウトを取り続けることが必要になる。師匠と並んで評価される選手になるために、日々のプレーを積み重ねていく。
 
 その向上心を支えているのは、師匠の存在だけではない。身近なライバルの存在も、滝澤を前へと突き動かしている。
 
 今季は小島大河捕手、岩城颯空投手ら、大卒で入団した同学年が一軍の舞台で存在感を示している。
 
 高卒で先にプロの世界へ入った滝澤は、大卒で入ってくる同学年に対して「絶対に負けない」と思いながらやってきた。同学年の選手たちがプロ入り後すぐに結果を残す姿を見て、「簡単に活躍するので、刺激にもなっています」と語る。その刺激を力に変え、「もっと上回るような成績を残したい」と、負けたくない思いを前へ進む力に変えている。
 
 打席では出塁を重ね、守備では流れを引き寄せる。任された役割を果たしながら、滝澤はチームに欠かせない存在へと成長を続けている。
 
(取材・文:灰原万由)


 

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本書は、選手、監督、フロントとしてライオンズに長く関わってきた私が『獅子回顧録』と題して、チームづくりを振り返る一冊となる。
幸せなことに、愛するライオンズで現場のトップとフロントのトップの両方を務めさせてもらった。選手時代を振り返る章もあるが、2004年に二軍の投手コーチとしてライオンズに復帰してから、GMを務めた2024年までが中心となる。


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【動画】鉄壁の二遊間!滝澤&源田の連携プレーがこちら
DAZNベースボールのXより
 

 

 

鉄壁

ライオンズが誇る二遊間
源田壮亮&滝澤夏央

エースが両手を上げるのも頷ける

⚾️西武×日本ハム

— ⚾️DAZNベースボール (@DAZNJPNBaseball)


 


 
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【了】