
2023年にはフジロックで話題を集めたアイルランド人シンガーソングライター、ダーモット・ケネディ(Dermot Kennedy)が今夏のサマーソニックで再来日を果たす。今年3月に発表された3rdアルバム『The Weight of the Woods』は本国とイギリスでチャート1位を達成。ノア・カーンも手がけてきたプロデューサー、ゲイブ・サイモンという信頼できる協力者とのセッションが、彼のルーツ回帰を促しさらなる成功へと導いた。最新インタビューをお届けする。
暗闇の魅力、プロデューサーとの出会い
クリスマス当日、自分が立っている森の自然な静寂を切り裂くようにドラムの音が聞こえてきたとき、ダーモット・ケネディはパニックにはならなかった。このシンガーソングライターが森の中を歩き始めたのは、真夜中近くのことだった。彼はパターンを見分けるのに十分な時間耳を傾けた。そのドスンという音は1、2分ごとに繰り返されたが、漆黒の景色の中では音の発生源を特定することは不可能だった。ケネディはダブリンの自宅近くにある木々のことをよく知っているため、これが異常で少し不気味なことだと分かっていた。それでも、彼はそれに興味をそそられた。
「僕にとって、暗闇は必ずしも悪いものではないんだ」と、犬と一緒に森を散歩して帰ってきたばかりのケネディは、Zoomを通じて語る。「そこでは神秘的なことが起こる。僕はそれにかなり惹かれているんだ」。このミュージシャンの3枚目のスタジオアルバムである『The Weight of the Woods』は、そうした暗闇の魅力から生まれた作品だ。
全14曲を収録したこのアルバムでは、「Funeral」を含め、9つの楽曲の中で「dark」という言葉のバリエーションが15回以上も登場する。〈悲しみはあまりにも確固たる約束のよう/喜びはただ君を雨の中に置き去りにする/憂鬱はロビーで待ち伏せし/慰めはまたしても君をすっぽかした〉と、ケネディはパーカッシブなトラックの上で歌う。〈暗闇に感謝している/それが僕に見せてくれたすべてのものに〉。彼によると、暗闇とは困難を表しており、それは彼が歌う悲しみ、愛、正式な喪失の大きな部分を占めているという。
生粋のアイルランド人であるケネディは、盲目的な楽観主義を排除し、ありのままの現実主義を好む傾向がある。「物事が困難であろうと素晴らしかろうと、それらは一瞬であり、ただ通り過ぎていくものだということを強く意識している」と彼は言う。「Funeral」では、過去に火をつけることがそのプロセスを加速させるのに役立っている。「僕は今この瞬間に留まることがとても難しいと感じている。なぜなら、素材を求めて常に過去を掘り返しているからだ。そして、自分自身の野心という点では、未来のことを考えるのに多くの時間を費やしてしまっている」とケネディは言う。「自分のお荷物になっているものをただ処分することについて話すのは、気分が良かった」
もし彼が後悔と記憶の双方から自分を切り離すことができなければ、それらにとり憑かれてしまうだろう。地元では、彼が行く先々に過去が存在する。ケネディの協力者たちが『The Weight of the Woods』の制作のために到着したとき、彼は彼らを車に乗せ、自身の記憶のマップを巡った。「彼は、初めてキスをした場所や、初めて失恋した場所など、これらすべての場所を案内してくれたんだ」とプロデューサーのゲイブ・サイモン(Gabe Simon)は言う。「それから、『ここは僕の家族の誰かが亡くなった場所で、ここは洪水があった橋だ』というような場所も見せてくれた」。それらすべてを消化するのには数日かかった。「彼は言葉で伝える会話のテクニックを持っていなかったかのようだった」とサイモンは続ける。「彼はただ、見せる方法を知っていただけなんだ」
スタジオでも同じだった。サイモンはナッシュビルで初めて会ったときからケネディの視点と誠実さに惹かれていたが、このミュージシャンは生まれつきの躊躇いを抱えていた。彼は、新しいコラボレーターから『何について書きたいの?』と直球で聞かれることにうんざりしていた。その質問をされると、彼はしばしば自分の殻に閉じこもってしまった。「いきなりそんなにディープで親密な領域に踏み込むなんて、どうかしているよ」とケネディは言う。「そういう意味では、僕は信じられないほど不安になる。でも、自分が書くものに関しては、ものすごく自信があるんだ」。だから、サイモンがその会話を完全にスキップして、彼の最も個人的な日記の書き込みをパラパラとめくり始めたとき、彼は大喜びした。
「何年もの間、あるいは複数のプロジェクトにおいて、僕は自分と最後までとことん付き合ってくれる人を死ぬほど探していたんだ」とケネディは言う。彼はサイモンという、アルバムが形になるまでの6週間、家族全員をアイルランドに移住させることを厭わない協力者と出会ったのだ。ノア・カーンのブレイクアルバム『Stick Season』を共同プロデュースしたサイモンは、自分たちの持つ「小さな町の視点」と、その外に広がる広大な世界との間に類似点を見出している。「彼と同じ視点で世界を見るようになるまで、僕は本当の意味で世界を理解していなかった」と、サイモンはケネディについてそう語る。「彼は人生のすべてを同じ地域で過ごしてきた。そんな彼がこれほど大きく美しい想像力を抱いていることは、僕には納得がいった。彼はきっと少年の頃、森の中で多くの時間を過ごしながら、『外の世界はどんなところなんだろう』と思いを馳せていたんだろうね」
Photo by Silken Weinberg
「自分」を取り戻すための旅路
『The Weight of the Woods』は、地元に寄り添った作品だ。アルバムの終盤には、ダブリンにあるスタジオのすぐ外にある電柱を吹き抜ける風の音を響かせた曲がある。また別の曲では、ケネディが足元で雪を踏みしめる音が取り入れられている。一聴すると、シンプルなスネアの音に聞こえる。こうしたインストゥルメンタルの仕掛けが、アルバムのいたるところに散りばめられている。「最初の1週間半は国内を車で走り回り、ゴールウェイやコークから楽器を集めてきたんだ」とサイモンは言う。彼らはアイルランドの伝統音楽奏者であるコーマック・ベグリー(Cormac Begley)を招いて数小節を演奏してもらい、地元のミュージシャンであるミュレン・ニ・シェ(Muireann Ní Shé)がイリアン・パイプスを演奏しているほか、いくつかのトラックでは本格的なドラムの代わりにアイルランドの伝統打楽器であるバウロンが登場する。
嵐のせいでスタジオからほど近い教会が停電したとき、外で雪が降る中、聖歌隊は薄暗い空間でアルバムの1曲目に登場する身の毛もよだつようなシーケンスを演奏した。『The Weight of the Woods』の一部はナッシュビルで仕上げられたが、これらのディテールは、すでにコミュニティと深く結びついているアルバムに歴史の重みを加えた。ケネディは時折、「世界のどこか別の場所に住むというアイデアに惹かれる」こともあると言う。しかし、彼は「我が家に勝る場所なし(Níl aon tinteán mar do thinteán féin)」という古いゲール語のことわざに共感することの方が多い。それは単に「我が家のような場所はない」と言うよりも興味深い響きを持っているが、そこに込められた核心は同じだ。「自分のホームにいること、それこそが彼の大切にしている場所なんだ」とサイモンは言う。「彼にとっては神聖な場所なんだ」
ケネディが2022年の2ndアルバム『Sonder』をニューヨークで制作していた頃、彼は本来の自分から遠く離れていた。燃えるような思索に満ちた2019年のデビュー作『Without Fear』に続くこの作品は、「Blossom」や「Already Gone」といった名曲を自身のカタログに加え、大規模なワールドツアーの一環としてマディソン・スクエア・ガーデンでのヘッドライナー公演をもたらした。しかし、アップビートなヒット曲「Kiss Me」や「Better Days」によって彼がポップスの領域へ深入りしすぎたと感じた一部のファンにとって、このアルバムは賛否が分かれるものとなった。彼自身も、そうしたファンの反応との間に明らかな隔たりが生じていることに気づいていた。「たとえ一部の人を遠ざけてしまったとしても、彼らを完全に置き去りにしたわけではないと思いたい」とケネディは言う。「彼らが今もいてくれることを願っている」
それでも、ケネディは『Sonder』が「突飛な方向転換」だったとは決して感じていなかった。彼はスコット・ハリスを含む前作と同じプロデューサーの何人かと仕事をし、オリヴィア・ロドリゴやチャペル・ローアンの協力者であるダン・ニグロとも数曲を制作した。それらの楽曲をライブで演奏したとき、彼は他のリリース作ときれいに調和しているように感じた。しかし、アルバムのプロモーション期間中、「業界の一員としてツアーを回る慌ただしさに飲み込まれている」と感じる瞬間があったことは認めている。ツアー中、彼は客席でファンが感情を剥き出しにする様子を見つめながら、彼らの人生における何が、自身の抱く「憂鬱な希望」といった感覚とこれほどまでに深く共鳴させているのだろうと思いを巡らせた。ステージを降りると、彼はそのすべてに一体どんな意味があるのかと自問自答した。
「時々、弱っていると、自分のやっていることなんて大した意味がないんじゃないかと思ってしまうことがある」。ケネディがそう言うのは、燃え尽き症候群ゆえのことだった。『Sonder』と『The Weight of the Woods』の間に、彼は親密な雰囲気のシアターツアーでファンと再び繋がり、そこで古い楽曲を削ぎ落としたアレンジで披露し、新たな楽曲も初公開した。「『彼は本来の自分に戻りつつある』とみんな言うけど、僕は最初からずっとこういう人間だったんだ。音楽的にいつだってこういう方向へ進むことは分かっていたから」。新しいアルバムは自分に喜びの感覚を取り戻させてくれた、と彼は付け加える。「それは、クリエイティブな確信と自信を取り戻す旅だった。でも何より、音楽というものが自分にとってどれほど重要で、一人の人間としての自分を構成する上でいかに不可欠な一部であるかを、改めて思い出すためのものだったんだ」
スタジアムを掌握するギターと歌
ケネディは、昨年9月にインディアナ州のノートルダム・スタジアムで行われたザック・ブライアンのパフォーマンスに参加した際、その兆候を垣間見た。「彼のキャリアには、僕にとって驚異的な点がいくつかある」と彼は言う。「自分のミックスを調整するためにライブの大半で彼のインイヤーモニターを聴いていたんだけど、『なんてことだ。この男は文字通りギターと声だけで、9万人を相手に演奏しているんだ』と思ったよ」。今年の夏、ケネディはダブリンのアビバ・スタジアムで2日間にわたり、ほぼ同規模の観客を前にパフォーマンスを行う予定だ。彼は大規模なプロダクションと、必要最小限まで削ぎ落とされたショーの双方を行き来できることを楽しんでいる。「誰かがこれほど強い確信を持って取り組んでいる姿を見るのは、とても刺激的だった」と彼は語った。
ザック・ブライアンでさえ、外部のノイズが自身の抱く静寂の壁を突き破ってくるのを免れることはできない。このカントリーミュージシャンは最近、25曲入りのアルバム『With Heaven on Top』をリリースし、そのわずか数日後に全編アコースティックバージョンを公開した。「このレコードも他のすべての作品と同じように、プロデュース過剰でクソだと言う人間が10億人はいるだろうね」とブライアンは語っていた。キャリアが10年になろうとするケネディにとって、オーディエンスの意見は尊重すべきものではあるが、それに人生を左右される必要はない。「もし何かを間違えたとしても、誰も死にはしない」と彼は言い、こう付け加えた。「もし明日すべてがなくなってしまったら、もちろん悲しいだろうけれど、僕はやっていける。それで死ぬわけじゃない。そう思えることが、結果として最高の仕事をするための、強固な基盤になっているんだと思う」
ギターと声だけで魅了するライブ映像
『The Weight of the Woods』をレコーディングする際、何が正しく何が間違いかといった考慮は一切なかった。「人々の評価を気にしない自分へと立ち返るための旅だった」とケネディは言う。「僕が観客に対してできる最善の奉仕は、彼らの期待を考慮に入れないことなんだ」。アルバムには、リスナーのほとんどが決して目にすることのない場所で彼がかつて歩んだ道への鮮明な回想や、祈りと信仰、そしてそれらが傷ついた心をいかに癒やし得るかについての沈思黙考が収められている。その告白の中には、少しばかり過剰に思えるほど踏み込んだ瞬間もあり、そこには切実さと献身が満ちている。『The Weight of the Woods』はケネディという人間を描いた鮮烈な肖像画であり、彼自身、これがこれからもリスナーにとっての鏡として機能することを願っている。
「彼はあえてダークな側面を見せ、君の心をめちゃくちゃに打ち砕こうとする──そして、実際にそれをやってのけるんだ」とサイモンは言い、ケネディがギターと歌声だけでライマン・オーディトリアム(※ナッシュビルにある歴史的なコンサートホール)を涙に包んだあの夜を振り返る。「彼は、君を一人でそこに立ち尽くさせるのではなく、誰かに寄りかかって泣いている状態にしたいんだ。会場を出るとき、君が友達の手を握っているような状況を作り出したい。君を徹底的に打ちのめしたいのと同じくらい、君に希望と愛を残したいと願っている。今の僕たちには、それが必要なんだ。彼自身に(聴衆を救うという)責任感があるとは思わないけれど、彼の心は自然と希望の方を向いているのだと思う」
ケネディが何よりも重く受け止めている責任は、彼自身の世界観を形作る愛や人間関係を大切にすることだ。「僕という存在はただ通り過ぎていくだけのものであり、ここにいる間にできる限りのことはするけれど、永遠に存在し続けるわけではないという事実を強く意識している」と彼は言う。結局のところ、アルバムの最終トラックで歌っているように、ケネディはただ「森の重み(the weight of the woods)」の一部になりたいだけなのだ。「僕が死ぬときは、あの景色に溶け込みたい」と彼は言う。「人生で自分が貢献してきたものすべてを、あの場所に加えさせてほしい。ただそこへ行き、森の一部として溶け込んでいきたいんだ」
From Rolling Stone US.

ダーモット・ケネディ
『The Weight of the Woods』
発売中
再生・購入:https://umj.lnk.to/DK_TWotW
SUMMER SONIC 2026
2026年8月14日(金)・15日(土)・16日(日)
東京会場:ZOZOマリンスタジアム & 幕張メッセ
大阪会場:万博記念公園
※ダーモット・ケネディは8月14日(金)東京会場、15日(土)大阪会場に出演
公式サイト:https://www.summersonic.com/
